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40.弱々リーダー、ネコに好かれる


 俺のことをイツキと呼んでくれたミズハが、助けに来てくれた。

 それだけで安心した。


 ユウキに色んなモノを奪われそうだったが、やっぱり攻略組だった彼女たちがいい。


 それにしてもさっきからこそばゆい。

 顔はもちろん、手足に至るまでザラザラとした感触が俺を舐めている。


『なっ、舐めている!?』


 勢いよく起き上がると、その犯人が驚いて逃げてしまった。

 どことも分からない部屋にいると思ったら、白いネコに懐かれていたらしい。


「何だ、目を覚ましたのか?」

「はずみ……じゃなくて、ミズハ! こ、ここは?」

「ミズハでいいよ。幹……のこともイツキって呼ぶ。その方が嬉しいんだろ、元リーダーとしては」

「や、それはまぁ……っで、でも、この前俺のことを小野瀬って……」

「あれは委員長から言われたから、それに乗っただけ。狂戦士みたいに冷たくするつもりも無かったけど、イツキにはショックだったんだろ? 違う?」

「その通りです。だから保健室であんなことに……」

「アハハハハッ! 本当に、弱っちいよね! ウチが傍についてていないと、雑魚イツキは何も出来ない。弱々リーダーのまんま、変わってない!」


 これには何も言えない自分である。


 現実と仮想世界でこうも違うのかと自問自答しそうになるが、現実ではぼっちを堪能していたし、義妹の名前でイキっていただけで本質は何も変わっていない。


「いや、うん……ミズハの言う通りで俺は弱いよ」

「守るって約束、覚えてるか?」

「まぁ、何となく?」

「前も言ったけど弱々リーダーイツキは、ウチがずっと傍にいて守ってやる! だから、攻略組の他の女子とか気にしなくていいんじゃないか?」


 何という男っぷり。

 白ネコキャラとして頼りがいのあるのは、リンとミズハだったが……。


 彼女の言葉に落ち着き、周りを見回すと意外にも女の子っぽい部屋だった。

 学校の保健室から、ミズハの家? に運ばれたのだろうか。


「う、うん」

「ん? ここはウチの部屋じゃないぞ。んと、正確にはオンラインゲーム専用の離れの部屋。それこそ、イツキとの出会いの部屋! だからくつろいでいい」

「せ、専用部屋!? ど、どれだけお嬢様なんだよ……」

「普通だぞ? それこそ赤名が化け物ってだけで、ウチもそうだし学校の女子って大抵、財閥の娘とかだし。知らなかったのか?」

「え、そんなバカな……」

「男子は知らないけど、女子は結構多いぜ? ウチは下級の方だと思うけど」


 これは何とも思わぬ暴露。

 リンだけが特別だとばかり思っていたのに、まさか攻略組メンバーはみんなお金持ちなんじゃ……。


 それにしても、二人きりなのにミズハとだと緊張感が無い。

 確かに女子なのに、慣れ親しんだ親友のようなそれくらい気楽な空間だ。


「そ、そうなんだ」

「……で、どうする?」

「どう……とは?」

「ウチのことを意識するんなら、ここでどうにかなっても構わないけど。イツキ的には、ウチはそういう対象じゃないか? それはそれでだけど、結構傷つく」

「――う」


 ですよねぇ……などと言おうと思ったら、ミズハが急にしおらしくなっている。

 保健室からの救出劇で、連続イベントとかこれって、リアルなモテ期なのか。


「ミ、ミズハさえよければ……その――」

「ん、分かった。そのままベッドで寝たままでいい。大人しくしときなよ」

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