42.義妹の疑惑と密かでもない想い
「幹ちゃん!! どうなってるの!」
「はい?」
ミズハことはずみとの出来事の後、家に帰って寝て、目覚めた朝。
何故か血相を変えた妹が、許可無く俺の部屋に入って来た。
こんなことは初めてだ。
俺がLORにハマっていた時ですら、部屋には入って来なかった妹が、どういう心境の変化を遂げて入って来たのか。
「はい? じゃないです! 身に覚えのあることを全て告白してくれますよね!?」
「いや、身に覚えが無いんだけど……?」
「あくまでもしらばっくれるつもりなの?」
「俺にも分からないことだし。一樹は分かってるんだよな? それなら、俺の胸に手を押し当てて教えて貰いたいな」
「え、む、胸に!?」
何を勘違いしたのか、一樹は自分の胸に俺の手を引き寄せようとしている。
「俺がじゃなくて! 一樹が、俺の胸に手を当てる……だぞ?」
「そ、そうだよね、じゃ、じゃあはい!」
バーンなどと、一瞬自分の胸に強烈な張り手を食らった気分だ。
忘れていたが、一樹は腕っぷしの強い妹だった。
「げ、げほっ……や、優しくお願いします」
「あっ! だ、だよね、ごめんね」
「……で?」
「幹ちゃん! 最近遊びが過ぎると思うんだ! 身に覚えがあるはずだよ?」
もしや、保健室とかミズハとか、はたまたリンとのことが明るみに出たのか。
保健室のはたぶんバレてると思われるが、リンは令嬢の圧力で揉み消せるし、ミズハもそれなりの令嬢。
うん、問題無い。
「私の目を見て誓える?」
「い、一樹の目を見つめるのか?」
「え、う、うん」
何で朝から、妹の目を間近で見つめねばならないんだ。
俺に何の得が……と思っていたら、
「幹ちゃん、顔赤いよ……? 熱でもあるの?」
そりゃあ、恥ずかしくもなる。
少なくとも今まで妹相手に意識はしないし、して来なかったはず。
そんなことを思っていたら、一樹の方から目を背けられた。
「……失礼な奴め」
「だ、だって――」
「何だよ?」
「これから学校じゃなければ、勢いそのままにキスして貰えると思ってたんだもん」
「な……!?」
「わ、私、先に行くね! 幹ちゃんも遅れないように!」
「あ、うん……」
あいつ、焦りでもあるのか。
もはや包み隠さない想いをぶちまけて来たじゃないか。
いや、義理とはいえ、一樹相手に意識はしないだろ。
何という朝だったのか。
ミズハの行動が気になるけど、学校に向かうしかないな。




