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魔法と容姿


 生まれてから約三ヶ月程経った頃、だいぶ俺の目も見えるようになった。

 まだ自由に動けないが、父や母が身の回りの世話をしてくれたり、抱っこして家の外に連れ出してくれたりしている。あと三歳ぐらいの女の子(たぶん姉だろう)が顔を覗き込んだり、頬や手を指で突いてくる。指を握ってやると凄く喜んでくれるのでついつい相手をしてしまう。


 この三ヶ月でわかった事は俺の家は農家で四人家族。

 住んでる村は人口百人程の村で、村人の多くが農家の農村みたいだ。

 あと、父や母、それから姉がアルフェと俺に向かって言っているので俺の名前はアルフェなのだろう。あとの言葉はまだわからないが必死に理解しようと家族の会話を聴いているので、近い内に理解出来るだろう。いや、理解してみせる。

 

 せっかく前世の記憶があるのだ。なぜあるのかはわからないが、ラノベの様な異世界チートも努力次第で可能かもしれないのだ。

 なのでまず最初の目標は言葉の理解。それができたら文字の読み書きを出来るようになりたい。

 父や母の行動を見ているが、何かを読んだり、紙に書いたりする所を見ていない。もしかしたら識字率が低い世界なのかもしれない。

 ならば読み書き出来るようになれば大きなアドバンテージになるだろう。


 あと嬉しい事が一つ。

 どうやらこの世界には魔法があるみたいなのだ。

 家の明かりはランタンを使っているのだが、母や父が手から火を出してランタンに火をつけていたのだ。姉も驚く様子はないし、この世界では当たり前なのだろう。

 真似して火を出そうとしたが、まったく出る様子がない。何か理由があるだろうから言葉の理解と併用して魔法も使えるように努力しよう。

 まぁ、これが今の目標だ。すぐにどうこうできる事じゃないので気長に努力していく事にする。


 あとは気になっている事がある。

 自分の容姿がどうなっているかだ。

 願いが叶えられているならそれはもうとびきり可愛い赤ん坊の筈。

 だがこの家には鏡はないし、自由に動けない赤ん坊の身体では水面を見て確認する事も出来ない。

 今確認できる方法は家族や村人の俺を見た時の反応だけ。

 家族は俺を見る度笑顔になるし、村人は皆デレデレしてる。

 特にこの村の村長っぽい老人は俺によく会いに来てはデレデレしてる。

 

 この反応を見るに、俺の容姿が整っているのは間違いないが、早く自分の目で確認したいものだ。


 

   

            ◆◆◆


 ――五ヶ月後。


 生後八ヶ月となった俺はというと、まだおぼつかない感じだが歩けるようになり、人の名前や挨拶程度の言葉なら話せるようになった。

 パパ、ママ、ネェネと言った時の家族の喜び様は尋常じゃなかった。

 ちなみに父親の名前はガラン、母親はミーネ、姉の名前はジェシカという。

 村長の事はジイジと呼んだら泣いて頬ずりしてきた。


 この頃になると毎日ではないが、母が父の手伝いで畑に行く事が増え、村長の家に一時的に姉と一緒に預けられるようになった。

 これは俺にとっては非常に嬉しい事だった。


 なぜなら村長の家には本が数十冊あり、村長が紙に文字を書いてる所も見たのだ。

 つまり村長から文字の読み書きを習う事が出来るということ。

 本に興味があるそぶりを村長に見せると本棚から絵のついた本をとり読み聞かせてくれる。

 俺が真剣に本を読んでると姉も真似して本を一緒に読むようになった。

 これが村長の家での過ごし方になった。 



             ◆◆◆



 ――月日を更に流れ二歳になりました。

 この頃になると母は完全に父と一緒に農作業を行うようになった。

 姉のジェシカも五歳になり畑仕事を手伝うようになった。

 どうやらこの村の子供達は幼い頃から農作業の手伝いをするのが当たり前のようだ。


 俺はというと、村長に本格的に字の読み書きを教えてもらっていた。


 「ジイジ、字の読み書き教えて?」


 上目遣いでお願いしたら二つ返事でOKしてくれた。

 おかげ様で少しずつだが読み書き出来るようになってきた。


 ついでに魔法も教えてとお願いしたが、こちらは難色を示した。


 「アルフェ、魔法は大変危ないものなのじゃ。まだお主には早い。もう少し大きくなったら教えてやるから今は我慢じゃ」


 そう言って教えてくれなかった。

 だが俺は諦めていない。なぜならば本棚に『魔法について』というタイトルの本を見つけたから。

 

 問題はどうやって本棚から取るかだ。俺の幼い身体じゃ当然届かない。

 まぁ、上手く本が取れたとしても村長にすぐ見つかって没収される可能性が高い。


 ここは力技しかあるまい。


 「ジイジあの本が読みたい読みたい読みたいよー!!」


 駄々をこねてみた。


 数十分の格闘の末、読むだけならと本を取ってくれた。

 勝利の戦利品を受け取り、本を開くが書いてる内容が難しく読めない。読めないとわかっていたからこそ村長はこの本を渡したのだろう。

 

