第0話『手違い』
初めましての方は初めまして、そうでない方も初めまして。不定期で更新させて頂きます。
「我が名は、『不死の神』バンシィ・ディラデイルである。」
「ごめん、3年間、過ごして来たけど、未だにお前の性格だけは掴めんわ。」
そう言って、俺の事を引いた眼で見つめる、紺色の制服にネクタイをしっかりと着こなす、顔の整った黒髪の男。名前はたしか、森山……だったか?
下の名前は覚えていない。覚える気もあまりないし、人の名前を覚える事を、俺はあまり得意ではない。
あ、俺の名前はバンシィ_____じゃなくって、間宮小太郎だ。
調理師養成施設の底辺ギリギリの学校に通っている。昨日、高3になったばかりだ。三年間という長い学校生活も、あと一年だと思うと、まだまだ先は長いなと感じる。
あー。そうそう俺達は、この高校に入学した時に知りあった。とまぁ言っても、このクラスにいる奴ら全員が、入学した時に知り合ったわけだが、特に深い仲になるわけでもなく、偶々同じ学校に入学した同級生だ。
「ふふふ……掴めなくて当然だ。人間如きに、この我の正体を見破られる様では_____」
「お前、まだそれ続けるの?___恥ずかしくないの?」
ッ!?
なかなか、痛い事を言うな……だがッ!今の俺に羞恥心など存在しないッ!
俺は続けるッ!!
「でぇぇい!!」
奇声に近い掛け声と共に、俺の視界は一気にぐらついた。思わず横にあった誰の席かも知らない机に手をつき、倒れかけた身体を押しとどめる。
その結果、机がガツンッ!と、結構うるさい音を立て周りの視線一瞬集めるが、普段からうるさいこの野郎の仕業と察すると、「またあいつか」程度の反応で、興味を無くし自然と元の空気感へ戻る。
そんな空気の読めないこの野郎は、『空気は読むものではない吸うものだ』と言わんばかりに、まるで気にも留めずそいつは右手を大きく上げ、大会の宣言でもするかのような声量で、その中途半端に高い声を上げた。
「おはよう!小太郎!!帰りゲーセン行こうぜ!!」
「よろしい。ならば戦争だッ!」
俺はそう宣言し、俺の頭を叩いた、この野郎の頭を叩き返す。
その瞬間、頭部が吹き飛び、衝撃破が教室内の全てを吹き飛ばす。
___なんてことはなく。当て方が下手だったのか、掠ったような「ぺしっ」という残念な音が、僅かに鳴った。
避けやがったな、こいつ……。
「で、ゲーセン行く?」
まるで何事もなかった様に、若干俺を見上げるように問いかける、ひん曲がったネクタイと、どうしたらそうなるのか不思議に思うふやけたかのような伸びきった制服を着たこいつ__三河浩二。
悪気など一切ないとぼけたような顔で、俺の返答を待っている。
問題無い、いつものやり取りだ。
「行く。」
「おけ。」
即答。
それだけ言うと三河は、また別の奴を誘いに行った。今度は普通に声を掛けている。喧嘩売ってんのかな?
***
俺の通う、この学校……いや、この学級だけか……?
まぁいいや……。一言で言ってしまえば、馬鹿の集まりだ。
調理の道を目指す者達が集まったように見える、単なる滑り止めの私立高校だ。
入試の時は、「料理人に成りたいです!」とかよく言うけど、それは嘘だね。
取り敢えず、高校に入れればいいやって感覚だよ。___俺は違うけど。決して平常点が、低すぎた訳では無いッッ!!(必死)
因みに俺は、この学校ではテストの順位が毎回3位だ。俺は馬鹿じゃ無い。つもりだ………うん。
中学の頃は下から数えたらすぐに位置するとか、口が裂けても言えないが……。
世の中って広いと思う。
俺って最初は全人類の中で一番馬鹿なんじゃ無いかって思ってた。
だって150人中147位だぜ!ちなみに俺より下は病欠。テスト受けてない。
それがこの学校に入学したら、あらびっくり3位だよ。
まあ、下には下が居るってって事で。(笑)
あ、そうそう。俺の得意な事はゲームだな!
……と言ってもアクションゲーム?
あの…何て言うの?あの…レバーとボタンでやるやつ…例えばガ〇ダムとか鉄〇とか……あ、格ゲーね!
たぶん、そこそこ出来る方だと思う。
あとは…モン◯ン!
