PART.25 関係のフィナーレは突然に。
この日、この国の国民が目撃したモノは、とある専業主夫を名乗る男と、国民的女優の恋路の結末である。ここに訪れるのは女神か死神か。その結末まで、後…。
「ハッ!?はぁ…はぁ…。」
俺は今さっき見たテレビの夢を思い出した。俺がこの夢を見るようになったのは、あの告白をした後からだろう。あのデートから数日、考えることが山積みで、正直猫の手も借りたいと言った程疲れていた。今日までの日にいろいろあったが、何とかそれらも落ち着いた。
まず、和美の死刑の日程が決まった。葬儀なんかもすぐに執り行われるらしい。三週間後の日曜日だという話だ。本来は機密事項だというが、俺が高校生であるはずの年齢だったこともあり、特例で事前に教えてもらえた。
二つ目は今日の放送についてだ。『冴島友里のこと〇わかり』という短編のテレビ放送があるらしい。もともとこの番組が、『芸能人のこと〇わかり』というモノだったのだ。しかし、今回だけは彼女の名前を取り上げて大々的に放送することになったそうだ。因みに、これは生放送らしい。
しかし、なぜか俺も出演してほしいという話になった。友里さんのことが知りたいのなら彼女だけでいい気がしたのだが。
そう考えた後、俺はある程度の予測をしておこうと考えるも、友里さんのたまに突拍子もないことを言う癖から、考えることをやめた。
三つめは裕二さんのことだ。裕二さんはあれから出世して部長のポジションにいるらしい。丸橋社長とメールでやり取りをしている時、社員から部長という言われ方に変わっていたため、以前から部長だったという可能性は低い。
四つ目は丸橋TVでアルバイトが出来ることになった。遠山社長の会社と掛け持ちだ。彼らはプライベートでも交友関係を持っているらしく、遠山社長が俺を押してくれたようだ。丸橋社長も俺が作成した資料に目を通して判断してくれたらしく、これからは仕事が多く割り振られることになり、嬉しい悲鳴が溢れそうだ。社長と連絡が取れるようになっていたことで、今後のスケジュールも知ることが出来るようになった上に仕事の効率自体も上がった。非常に喜ばしいことと言えばいいのだろうか、それとも、これは仕事が増えることを嘆けばいいのか。まだ分からない。
今日の放送は丸橋TVのチャンネルで放送される。俺は社長とのパイプを持っていることになるし、維持が出来れば今後の生活でも非常に安泰ともいえる。
…友里さんのヒモにはなりたくないからな。
夜七時、約束の時間がその時間だ。その間に家事を済ませようとしていたのだが、インターホンが鳴るのが聞こえた。
「はい」
『こんにちは、丸橋TVの本田です。まだ時間がありますが、機材の準備などがありますので家に入れていただけませんか?』
「分かりました。」
本田記者。非常に優秀で料理に関する興味関心が非常に強い。しかし残念かな。今は料理を作れるような精神状態ではない。冷蔵庫にも作り置きしてある揚げ物が残っているくらいだ。食材はたくさんあるけど。
「お邪魔します。」
「いらっしゃい。どうぞお上がりください。」
「ありがとうございます。」
今日の本田さんの持ち物はかなり多い。三脚にテレビカメラ、マイクにその他諸々とても一人では持ち運びできないような量だった。男の俺でも、持つのは苦労しそうだ。
設置方法が分からない為協力出来ないため、せめて何か出来ることはあるかと聞くと『料理が食べたい』と言った声が返ってくる。あまり今日は美味しいものが作れないかもしれないとあらかじめ言っておき、気が乗らないもののチャーハンでも作ることにした。
「…。」
「健也さん、返し忘れてますよ。」
「え?あ!?」
少しボゥーッとしてしまい、チャーハンが少し焦げてしまった。フライパンのそこにチャーハンが付いてしまっている。
「健也さんでもこんなミスをすることがあるんですね。」
「今日は特別何か不安なことがあって。」
「私が聞いていいことだったら、相談してください。」
「ありがとうございます。でも…これは俺個人の問題ですから。」
「分かりました。まあ、このチャーハンは少し焦げた程度ですし問題ないですよ。ささ、食べましょう?」
「…ありがとうございます。」
結局チャーハンは少し焦げただけで美味しかった。本田さんは『失敗したって話なのに私が作ったのより美味しいのは何故?』と首をかしげていたのだが、それは別のお話。本田さん、料理凄く上手いんだけどね。実際、料理対決したらひょっとしたら負けるかもしれないと思ったくらいだし。
夜の七時、約束の時間が来た。
『こんにちは!という時間にはもう遅いこの時間!さあさあやってまいりました!『芸能人のこと〇わかり』の特別版、『冴島友里のこと〇わかり』ィィィ!』
