38.保健室登校者のヒミツ
「保健室登校って知ってるかい? ううん、知らなくてもいいんだ。幹と僕はこれから、ずっと一緒に過ごすんだから……」
何やら不思議な夢を見た。
夢の内容は思い出せず、ただ何となく心地よい声が聞こえてくるだけ。
体自体に痛みは感じられないのに、何かが乗っかっているような、そんな重さをずっと感じている。
「……まだ目覚めてくれないのかい?」
誰だろう。しかも、とんでもなく間近から声が聞こえているけど。
「じゃあ、保健体育の時間を始めようか」
保健体育か。
夢の中にまで出てくるとか、欲望出まくりだろ。
夢にしてはリアルな感触がある。
ワイシャツのボタンが丁寧に外されて行くというか、もしかして俺が被験者とかなんだろうか。
――って!?
『う、うわっ!? え、な、何で?』
夢の中の出来事だとばかり思っていたのに、上半身が見事に脱がされていた。
そして胸の上というか腹の上に乗っかっていたのは、ユウキだった。
「おはよ。幹」
「あ、うん。おはよう……じゃなくて!」
彼女ごとすぐにどかそうとすると、がっちりホールドされていて動かせない。
足はともかく、両腕はパイプベッドの柵に縛りつけられている。何でこんなことに……。
「どうかしたかな?」
「お、俺からどいてもらえると……」
「聞こえなかったかな? 今は保健体育の時間だよ」
「いや、だから……」
「安心していいよ。これは授業扱いなんだ。幹は出席扱いになるんだよ」
「そ、それなら――じゃなくて!」
そもそもなんで俺は保健室に寝ているんだろうか。
確か、攻略組の彼女たちから本名で呼ばれ続けられて寒気がして、それから猛烈な眠気が……。
ま、まさか……昼飯に何か。
「寒気がしたってことは、具合が悪くなったということだよ。別に僕の手でどうこうしたわけじゃないんだ」
「で、でも、だったら何でこんなことっ」
「安静にしてもらいながら、出席扱い……これは僕から幹への導きによるものなんだ」
「導き!?」
いやいや、何だか普通じゃないぞ。
欠席にならないのはいいとしても、二人だけの保健体育で何をされるっていうのか。
「幹をずっと見ていた」
「――え」
「僕はゲームで出会いを果たした連中とは違って、純粋な出会いなんだよ。それこそ、幹が初めて学校に登校した時から知っている」
な、何やらまた寒気がする。
何か危ない予感というか悪寒が……。