これはランク400行って飽きた。
カードゲームも、そこそこやるね。
あと、ずっとやってるのが……あれ何て言うのかな?
クラ◯ラとかの何か……よく分からんけど建設ゲーム?みたいなの……こう言うのは結構好き。育てる系も好きだね。艦◯れとかドラ◯エみたいなやつ。
おっと、そんな事を考えていたら、始業チャイムが鳴っちゃった。さ、席に着くとしよう。
***
あ"あ"あ"ーーーづーがれーだぁぁーーー
ダルかった、授業パネェ。1時間目と2時間目の授業が社会で、先生の話が長過ぎて、ついついお絵描きしていた……わお、タコさんがいっぱいだよ……たこ焼き食べてぇな。
3、4時間目は、栄養学で、先生が副校長なんだけど、この人がまたでかいのよ、物理的に。
栄養学で健康唱える前に、自分の健康気にした方がいいと思うんだよな。
んで、今日だけ何故か、4時間授業だったらしく、昼前に帰って良いとの事、ラッキー。
さて、ゲーセンに行くか。
***
最近やり始めた、思考型トレーディングカードゲームを小一時間程プレイし、その後に音ゲーをやってガン◯ムをやって夜7時くらいにゲーセンを出た。
三河と、その他モブ(俺がそう呼んでいるだけ)と別れ、近くのバス停に行き俺は時刻通りに到着したがらがらのバスに乗り込み帰路に着いた。
いつもの事だが、バスの中では退屈なのでゲームをする。
大抵真っ先にやるのは今超絶人気な、パズルなドラゴンだ。___その後に、創造と殺戮のゲームをやっていると、家の近くのバス停に止まる。
そうして俺は、忘れ物が無いか確認してから小走りで、バスを降りる。
俺の家はバス停を降りて信号渡った所を、真っ直ぐ歩いていれば着く。その移動時間にも、俺は創造と殺戮のゲームを続ける。時間は有限だからね。お、ランク上がった。
だが、今日に限っては、いつもと様子がおかしかった。
信号待ちをしていると少し、カタカタと揺れているような感覚に襲われたのだ。
揺れに気が付いた俺は、取り敢えずスマホの画面を閉じ、ポケットにしまおうとしたその時……
視界がまるで、舗装されていないガタガタの山道を走る車の中の様な光景に、あっという間に切り替わる。
凄い揺れてる……それ以上の言葉は見つからないくらい、地面が揺れ、全く立てない……横に揺れているのか縦に揺れているのか、もう分からないくらい揺れてる………とにかく揺れてる、突如バキバキッとへし折れる様な音と共に、俺の後ろに立っている家が倒れた。
俺は、思わず目を瞑り前に飛ぶ様に、転がって避けた。
___その時、俺は気付かなかった。
避けた先は道路で、揺れに気づかなかったのか、猛スピードで走っていた大型トラックの存在に。
最早、そんな事はどうでも良かった。全身にぶつかったのか、潰されたのか分らない程の強い衝撃を受け、俺はもうぶっ飛んだ。
意識がハッキリしない中で、俺の視界にはトラックの様なものが薄っすらと見えた。
俺は空中に跳ね上げられ、叩きつけられた………痛ぇ、アスファルト痛ぇ……。
痛いを通り越し、なんかどうでも良くなって、力の出る限り手を動かし、俺は何とか体勢を変え、空を見上げることが出来た。ああ……なんも見えないや。
あの大きな揺れは収まった……全然、助かってないけど……助かった……
と、思っていたら俺のすぐ傍からバキバキと聞き覚えのある音を聞いた。
俺は息を吞み、全身が押し潰される衝撃を受けた……
***
うぅ……頭が痛い……頭痛が痛いよ……
目を開けようと思ったが開けられない……寝ている様な感覚があった___けど起き上がれなかった。
あ、もしかしてあれか___夢か!!
良し!__ならほっぺをつねれば……
あ、動かねぇ
『___ぞ!』
何だ?___瞑想してたら声が聞こえた……まさか俺にも遂に、神の力が!?
『これじゃない!この馬鹿じゃないぞ!!』
ほぅ……馬鹿だと?言ってくれるな____間違ってないけど。
『__適当に捨てておけ。』
『そうだな。』
何かがそう言った瞬間、俺の意識は飛んだ。
《条件を満たしました。
称号
『手違い』Lv.0000
『創造魔法』Lv.1
を入手しました。》