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Le Château du Mirage  作者: Cecile.J
開幕
6/43

V. Les Compères

 【探索】参加者の顔合わせの場として指定された場に、一番早く着いたのはだらしない格好のロランだった。別に寝巻きというわけでもなく、外行きの服を身につけているのだが、なんとなくだらしなく見えるのは不思議である。封筒のメモの道順から辿り着いた場所は、談話室とも簡単な図書室ともとれる城内の空間である。東の一面は廊下に開放されていて、南に窓があり、西は壁で両開きの扉がある。北側に本棚が何列か並び、南の窓と本棚の間にソファーとテーブルが置かれている。長方形の大きなテーブルを囲んで、南北に三人掛けが一対、東西に二人掛けが一対、広くゆとりをもって配置されていた。ロランはしばらくあたりを見て回り、南側の三人掛けの扉側の位置に座る。特に何か考えてその位置を選んだわけではない。ロランが足を組んで何か考えていると、左側の扉が開いてサンドラが入ってきた。相変わらず黄色いコートの軍服姿で髪も整えられ、今日は帽子も乗せているので、ロランとは対照的なきちんとした印象である。彼らは一瞬視線を交わすが、言葉は交わさず視線を外す。サンドラはロランと点対称な位置、北側の三人掛けの廊下側に腰掛けた。そのまま沈黙していると、同じ両開きの窓から今度はエディがやってくる。エディは先に来ていたロランとサンドラを見て、ロランに声をかける。ロランは軽く右手を上げて「おう」と短く挨拶をする。エディはサンドラとは面識がない。飛竜に乗って飛ぶ姿を窓の外に見かけたことがあるだけである。エディはサンドラにも「そっちは……」と声をかけるが、サンドラはエディを見て「自己紹介は一度にしましょう」と素っ気なく返す。どうせこれからみんな集まって自己紹介をするのだろうから、今あえて一人ずつにする必要もないということだろう。なるほどと思い、エディはおとなしく座ることにする。エディはサンドラの隣、ロランの真向かいとなる、北側の三人掛けの扉側に座った。

 次は廊下側から影の男ハルトラードとシルキアが現れる。エディはどきりとして緊張する。彼らはすでに席についている面々をちらと見回し、廊下側の二人掛けに並んで座る。シルキアが窓側、ハルトラードが北側だ。シルキアは隣の男にべったりと寄り添って甘えている。エディはそれを見て少し安心もしつつ悲しくもある、いたたまれない気持ちになって俯く。

 ミラベルも廊下側からやってきた。彼女はサンドラとだけ面識がある。今日の彼女は派手な服装をしていた。赤い別珍のドレスは裾が広がっていて、ペチコートのレースがのぞいている。艶やかな栗色の巻き毛は上半分をリボンでまとめ、リボンはドレスと共布のようだ。華やかなミラベルはみんなを見回して、シルキアとハルトラードの親密な様子にぎょっとしつつも、南側の三人掛けの廊下側、ロランの隣に腰をおろした。ロランはミラベルを見て、派手な娘だなあと思う。

 六人が場に集まると、音叉を振るような澄んだ音色がどこからか響き渡った。あたりを見回しても音源がどこかは分からない。音が鎮まると、両開きの扉から小柄な少年が一人現れる。白色に金の縁取りの上下をきちんと着て、肩まで伸びた金髪の上に丸い帽子を被っている。彼はつかつかと近寄って来ると、集まったみんなを見回して、明るく挨拶をする。

「みなさん、こんにちは」

 場違いな快活さにみんなが驚くなか、ミラベルだけがついといった調子で「こんにちは」と小声で挨拶を返す。少年はミラベルを見てにこりと微笑んだ。そしてみんなに話しかける。

「無理もないことですが、みなさん、まだ戸惑われているようですね」

 反応を待たずに自己紹介をする。

「私は、ルパニクルスで例の問題に関する対応を任せられているアンドロイドのエリクというものです」

 そして付け加える。

「アンドロイドというのは、人間を模して造られた機械を意味する一般名詞です」

 誰も反応しない。なんと言って返していいのかみんな戸惑っているのだ。だが、みんななんとなくこの違和感に説明がついた気はする。エリクは機械なのだ。アンドロイドのエリクは続ける。

「個別にお話がついている通り、みなさんにはこれから、例の問題に対処するための冒険の旅に出ていただくことになります」

 エリクは“解決”でなく“対処”という言葉を使った。ロランがぼそりと呟く。

「冒険の旅ねえ」

 エリクは嬉しげに「そうです」と肯定して続ける。

「終わりのない長い旅ですし、大変なことや危険なこともあると思いますが、みなさんが一人も欠けずに任務を遂行されることを、私たちは心からお祈りしています」

 つまり死ぬかもしれないと言っているのに、最初のままの明るい調子なので、たいへん違和感がある。だが、誰も何も言わない。アンドロイドのエリクは続ける。

「みなさんにしていただく冒険の旅のことを、ルパニクルスでは【探索】と呼んでいます。【探索】の参加者は『旅の仲間』ないしは単に使者と呼ばれます。旅の仲間は五名と定められていますが、今回は見かけ上六名です。旅の仲間の選定基準はたいへん複雑ですが、古今東西全世界すべてのデータを集積し、必ず仲良くなれる人たちが選定されています。これは間違いないことです。今日みなさんに集まっていただいたのは、実際に【探索】を始める前に顔合わせをして自己紹介していただき、親睦を深めていただくためです」

 エリクはさらに続ける。

「旅の仲間に秘密はなしです。これからしてもらう自己紹介でも、嘘や秘密はなしとしてください。私はみなさんのすべてのデータを把握しています。自己紹介や質疑応答で嘘や秘密が検知された場合、私が指摘するので修正してください」

 これは驚いたり困惑してよいところだが、みんな既に諦めている。どうにでもなれという雰囲気が漂う。やけくそになればなんでも楽しい。アンドロイドのエリクが言う。

「では、さっそく順番に自己紹介していきましょう。お話ししてもらう内容は、お名前とキーワード、どこから来てそこはどんな場所であなたは何者だったか、得意分野、なぜ探索に参加するかにしましょうか。それぞれの項目の間に質問の時間を挟みましょう。あんまり堅苦しく考えないで、自由な雰囲気で楽しみましょう」

 みんななんだか頭がぼんやりしてくる。これだけ色々指定されて自由な雰囲気もないものだが、エリクが「ではエディさんから右回りに。はい!」と言ってぽんと一つ手を叩くと、摩訶不思議なことにそういう雰囲気になってくる。

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