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(第二章は削除しました)無自覚ハイスペックくん、女優学生に拾われる。  作者: 柏木悠斗
1st. あなたは自分の大切な…。
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PART.LAST 幸せを願う君、僕はその横で…。

 結婚を前提としたお付き合いを始めてから、()は友里さんとの時間を大切にするようになった。高校三年生となる時期から数ヶ月、時は早いもので既に僕は十八歳になっていた。

 あの告白で新しくなった生活は、時々愉快で、時々悲喜こもごもと言った様子で過ぎていった。

 この一年間でマネージャーさん…柏田さんが裕二さんと結婚してもうじきお子さんが生まれるようだ。本当におめでたい。


 和美…お母さんは死刑が執行されてもう居ない。永遠に会えなくなるという事実がただただ苦しかったけど、友里さんがいてくれたから乗り切れた。何だかんだで、恨みはしていたけどお母さんのことが好きだったんだな。


 さて、そんな自分の一人称は僕に戻り、ここ一年と数か月の成果もあり、ただ素直に自分の気持ちを伝えられるようになっていた。


「ねぇ()()。」

「何?友里さん。」

「子供、何人くらい欲しい?」

「…!?」


 あまりの唐突な発言に思わずコーヒーを噴きだしそうになった。


「いや、女の子がそんなことを言ってはいけませんよ。」

「すでに成人してますぅ~!だって、前だって私を見て、抱きしめた時だって色々大変なことになってたよ?」

「それはいいじゃないか、別にそういう意味でなったわけじゃないから。っていうか、成人すらしてない僕があなたとそういうことするわけにはいかないでしょ?」

「だってさぁ、どれだけ私が誘っても手を出してくれないじゃん。」

「僕だって、ただあなたと一緒にいれるだけで嬉しいけど、今はまだ、そう言うときじゃないでしょ?僕は君と釣り合う男になりたい。もっと、立派な男に。」


 僕は昔、友里さんを悲しませてしまったことがある。そんなことを繰り返すなんて僕には出来ない。僕は友里さんを幸せにしたい。子供に囲まれることが幸せなのかもしれないけれど、今はこの二人の時間というモノを大切にしたい。


 独占欲ってこういうモノを言うのかな?


「そっか。大分変わったね、健也。」

「そうかなぁ…。大分魅力的になった友里さんの方が変わったんじゃない?」

「全く、そう言うことは私以外には言っちゃダメだよ?」

「言わないよ。お世辞くらいには言うかもしれないけれど、本心では友里さんにしか言わないって。」

「それでもちょっと嫉妬しちゃうかも…。あ、これから仕事の面接でしょ?えっと、動画配信をするんだったっけ?」

「うん。じゃ、出来るだけ早く帰るから、あ~、その、帰ったら、今日は一緒に寝てもいいですか?」

「…ふふ、甘えん坊さんだなぁ。いいよ、行ってらっしゃい。」

「行ってきます!」


 僕はゲーム実況を昨年初め、収益化と大分知名度の高い方々とのコラボも実現した。その為、僕を取り込もうとする会社が多く出てきたのだ。この時代、ネットでの地位というモノは会社の地位の向上につながるそうだ。ゲーム実況者を取り込むことで若年層の支持を集めることが出来るらしい。最近は友里さんと共に立ち上げたカップルチャンネルの方も登録者が増えてきていて、そちらでは色々と僕等のうちいずれかがサプライズを用意したり、ドッキリを仕掛けたりといった内容でかなり好評だ。

 数多くある企業の中から、ある程度休みがもらえる会社を僕は選んだ。僕が高校生の頃からバイトを続けていた会社で、ゲーム配信なんかにも最近手を出して何とか成功できて居るからだ。それと、かなり時給も休みももらえるから、友里さんと一緒に居れる時間が増える。好きな人と一緒に居れるのは、それだけで幸せなのだって気付いたから。


 大通りの十字路。信号機の故障があり工事をしていた。仕方なく、いつもとは別の道を通ることにした。


 ゆっくり歩く。その一歩一歩の間に、幾重にも重なった幸福が言葉に出てきた。


 今まで、どうしてこんなに楽しい人生を諦めようとしていたんだろうな。

 今まで、どうして友里さんのことを好きにならなかったんだろうなぁ。

 今まで、どうして周りと接することが出来なかったんだろうな。


 そんな考えをしていると後方から喧騒が聞こえ…


 ドンッ!


