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46.俺を内面から攻略に来ている件


 何たる言われようだ。

 俺がいつマゾッ気のある人間に成り下がったというのか。


 少なくともLOR(レジェンドオブリアル)時代には、そんな変態みたいな動きをした覚えは無い。


 そもそもバーチャル世界でそんなことは出来ないし、出来たとしたらPK(プレイヤーキル)扱いされるのがオチだ。


「何でこんなことをするのか聞いても?」


 そもそもの問題として、リンは俺をどうしたいのか。

 ここは冷静かつ落ち着いた答えを求めなければ駄目だ。


「……イツキくんって、結局どうしたいんですか? リンとは運命的な出会いを果たして喜んだんじゃないんですか~? リーダーの時もはべらしていたくせに、学校でもハーレム空間作り出すとか……挑発してるとしか――」


 俺のことを本名で呼ばずバーチャルネームで呼び続けるし、リンの方こそぶれぶれじゃないか。

 何がしたくてこんな真似をしているのか、全くもって意味が分からない。


「つ、作り出しているつもりは無い! そっちこそ、こんな拘束して俺のことを一体何だと……」

「だってこうでもしないと、振り向く気配を見せませんよね? それともリンじゃなくて、他に好きな子がいたりするんですか?」

「それは……」


 正直な所、学校の中で誰が一番気になるかと言われれば、はっきりと答えが出て来ていなかったりする。


 強いて言えばみこさんになるが、こればかりは思い出補正がかかっているとしか言えない。

 

「みこ……なんて言いませんよね?」

「はっはっは、そんなバカな」

「ですよねぇ。みこだったら、それはそれでイツキくんを閉じ込めちゃえば……」

「――はっ?」

「――っていうのは、もちろん冗談に決まっていますよ? 望まれたら本気にしちゃいますけど」


 まぁ、すでにこの状態が閉じ込められているようなものだけど。

 どこか分からない部屋で両手両足が自由に出来ないとか、あまりにもおかしな行為だ。


「と、とにかく、出来れば目隠しも取ってもらえないかなぁと」

「え、嫌です」

「えええ? い、いやぁ、リンの顔が見たいなぁ」

「今わたし、裸なんです」

「はっ、裸ぁ!? おかしいって、それは!!」


 確かめたくても確かめられない状態とか、何てこと。

 もちろん冗談なんだろうけど、そんな状態で俺を噛んで来るとか普通に考えてもおかしすぎる。


 視界が真っ暗な状況で、唯一聞こえて来るのが彼女の微かな動きだけ。

 裸かどうかは置いといても、どういうつもりなのか。


「イツキくん……ううん、幹くんの背中って意外に鍛えているんですね」

「ほわああっ!? な、何をしているの?」

「密着です。何か気付いていますか?」

「…………うぅ」


 何となくの感触が背中から伝わってきている。

 それが何なのか具体的には答えられないものの、見えない足下からはひんやりとした金属を感じた。


 これはベルトだろうか。

 裸という言葉に騙されそうになったが、俺の首筋には、はぁっというため息がかかって来ている。


「困った人ですね、本当に」

「うわお!?」

「騒ぎすぎですよ、本当に。たかが息じゃないですか。でも、これもリンにとって精一杯の――」


 彼女の期待に応えられなかったという意味かもしれないが、息を吹きかけるのは反則だろう。

 今が何時かも分からないけど、どうすれば脱出出来るんだろうか。


 そして若干、そろそろもよおしそうな気配がある。


「リ、リン……ごめん、限界が来た。今すぐ目隠しを外してーー!!」

「……限界ですか? いいですよ、それなら外したらすぐに行動を起こしてくださいね!」


 ついに脱出の機会が訪れるのか。

 いやその前に、いち早くあの場所に急がなければならない。


 そうじゃないときっと大惨事を引き起こす。


「う、うおおおおおお!!!」

「――っ!? わわっ!」

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