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48.思い出補正と言い訳作り


「一体どこで何をしていたのか、私の目を真っすぐみつめて言ってくれる?」

「そ、そうだね……」




 リンを泣かせた挙句、何かをしないと解決しない。

 そう言われてあの場所で30分以上も時間をかけた結果、見事に追い出された。


 そして外に放り出されたら、実は大して時間が経っていなかったので学校に戻って来た。

 ところが、一樹(いつき)が俺をすぐに見つけてくれた上、そのまま保健室に引っ張られ今に至る。


「どこに行ったか覚えが無いなんて、嘘が下手だよミキちゃん。どうせ、ミキちゃんのことだからどこかの女の子と一緒にいたんだよね?」

「いや、いつから俺はそんなキャラに?」

「ハーレム空間を作り出した男って聞いたよ? それって嘘じゃないんだよね?」

「ゲームの中の出来事であって、嘘でも何でも無いというか……」


 まさかと思うが、一樹とリンは秘密裏に連絡でも取り合っているのだろうか。

 さすがにそれはあり得ないはずだ。


 それにしてはすぐに見つけられたし、教員に怒られる前に保健室に直行することになったけど。

 しかし、何でベッドの上で一樹の目を見つめなければならないのか。


 何もやましいことなんてして来たわけでも無いのに。

 強いて言えば思い出未遂だろう。


「じー……」

「嘘だぁ!」

「へっ? 見つめてるだけなのに、何が嘘だって?」

「ミキちゃんの目からは思い出を作って来たって見えるんだけど、嘘なんだよね?」

「何にも作れてないし、補正して来ただけで何も……あっ」


 真正面に見える一樹の顔が、みるみるうちに真っ赤になっている。

 これは怒らせたら駄目なやつだった。


 何か言い訳を作らなければ、ここから抜け出せそうにない。しかし被害者は俺であって、リンから一方的にされただけなのに言い訳なんて思いつきようもないのだが。


「ふぅ~ん。やっぱり誰かと何かして来たんだ? 嘘はつけないものだよね」

「……んっ? まさか、カマかけだったのか?」

「そうでもしないとミキちゃんって、嘘を言うようになったし。ということだから、答えてね!」


 結局してやられた。

 委員長としての力量は本物のようだ。一緒に住んでいる以上、これ以上誤魔化しても仕方が無いか。


 今は丁度昼休みの最中ということもあってか、誰かが邪魔をして来ることも無い。

 そうなるとリンとの間にあったことを洗いざらい話すことに、何の支障も無いと思われる。


「え~とだな……お、思い出の子にふと会いたくなって、それで朝のうちに会いに行ってみただけで、何もおかしなことにはなっていない……よ?」

「思い出の子? それって女の子? いつの?」

「い、いつって……」


 これも何か言い訳を考えるべきか。しかし、上手い言葉が思い浮かばない。

 そうなるとリンのことを言うしか――


「いっちゃん、そこで男子押し倒そうとしてるけど、いつからそんな子になったの?」


 観念して言おうとしたら、いつ入って来たのか分からないが保健室の中に、ヒナの姿があった。

 どうやら俺への助け舟っぽい。


「ええぇぇぇ!? ヒナちゃん、いつからそこに!?」

「んー、見つめ合ってた時から」

「そ、そんなんじゃないよ? 本当だよ?」

「言い訳しなくてもいいのに~。ねぇ、幹リーダーくん?」


 変な言い方をして来る辺りが、黒ウサギの悪い癖だ。

 ふざけたことを言っているが、フィーネことヒナは生徒会の人間で油断出来ない。


 この状況にあえて顔を見せたということは、俺のしたことを何か知っているということになる。


「変な呼び方するなっての。そういうヒナは何の用があるんだよ?」

「おーおー、いっちゃんの前でだと強気じゃん? あの子の前では弱いのに~」

「……何のことだか分からないな」


 ずっとリンにかかりきりだったこともあるが、まるで全てを知っているかのような口ぶりだ。

 そんなはずは無いんだが、もしそうだとすると一樹には何て言えば。


「ミキちゃん。やっぱりそういうこと?」

「ど、どういうことかな?」

「他にもそこそこいるのは見て分かっていたけど、初めから決まっていたんだよね?」

「何のことを言っているのか分からないけど、それってゲームの話だよな?」

「ううん、リアル。現実世界だよ。リーダーとして攻略組にいたんだったよね? 私、知ってるよ」


 おかしい。少なくとも、ゲームの中でのことは一樹にはほとんど話していないはずだ。

 それに話をしたとしても、理解出来る話題じゃない。


 そうなると、これはまさか――

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