 …そんな激しい音とともに、僕の体は吹き飛ばされる。車にでも追突されたのだろうか?幸い頭部にダメージはない。偶然にも腕が地面に付けられそうだ。頭でぶつかるよりはマシ…!そう考えた直後、背中から落下してその際自身の左のすねに激痛が走る。

 見ると脚からは骨が飛び出ていて、血が多く流れていることが確認できた。それを視認した瞬間、痛みはさらに強くなった感じがした。


「ああああああああああ!ああああ!」


 痛すぎて何も考えられないというわけではない。叫びはするが、まだ考えることが出来る冷静さは残っている。バッグに入れておいたひもを使って無理矢理止血しよう。応急処置用の品は常時持ち歩いている。

 そうしようとバッグに手を伸ばそうとするが、腕が動かないことに気付く。

 力が抜けて、体が動かない。


(ああ、何で………………友里さん…。)


 その時、母親から逃げ出したあの冬の日、正月明けすぐのあの日を思い出した。

 すごく寒くて、痛くて、凍えながらの逃避行。最後は凍死しかけて僕は…。

 あの時は友里さんがいたから助かったんだよな…。でも、ここに友里さんは…。

 そんなことを思っていると、意識が遠のいていく。頭がボゥーっとしてきて、視界が歪む。


(死にたく、ないよ…。)



『交差点で事故発生、歩行者の男性一名が重症、車に乗っていた女性は、その場で死亡が確認されました。男性は緊急搬送され、現在も意識不明の重体とのことです。』


 そんなニュースは速報として流れた。

 友里は嫌な予感がした。先ほどから彼からの連絡が来ない。慌てて外へ出ると、そこには多くの人が詰めかけている。


 そして彼らは無情にも口々に言う。


 『あなたの恋人が事故に遭った』と。



 私は走る。自転車なんて持っていないし、自動車の免許は持っているけど大体事務所の方に止めてるからうちには無いし…。今私が持っているのは財布とスマホと健也のパソコンだ。健也はスマホよりパソコンで連絡を取ることが多い。寧ろスマホは仕事でゲームをする時と店長に連絡する時以外使っていないのだ。連絡手段に困った時、どちらかがすぐに連絡できるように基本的には彼か私のいずれかがパソコンを持っているのだ。


 健也はすぐ近くの大学病院に運び込まれ、足の緊急手術を受けたらしい。彼の脚は骨が外部に露出する複雑骨折と言われるもので、治るのにはしばらく時間がかかるそうだ。とはいえ、あれだけ酷い事故に遭ったというのに、彼の怪我は比較的軽く済んだのだ。幸か不幸か、頭部をぶつけることはなかった上に内臓へのダメージもないそうだ。彼自身の並外れた身体能力もあったのだろう。しかし、痛みのショックや何らかの精神的ダメージを受けているかもしれないと担当医さんに言われた。


 健也の手術が終わり、彼は酸素マスクをした状態で運ばれていた。私はそれに付いていく。

 途中で『冴島友里!?』と病院内で騒がれることになってしまったが、別にそれでも構わない。

 健也が無事なら、何でもいい。出来れば早く目を覚まして欲しい…。


 健也さえいてくれれば…。

 そんなことばかり、ただひたすらに思い続けてる。



 ぼんやりと白い光が目に映る。細い、楕円よりももっと細い、暖かい光。僕は、死んじゃったのかな?

 そんなことを考えてただ目を開こうと力を入れる。しかし、目は開かない。


「…………ぁ……。」


 小さな声が聞こえる。暖かくて、寂しそうで、自然と涙が溢れそうになる、そんな声が。

 布に触れている感覚が手にすることに気付く。口を何かが覆っていることに気付く。


 僕は…


「健也。」

「…おはよう。」

「心配したんだから。」

「…ハハ、ごめん。」


 …生きてる。



 間違えたことなんて今まで何十、何百、何千とあるだろう。


 でも、そんな間違いは、僕等の出会いには必要なものだったんだろう。


 あの時、母親に殺されかけ、家から逃げ出した日も、店主に再開して生存を喜ばれた日も、幼い頃、売れないデビューしたてのアイドルを応援したことも………………。


 そして、


 今、僕の目の前で涙を流して、僕が生きていることを喜んでくれている彼女への言葉も。


『ありがとう。』


 そんな言葉しか、見つからないよ。


 『続きの言葉』は、僕は彼女を抱き寄せ、小さな声で、酸素マスク越しに言う。


『……は…だ、………い、かな。』

「!?………からかわないでよっ。」


 その言葉を聞いて顔を赤くした彼女に、僕はただただ小さく笑いを溢す。



 病室が個室だったため、どれだけ言葉を呟いても、愛を囁いても、この場には二人の男女しかいない。誰かに届くこともなければ、見ることもできない。誰の眼にも映らないこのささやかな『幸せ』は、誰にも汚されない、美しいものになるのだろう。



― 完 ―

この章のLAST。

思ったより長くなってしまいましたが、これがあと四章分あるんですよね…。

まあ、先は決まっていますし、気軽にやっていきます。


ストックを貯めて投稿するので少しだけお時間を頂くかもしれません。ですが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします。

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