 ふっ、しばらくはこの本を読めるようになるのが目標だなと心に誓う。


 本を家でも読みたいと言ったら、再度数十分の格闘の末、了承を得たので家でもこの本の解読にとりかかる。 


             ◆◆◆


 本を読める知識を得るのに一年かかり、現在三歳。

 その頃には母のお腹に新しい命が宿り、もうすぐ生まれるみたい。

 喜ばしい事だが、俺の意識は魔法の方へと向いている。

 早速本を開いてみる。書いてる内容はざっくり言うと魔法がなぜ世界にあるのかが長々と書いてあり、使えそうな知識は僅かだった。


 まぁ、僅かでも魔法への足掛かりが見つかったのだから良しとしよう。


 早速本の内容を実践する。

 この世界の人間の心臓には魔力を貯蔵する能力があるみたい。

 魔力の貯蔵量は個人差があるらしいが、魔力がない人間はこの世界にはいないらしい。

 さて魔法を使うにはだが、まず心臓に魔力がある事を認識する事が大事らしい。

 目を閉じ心臓に温かいエネルギーがあるイメージをするといいみたい。

  

 目を閉じイメージすると、左胸がほんのり温かくなった感覚がある。どうやらこれが魔力らしい。


 魔力を感じる事が出来たなら、次は魔力を心臓から右手までの血管に沿って流すイメージ。

 すると右手が温かくなる。

 あとは手から好きな属性の魔法を出すイメージをすればいいらしいので、小さな火が右手から出るイメージをする。


 ――ボッ!!


 「おおっ、火が出た!!」


 イメージ通りの小さな火が右手から出る。


 これが基礎魔法らしい。

 

 他の水、風、土、雷、光、闇の基礎魔法も試してみる。


 「うーん、水、風、土、雷の基礎魔法は出来たけど、光と闇の基礎魔法は出来ないな」


 本によると、光と闇属性の魔法は適正がないと使えないらしい。

 つまり俺には適正が無かったという事だろう。


 少し残念だったけど、まぁ、他の基礎魔法は使えたので良しとしよう。

 なお、基礎魔法は大人なら誰でも使えるらしい。

 でもこの世界で魔術士を名乗れるのは初級魔法以上を使える者達みたいだ。うーむ、奥が深い。


 本には基礎魔法までの情報しか載っていなかった。

 初級魔法以上を習得するにはどうしたらいいのだろう?

 

 村長に聞いてみるかと思い、村長の家に向かった。


 「ねぇ、ジイジ。初級魔法以上を覚えるにはどうすればいいの?」


 村長は驚いた顔をした。


 「まさかアルフェ、あの本が読めたのか!?」


 「うん、読めたよ」


 「なんと!! ······まさか基礎魔法を使ってはおらんだろうな?」

 


 「······てへ、使っちゃった」

 

 「······本当に使えたのかい?」


 「うん、ほら」

 

 ――ボッ!!


 「な、なんと!!」


 村長に火の基礎魔法を見せるとかなり驚いた。

 その様子を見て気を良くして他の四属性の基礎魔法も見せる。


 「······」


 村長は真剣な顔をして俺を見つめている。もしかして使うなと言われていた魔法を使って怒らせたか?



 「···ジイジ怒った?」


 上目遣いで尋ねるとジイジは表情を崩す。


 「怒ってはいないぞ。ただ三歳という年齢で基礎魔法を五属性も使えた事に驚いていただけじゃ」


 「そっか、じゃあこれからも魔法使ってもいい?」


 「うーむ、人に向けて使わないのなら使ってもいいじゃろう。しかし、他の子と比べて頭が良いとは思っていたが、これ程とは。アルフェは天才なのかもしれんな」


 村長は優しく微笑みながら俺の頭を撫でる。

 

 よし、村長の許可も取ったしこれからも魔法を向上させていくぞ。

 その晩、父や母やジェシカにも五属性の基礎魔法を使える所を見せたら、「さすが俺の子だ!」と父は喜び、母には「人に向けて使っては駄目よ」と言われ、ジェシカは「私はまだ使えないのにアルフェだけずるい」と言って拗ねてしまった。

 ジェシカの機嫌を治すのに苦労したよ。


 そういえば魔法に夢中になっていて自分の容姿を確認する事を忘れていた。

 翌日の朝、村の井戸水を汲みに行くのを日課にしている父についていく。狙いは井戸水を汲み取った桶の水面だ。

 水の基礎魔法は大人なら使えるが、生活用水レベルの水を出すと魔力を大幅に減らし疲労してしまうらしい。その為生活用水は井戸の水を使っているみたいだ。

 

 それよりも桶の水面だ。これで俺の容姿を確認できるぞ。

 父が井戸から水を桶に入れる。

 桶に満たされた水を覗き込むとそこには見目麗しい美幼児が写っていた。

 

 あまりの美しさに思わず見惚れてしばらくボーッとしてしまい、父に心配された。

 自分の容姿が美し過ぎて時の感覚を忘れる程とは。

 神様願いを叶えてくれてありがとうございます!!


 これで俺は人生勝ち組だ。この時の俺はそう信じていた。


 

 

読んで頂きありがとうございました。

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