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5.恋愛ヒエラルキー、発動?

 

 学院に着き教室に入るまでに、俺はすっかりと自分の置かれている環境を忘れていた。

 妹だけが最弱ぼっちな俺に声をかけて来るというのが、学院内における俺への常識と認識。


 そんな俺を見る目が、リンの登場で一気に変わってしまった。


 存在感が無く、誰からも気にされることが無い俺だったのに、リンの隣を歩いていただけで、今まで動くことのなかった恋愛におけるヒエラルキーが、急激に変化したように感じている。 


 出来れば俺の存在を、今すぐオート透明化してくれ。


「……心配しないで大丈夫ですよ? 何かが起こらないように、手はすでに打ってあります」

「な、何の手……かな」

「何だと思います? 当てて下さい! 当たったら、イツキくんの言うことを何でも聞いちゃいます!」

「いきなりクイズ!? というか、何でも……って……」

「あ、でもですね、えっちぃのはまだ無理なので、当たり障りのないものでお願いしますね?」

「な、ななななな……!? そ、そそそ、そんなこと言うはずが無いよ」


 というか、まだってどういう意味だろう。


「そうなんですか? でもイツキくんって、リーダーしてる時いつも~」

「わーあああああ!!」


 俺の黒歴史10の内の一つを今ここで暴くとか、何て恐ろしい。

 しかも廊下で声が響きやすいのに、リアルな世界、それも学院中に広められたら間違いなく終わってしまうじゃないか。


 ゲームでは出来なかったけど、ここでは遠慮なく行動に移させてもらう。


「わたしたちを率いるリーダーは、いっつもハーレムパーティで~女の子たちに触れま――もがっ!?」

「……悪い子にはお仕置きが必要のようだな。その口……手で塞ぐよりも――」

 リーダーと呼ばれた俺は、おかしなスイッチが入ったせいかリンの口を手で塞いだ。


『バサバサッ……!!』

 その最中、大量のプリントが床に落ちたような音を感知……いや、聞こえた。


「ミ、小野瀬くん……何をしているの……? その子はまさか……」

「ぬあっ!?」

 おお、何てこった。何で出会っちゃうのかな。


 落ちたプリントを拾い集める俺に対し、リンは両腕を大きく広げて深呼吸をし始めた。


「スーハースーハー……あ、大丈夫です。彼には何もされてませんから」

「……え? で、でも、口を押さえつけられていましたよね? し、深呼吸だって」

「見間違えたんじゃないです? されていませんよ? ね、リーダーさん」

「は、はひ?」

「リーダー? ミキ……小野瀬くんがですか?」

「そうなんですよぉ~そう呼べ! なんておっしゃっていたので、素直に従ったわけなんです」

「……小野瀬くん? どういうこと……?」

「い、いや、その……この子が教室に行きたがってて、れ、例の転校生みたいで……」


 何でよりにもよって、妹と遭遇しちゃうんだよ。


 さっきまではリーダーと呼ぶのはおかしなことですよね。なんて言っていたのに、リーダーって呼んじゃうし、まさかと思うがすでに一樹を敵認定とかしているんじゃ……。


「もしかして、今日からウチのクラスに転校の……」

「はい、そうです~! そういうあなたは……イ――」

「い、いい天気だから、教室に急ごうか!」

「小野瀬くん、何かおかしいよ? 転校生さんを目の前にして浮かれちゃってるの?」

「はっはっは! そんなバカな。委員長! さぁ、急ごう!!」

「委員長さんなんですね! 彼の言う通り、急ぎません?」

「――! もうこんな時間! 小野瀬くんは先に席に着いて! 彼女を先生の所に連れて行かないとなの」

「た、頼むよ、委員長!」


 おぉ、危なすぎた。

 俺のことを調べ上げているリンのことだ。恐らく一樹の名前も知っていて、呼ぶつもりだったはずだ。


 委員長なのは嘘じゃないし、咄嗟だったがセーフだった。

 初対面同士の彼女たちなのに、見えない火花が弾けていたように見えたのは、気のせいだろうか。


 転校初日だというのにリンはすでにヒエラルキーを確立させていて、恐ろしさを感じた。

 

 ゲームの中の地位をリアルでも引き継いでくれているなら、俺だけはリンに強気な発言が出来るかもだが、狂戦士リンが本性だとすれば迂闊に言えない気がする。


 しばらくして、一樹が戻って席に着いたところで、担任が教室に入って来た。


『初めまして。白雪しらゆきが丘学園から参りました、赤名リンと申します! よろしくお願いいたします』

 良かった、至って普通過ぎる自己紹介だった。


 誰もが知るお嬢様学園という時点で、とんでもない財力があるのは間違いなさそうだ。 

 学園の名前と小柄で可愛い彼女に対し、誰も彼もが落ち着かずにざわついている。


 そんな中で飛び出した彼女の発言は、今後のぼっち生活を揺らぎかねないものだった。


『後ろの席の男の子……えっと、小野瀬くん!』


『え……俺!?』


 クラスの中では最強のぼっちであり、妹を除いたその他の女子からすれば、恋愛相手にするはずのない最弱野郎という認識な俺に対し、一斉に視線が注がれた。


『あなたに沢山奪われたモノを、これから少しずつ取り返させてもらいます! ですので、今日から容赦しないですからね?』


『うえええええええ!?』

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