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商売ネクロマンシー  作者: 矢瀧 忠臥
ノーブクライワン国
15/15

キューピットアローと旅商人

数分前

怒り狂った女性達は、まるで壊れた操り人形のように関節をガクガクと震わせていました。ただ何故か、気を失ったヴァイルには手を出そうとしないのです。それもその筈、何故なら、ミファエルが彼女達を抑制していたのでした。ゾンビみたいに蠢く者達を止めるのは、ネクロマンサーとしては造作もないことでした。

「大丈夫ですか?」

心配して倒れている転生者に近付こうとしたのですが、何処へ行ってしまったのか、跡形もなく姿を消していたのです。彼は不思議に思いましたが、今目の前に起きている問題を片付けるのに必死で、考えるのを後にしました。


止めたは良いものの、問題は彼女達をどうやって冷静にさせるのか。手っ取り早い方法としては、睡眠魔法を一人一人に使っていくというものなのですが、成功する確率は非常に低いのです。理由をお話しすれば、『死者静止魔法』と『睡眠魔法』を同時に使いますので、ミファエルの体力が限界を迎える可能性が高いのです。どうしたものかと彼が思案している中、一人の女性が意識を取り戻しました。


「もし、大丈夫ですか?」

「え…えぇ、なんとか」

黄色長髪の狐の獣人、ゼスカは頭を手で押さえておりました。

「あの、睡眠魔法といった類の魔法は使えますか?」

「えぇ、まぁ」

「申し訳ありませんが、ボクが静止している彼女達を眠らせてはくれませんか?お手数おかけしますがよろしくお願いします」

「分かりました!」

そう言うや否や、ゼスカは両手を前に翳し、詠唱しました。するとその手からは、緑の輝く粉が出ていき、彼女達に覆い被さるように広まって眠らせていきました。


「有難うございました。なんとかなりそうです」

深々と頭を下げた後、眠っている彼女達一人一人に、何やら詠唱を始めました。その魔法は、ゼスカには聞き馴染みの無いものでした。

「今、何をされたのですか?」

「あぁ、えーっと。『アンデット解除魔法』です。」

途中、床に無造作に転がっている弓を取りました。

「この弓に、人を惚れさせる(まじな)い…と言ってもアンデットの能力が微量に含まれているんです。勿論、人の意識を盲目的にさせる程度ですけどね。それを、彼に渡したのが間違いだったようですね」と自嘲し、続けます。

「彼は…ヴァイルさんは、この世界では強すぎた存在なんです。彼が複製した矢は、アンデット能力が非常に肥大化していました。それを危惧して忠告したのですが…ボクの計算ミスでした」

「じゃ…じゃあ、なんで私は、比較的軽傷で済んだのでしょう?」

「それは…貴方様が一番初めだった。ということですかね」


この時ゼスカは、二つの複雑な想いに苛まれていました。一つは、ヴァイルに裏切られた心持ち。もう一つは、そんな彼への恋心。好きという気持ちは、案外揺らがないもので、彼女は遠い目をして、闇を掻き消そうとする空を眺めるばかりでした。


その後、眠っていた彼女達は目を覚まし、何事も無かった様子で自分達の生活に戻っていきました。

「はぁー…」

狐の娘は、溜め息…また溜め息を繰り返し吐くだけでした。

(ヴァイル、何処に行ったの?)

そんなことを思った瞬間、時空が歪んだ感覚…とでも言うのでしょうか、耳障りの音やら目の前の空間が渦巻きました。それに眩暈を起こした彼女は、その場にへたり込み今までに無かった紙を見つけました。

『龍人ノ峠で待っている。』

筆跡から見て即座に転生者のものと分かりました。生きていたんだと安堵の声を漏らし、紙を胸に握り締めました。ただ、彼のことを一発殴りたいという思いは消えていません。


話は変わり、ミファエルはキューピットアローを破壊してしまいました。この世にあっては危険だということもさることながら、自分自身への不甲斐なさもありました。

(あんな大事になってしまったのは、ボクの責任ですね…被害に遭われた女性の皆様方に、陳謝しなくてはなりませんね)


被害に遭った女性達を見つけるのは、容易いものでした。ミファエルは、以外にも記憶力は良い方でした。ですが彼女達は、彼が何を謝っているのか全然と言っていい程、理解していませんでした。

(次は、ゼスカさん以外のメンバーですかね)

そう意気込んで、メンバーの一人が働いているという小さいカフェに入りました。

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