『『『『おおおおおおおお!』』』』
『司会は私、木霊彩が務めさせていただきます!そして今回の主人公、冴島友里さんの登場です!』
『こんばんは、冴島友里です。よろしくお願いします。』
『そして今回のキーパーソン!影山健也さんです!』
「あ、影山健也です。よろしくお願いします。」
『かったぁい!もっとフランクで良いんですよ!』
「あ、はい。」
『『『『ふふふふふ』』』』
観客の方からは笑っているような効果音が流れている。実際に笑っているのかは分からない。
…恐怖ともいえるこの時間が今、始まった。
『まず初めにプライベートォォォ!友里さんは家ではどんなことをしているんですか?』
『随分と抽象的ですね。でも…そうですね。健也君が家事は大体全部やってくれますし、趣味に没頭したいとは思ったことはあるんですが、それはそれで少し罪悪感があって…。』
『そうなんですか!では、彼との慣れ初めを…。』
『な、慣れ初め!?あ~、いや、別にそう言うのは…。』
この話を聞く時間、俺は緊張でどうにかなりそうだ。俺はテレビカメラでリアルタイム放送と言った形でテレビに映っている。テレビは音を消して付けてあり、そこで俺が移っていることが確認できる。
『ええ!?では、彼は家でもそのような対応を?』
『ええ。彼は私の身の回りの作業全般をしてくれたり、私が食べたいものなどを先読みして作ってくれたり、私がやりたいことに率先して協力してくれます。』
『本当に、良い方なんですね。』
『ええ。私には本当にもったいないくらいです。』
『えっと、以前家で何か事件があったそうですが、具体的には何が起きたんですか?』
『とあるテレビ局のAという記者さんが私のプライベートに口を出した挙句彼に暴力を振るって夕食に使う材料を床に落とされたり私を強引に家に連れていこうとしたんですけど、健也君が記者を家の外に投げ飛ばし、靴を顔面に投げつけて撃退してくれました。録音機を使って私たちの会話すべてを録音してくれていたのでそれを使って何とかできました。』
『そう言えば、丸橋TVの荒川という記者が最近発狂して社内で暴れまわったという事件がありましたね。それと関係していますか?』
『…恐らくは。健也君を怒らせた人たちって、彼の同級生に聞いたのですが、大体は社会復帰が二度と出来ない程精神的にやられてしまうらしいです。彼の学校にしばらくの間有名になっていた殺人鬼が来たとこがあるそうですが、一睨みされただけで発狂して自分にナイフを突き立てて自殺しかけたらしいですよ。』
『それって、隣町の『自称ジャック』ですか?』
『はい。健也君は『自傷行為ジャック』の間違いじゃないかと言っていましたが。』
『…恐ろしい方ですね。』
『私にはただただ親切に、尽くしてくれるとても良い方なんですけどね。』
昔の話まで掘り起こすのか。
『自称ジャック』とは俺が高校に在学していたころに大量殺人鬼である若田芳樹という人間のあだ名だ。学校に潜り込んで俺らを殺そうとしたらしいが、俺が睨み付けたら何故か急に叫び出して持っていたナイフで手首を斬り付け始めた狂人だな。あれでも数人人を惨殺しているんだから驚きだ。
俺は基本的に自分のことで怒ることが出来ない。だから、他人に向けられた害意をうまく利用して怒りの発散をしているのだ。怒れなくとも、怒りは溜まる。発散できないならできる場所を探せばいい。友里さんのために、俺は怒れる。別に、それでいいんだ。
普段よりネガティブ思考になっていることに、少しだけ自己嫌悪した。
『では、冴島友里さんは彼のこと、ぶっちゃけどう思ってますか?』
「!?」
この瞬間、俺だけではなくテレビの奥にいる誰もが行動を止めた。おおよそ十秒程度だろうか。一分程、時間が止まったようだった。心臓がバクバクと鳴り煩い。でも、『止まるな。』それだけを繰り返している自分がいる。
友里さんはどう返すのだろう。俺は、友里さんが…。
『そうですね、大好きです!』
「!?」
『『『『おおおおおおおお!』』』』
『というか、付き合ってます。』
「…ゑ?」
『『『『ええええええええええええ!?』』』』
ど、どういうことだ?
…波乱の夜はまだ終わりを告げてはくれない。まだ始まったばかりなのだ。
若干無理矢理感があるんですけどね。でも、こうでもしないと二人はくっつけないので無理やりこうしました。
作者の愚痴
というか、健也って本当に人間?異世界から来ました?マジで人間だよね?普通に疑っちゃうんだけど。というか、我ながらハイスペックにし過ぎた!丁度いい!健也様、そのハイスペック3%だけでいいからコピーして渡してくれません?次の試験がマジで死にそうですから!




