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(第二章は削除しました)無自覚ハイスペックくん、女優学生に拾われる。  作者: 柏木悠斗
1st. あなたは自分の大切な…。
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PART.5 駄々こね記者さん

 ハンバーグを電子レンジに入れて温めている時、僕は米を盛り付けていた。

 お椀に米を入れ、そして、大きな皿にひっくり返す。すると丸く盛り付けられるというのは有名な方法だろう。事実、今回はそうやって盛り付ける予定だ。


 昨日作ったハンバーグ。あれは味変が楽しみやすいよう少し小さく作っていた。けれど、今日の昼食用は昨日と比べて少し大きめだ。

 本当はチーズをinしたハンバーグにしたかったが、それはまだ作ったことがなかった。今度店主に聞いてこようかな?彼にハンバーグの作り方は教えてもらったし。ひょっとしたらチーズinも知ってるかもしれない。


 コメを盛り付けたら大体ハンバーグが温まる頃だ。ハンバーグを一人一つずつ盛り付け、おかわりが必要なら各自盛り付けといった方針を取る予定だ。


 デミグラスソースはすでに完成しているソースだ。しかし、やはりわさび醤油が欲しくなる。だが、


「昨日とは違って、今日はさらに盛り付けちゃうからなぁ…。」


 昨日みたいに小皿を用意するのは難しいと判断したため、今日は諦めた。まあ、次回は摩り下ろしてって言っていたからというのもあったが。代わりに大根おろしを作ろうとするも、今朝の味噌汁で消費しきったことを忘れていた。


「ん~、ま、ちょっと物足りないけれど、市販のソースにちょちょいと付け足して少し味を薄めて食べやすくしておこう…。」


 結局、ハンバーグに合うソースはそれから二分で完成し、ソースをかけてそのまま持って行った。


 煮込みハンバーグのソースを作ろうとしたが(少なくとも、自分が食べていたモノは少し味が薄めだった)、材料と時間が不足していたため、多少水と調味料を入れて味を調える程度にしかできなかった。


「ごめんなさい、少し遅れました。」

「何かやってたね。ソースを作ってたの?」

「そんなところです。デミグラスソースというか、市販のものは少し味が濃すぎる感じがしたものがあって、少しだけ味を薄めて調整していたんです。こっちの方がハンバーグに合いそうでしたし。」

「わさび醤油は?」

「あれ楽しみにしてたんですか冴島さん…。今日は小皿を用意できなかったので無しですね。まあ、あとで僕が食器洗いはするのでご自由な量をご自身で作っていただけたら嬉しいですね。一応、次回は摩り下ろしてからって昨日約束してましたし。」

「あ、そうだった。」

「わさび醤油?ハンバーグに合うんですか?」


 記者さんはそう言って少しだけ興味を持った顔をした。


「意外と合いましたよ。とは言え、影山君がこっそり一人で食べていたらしいんですけど。」

「そうですね。小遣いでわさびを買って摩り下ろして醤油と混ぜていろいろと食べてましたね。ハンバーグにかけたらどうなるんだろうって思ったら、意外と合っていたので。」

「ぜひ食べたいところですが…。」

「今日は盛り付けてしまったので。それに、少々このハンバーグは大きめになっていますので一つでも結構胃に来ると思いますよ?」

「うぐっ…。」

「ですので、わさび醤油は次の機会ですよ。」

「くっ、個人的にとても気になる…。レシピはどうなんですか?」

「え…。わさび醤油は人によってわさびの量を変えるので一概には言えませんが、僕は少しだけ鼻がツンとするくらいがちょうどいいと思っています。あれ以下だと肉汁に少し負ける感じがしましたし、以上だと辛すぎますし…。」

「今度やってみます。あ、視聴者の方、わさびがある人はちょっと試してコメントください。」

「練りわさびでもできますが、摩り下ろした方が美味しいですよ?残っていたら練りわさびで一度試してみてください。」

「分かりました。…では、気を取り直して、」


「「「いただきます。」」」


 一応味は確認した。でも、ちょっと物足りない感じがしていた。


「ん、これ美味しい!昨日のは実はちょっと味が濃いものがあって途中で食べるのが少し辛かったんだよね。」

「そ、そうだったんですか。味の感想しか聞いていなくてすみません。次から薄めにします。えっと、記者さん…お味はいかがですか?」

「え、あ、はい…。あの………………ちょっとお伺いしたいことがあるのですが。」

「なんですか?まさかお口に合わなかったのですか…?」

「いえ………………ちょっとこれから料理店を経営しませんか?」

「え?」


 記者さんがそんなあり得ないことを言ってきた。


「いや、僕の料理じゃ他の人の足元にも及びませんよ。だって、このハンバーグ、ちょっと焦げ目がついていて、しかも味があまり整っていません。ソースだって全然手抜きですし、いつもだったらもう少しうまくできてます。」

