誤解です。
「、、、クロ。一緒にご飯は食べれないみたい。ごめんね。」
「あっ、、リリー、待って、、」
「、、、」
「リリーっ」
奥の方に座っていたイトラン様の方へ進む。
イトラン様の隣には、いつもの通りスターチス様と、時々一緒にいる長年のライバルのグラジオラス様が一緒にご飯を食べていた。
私が来ていることに気付いているのはおそらく目が合ったのでグラジオラス様だけだが、知らないふりをしたままイトラン様たちと話していた。
そうして、3人のいるテーブルの前に立った。
勿論、普通に食事をしているように見える食堂だが、目線はほぼこちらに向いている。
「、、、イトラン様。」
「リリーか。何の用だ?」
「あの噂は事実ですが、決して特別な理由があったわけではありません。」
「ははっ、認めんのかよ」
「グランウィーク嬢、、」
「何も聞いていないが?」
「イトラン様が気になっているかと思いまして。」
「はっ、笑わせるな。俺は君の行動に一々興味を持っていられるほど暇ではないんだ。」
「そうですか。しかし、一応、形だけでもと思いまして。」
「なんだと?」
「グランウィーク嬢。あなた様は確かに公女ですが、お相手は皇太子殿下なのですよ。無礼な真似はやめてください。」
「おもしれぇ。、、、っつうか、あっちはそう思ってねぇように見えるけど?公女さん。」
「クロですか?」
「あぁ?クロ?、、、あぁそゆことか、そうだよ、クロユリだよ。公女さんも大したもんだぜ、あの寡黙でいつも冷たい顔してるクロユリをあそこまで懐柔するとはぁ。なかなかやるな。」
「懐柔だなんてそんなことしてませんよ。お友達です。」
「そうか、ダチだからあだ名で呼んでんのか?」
「えぇ。」
「へぇ。じゃあもし俺が俺のことをあだ名で呼んでくれって言ったら呼ぶのか?」
「まさか。あなたとはお友達ではありませんし、クロはクロだから呼んでるんです。」
そうよ、クロは可愛いから言ってるだけで、グラジオラス様みたいな可愛げのない人をあだ名で呼ぶわけないでしょう。
「ははっ、冗談冗談。でも、さっきの特別な理由がねぇってのは違うんじゃないか?特別扱いはしてんだろ。」
「グラジオラス。そのくらいに、、」
「スターチスは黙ってろ。、、、で?どうなんだ?」
「そういう意味で『特別』と言ったわけではないのですが、、」
「違うのか?」
「はい。」
「良い加減にしろ。」
「っ、、悪ぃ、イトラン。」
「リリー。君は俺に何と言われれば気が済むんだ?毎度同じように叱責されたいのか?他人に問い詰められる前に弁解しに来たのは一種の成長と言えるかもしれないが、こうなると分かっていて何故したんだ?」
「それは、、」
言い返せない。
だって、本当に私が悪いんだもん。
「僕が一緒に寝たいって言った。」
「クロ、、どうして来たの?」
「リリーが1人で言われてるの、見てられるわけないじゃん。元々は僕が誘ったのが悪いんだし。」
「クロのせいじゃ、、」
「そういうのは良い。良いから言いたいことだけ言え。」
「、、、リリーが優しかっただけ。リリーは何も悪くない。でも、別に僕は何もしてないし、ただ隣で横になっただけ。どこが問題?」
「、、、お前は随分と自由な人間だな。レイモン侯爵家の嫡子だろう。」
「関係ない。ただ、リリーを責めるのは間違ってる。って言うか、こうやって言い合いしてるのも無駄な時間でしょ。皇太子の婚約者は他のやつと一緒にいちゃダメなんてルール、あったっけ?」
「無論、ないが。」
「だよね。じゃあ、別に僕たちは何も悪いことはしてないわけだ。、、、あんたらもさ、噂が好きなのは分かるけど、リリーのこと傷つけたら許さないから。、、、行こ、リリー。」
「えっ、、う、うん。」
私たちを見ていた人たちに言葉を吐き捨て、私の手を引っ張りながらクロは食堂を出て行った。




