二話
『…は、………じゃ…何や………だ』
___なつかしいこえがする。でも、よくきこえない。
あれ?なにかしなくちゃいけないんだっけ?わかんない。なんだっけ
________翌朝4時半頃に起きると汗をかき、体温がやけに高いことに気が付いた。何か薬を盛られた違和感もないし、今は夏でもない。ましてや運動しているわけでもないから、恐らく何らかの悪夢にうなされていたのだろう。そう結論づけてから枕元にあるバタフライナイフを取って、僕は寝室を離れた。
寝室を出てリビングに行くと必要最低限のもの以外何もない空間があった。完全に持て余しているこの空間はまるで空虚なボク自身を映し出しているようで、いつもどことない不快感を感じる。
ボクはその不快感を置き去りにリビングと直通しているキッチンにある棚から携帯食料を取り出しそのままテーブルで食べる。いつの間にかボクは味を感じなくなったのか、慣れたのか分からないが不味いらしい携帯食料も昨日買った串焼きも変わらなかった。
朝食を済ませて、黒いローブの下にナイフを仕込んでからまだ寒く暗い冬の朝に出た。
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ギルドに着くと、早番をしていた男の受付に本来希望性のはずの仕事を待ってましたと言わんばかりに目の前に置かれた。
「……まだ選んでないけど」
「いや、そうだけどなあ、給料もいい額出るし。お前単独行動好きだろ?まあ、押しつけがましいかもしれんがなあ。それに皆取りたがらないし」
無理にとは言わない。という彼を横目に依頼の内容を確認する。
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依頼内容:シャーグス商家貿易流通ルートの偵察
期間:三週間(それを超えた場合、罰則を科す。)
ルート範囲:ケインズ港~ローゲインの都市
報酬:300,000Y
備考:偵察中、商家の者に見つかった場合の対処は其々に任せるが、公にならないよう注意してほしい。
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妙に短く、依頼の理由もない内容だが、報酬は悪くはない依頼だ。しかし、
「これの依頼主は?」
「ああ、これ?もとからなかったのよ。なんかいつの間にかあったし、でも焼き印はあるし一応成り立ってはいるんだろなあ」
普通なら書いてあるはずの依頼主のサインがなかった。それでもギルド側の承認の焼き印はしっかりついているから、認知はされているのだろう。
サインもなく、内容も簡潔すぎる依頼。普段ならこの違和感から遠ざかるはずのボクは、何故かこれに止められない程の興味がわいた。
「これ、受けるよ」
気づいたら、勝手に言葉が出てきていた。
金の単位がYなのは円が英語でyenだからです。