「いや、これ以上上手くできるなら余裕でこれだけで稼げますって。」

「あの、これ生放送でやっちゃいけない会話だと思うんですが。」

「関係ありません!このハンバーグには、それだけの価値があります!」

「んー、このハンバーグはただの家庭料理なんですがね…。」

「なんでこんな美味しいハンバーグが家庭料理なんですか!」

「あれ?そういえば三ツ星シェフの弟子入り志願を余裕で断ったんだったっけ?」

「あ…。」

「ほとんど知らずに断ったんだけどね。だって料理は母さんに作るために必死に覚えたんだし。」

「「…。」」


 あ、いけない。母さんの話を言うと話が暗くなってしまう。


「とは言え、レシピ?は普通のハンバーグですし、何なら作り方はお教えできますが…。」

「本当ですか!?」


 記者さんはガバッ!と顔を上げ、僕に急接近する。びっくりして後ろに下がったら頭を壁にぶつけてしまった…。ちょっと痛い。


「は、はい…。それと、ちょっと近いです…。」

「…ごめんなさい!…それで、作り方とは?」

「ああ、今日の夕飯は別のモノにするので。別の料理なら料理するところを取っていいですよ。」

「ハンバーグは?」

「流石に二日連続でハンバーグは辛いので。いくら味変しても二日連続は飽きてしまいます。今日は魚系にしようかなと思っています。」

「魚系ですか?でも、魚は近くには売ってないでしょう?」

「あー、そう言えば前までは家の近くに魚屋さんがあったんですよ。そこで柵の魚を買って切って食べてたんです。あの時はスマホで動画を見て切り方を学んでましたね。なのでその人の動画を見てくれたらいいと思います。あ、僕が個人的に分かりやすいと思っただけなので、クレームは受け付けません。」

「あ、それについては許可とか取らないといけないのでその動画を取り上げるのはやめてください。」

「分かりました。まあ、調べたらすぐに出てくるとは思います。…って、その話は置いておいて、そう言えば密着とかいう話をしていたんですけど、これって夜もいるんですか?」

「え?いますけど。」

「大丈夫なんでしょうか…いくら何でもオーバーワークでは?」

「ああいえ、ここに居れば楽しめそうですし。実は料理が好きで、よく自分で作っているんです。」

「あ~、それで僕が作ったハンバーグとかの作り方を教えて欲しいって言っていたんですね?」

「そうです。」


 なるほど、やっとつながった。でも、このハンバーグの作り方は精肉店の店主に教えてもらったからなぁ…。勝手に教えてもいいんだろうか…。


 まあ、良いと言いそうだけど念のため聞いておこう。プライベートでここに来るとか言っていたし、その時にいろいろと話せるかもしれない。ハンバーグ以外にも、何かを振舞えるようレパートリーを増やしておかないと…。



 結局、しばらくの間、僕は魚を買いに前の家の近くにあった魚屋に行った。そこで少々魚を買って、早々に帰ってきた。いくらここで有名な冴島さんの専業主夫であったとしても、母さんは僕を殺すかもしれなかったからだ。ちなみに、僕のこと自体が生放送で有名になっていたようで、電車内ですら皆が僕をちらちらと見ていた。

 時々、「母親に殺されるとか言っていたけど、あれは事実なのか?」と聞いてくる人がいた。そんな人には全員に、


「生放送で知ったと思われますが、僕は確かに命を狙われています。一応、今回は自分が今、外に出て大丈夫かという()()()として外に出ています。冴島さんや記者さんにも、そう許可を取ってきました。」


 と応対した。数人、訝しげにこちらを見に来た人もいたが、実際、僕の家が火事で焼失しているうえに、現在持っているスマートフォンが一切使えなくなっているところ、ズボンに焼け跡が残っていることなど、物的証拠は数多くある。問題は証言がないことだが、()()が先手を打ってありもしないことを言って冤罪だとでっち上げられるのが一番面倒くさい。目の前で殺されかけたのは、あくまでも僕が目の前で見た光景、証言でしか確認が取れないからだ。とは言え、生放送を見ていた人はほぼほぼ全員が彼女のファンだろう。嫉妬でありもしないことを言う可能性もあったが、それについての愚痴は甘んじて受け入れようと思う。


 結局、母親に見つかることなく無事に家に着いた僕。カメラを向けられ、『お帰り』と言われて驚いたとともに、久しぶりに言われたそのセリフに思わず泣いてしまった。オロオロする二人がちょっと見ていて面白かった。


 …さて、今日買ってきた魚はブリ(切り身)、鮭(切り身)、そしてマグロ(柵)だ。魚ではないが、わさびも買ってきてある。しかもチューブではなく本わさびを。ブリの照り焼きが無性に食べたくなったため、醤油ベースのタレを作って、あとはブリをソースで煮ていこうと思う。


 ブリはそのままでも食べれるけれど、念のため火を通しておく。照り焼きにしない選択肢をするなら、刺身を大量に買ってパーティーになっていただろう。僕は意外と面倒くさがり屋なのだ。弱火でコトコト…。ブリが少し柔らかくなってきた。


 三切あるブリを一つずつ皿に盛り付け、ソースを上からかける。家で食べて居た時よりは薄味で、少々辛みを追加してもいいかもしれない。例えば七味唐辛子とか…。あ、流石にこれにはわさびは使わないよ?いくら醤油ベースだとは言っても、これには砂糖とかも入っていてこれで味が調整されているからだ。わさびはそのバランスを壊すから事実、あまり美味しくない。食べれはするが、美味しくない。だから僕は刺身にわさびを使うことにした。


 本来は鮫肌で削るらしいが(下ろすの方が適切)、それがないから大根下ろしを作る時の器具で代用するが、非常に削りにくい。大人しく専用の器具を買いましょう。それかニンニクやショウガを摩り下ろすものでも構いません。


 下ろしたわさびと、柵のマグロを斜めに切ったもの(普段刺身で見る形)をどんぶりに乗せて、完成。



 大分長くなってしまったし、結果だけ言うがこの二つの料理はともに好印象に終わった。しかし、これを食べて、また記者さんが『定食屋を…。』と言い始めたので、丁重にお断りしておいた。



 後で気付いたのだが、照り焼きと刺身を同時に出すという愚策…。

 味変を多用することから勝手な推測をするが、味に飽きやすいと思われる冴島さんのために数種類の料理を作っていたのだが、記者さんにはあまり良くなかった模様だ。しかし、単品で味が高級店のそれレベルだと言われ、二度目で既にお馴染みの『定食屋開店願望』を盛大にぶちまけて、僕に断られるというテンプレが完成したのでした。

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