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33.チート執事さんの思い出作り 3


「こ、心を開けと言われても、こんな酷いことをされては……」

「酷い……? フフッ、それもお忘れですか?」

「――へ?」

「イツキさまはおっしゃいました。『次に出会うことがあった時、自分は何もかも全て失くしているはずだ。もしそうだったのなら、みこの手で取り戻せ』と。手段は何でもいいとまでおっしゃってくださいましたので」

「えぇ!? 別人とかじゃなくて? 本当に俺なの? 全く記憶に残ってないんだけど……」

「……クスッ」


 みこさんはいたずらっ子のように、微笑むだけで俺を解放してはくれない。

 ううむ、そもそもFPSゲームでこんな女性はいただろうか。


 いたとしてもそれは大抵NPCだし、リアルチャットした人はごくわずかだ。

 考えられる人に当てはまるとすれば、髪やら瞳が銀色に輝いていた長髪の男キャラ。


 正直中の人の性別なんて、関係の無い世界だった。

 そんな中でも、チームを組んでいた奴とは親しくしていたが。


 いや、待てよ……。

 みこさんの名前はみこ。赤名みこ……ということは。


「レッドチームのコミー……とかじゃないよね?」

「思い出して頂けましたね! そうです。コミーですよ。もちろん、男キャラでした」


 何だ、そうだったのか。そりゃあいくら思い出そうとしても、女キャラでは出て来ないはずだ。


「あの頃はボイチャが無かったからとはいえ、あ~……盲点だった」

「いえ、無理もありませんよ。わたくしもイツキさまのお名前を知るまでは、半信半疑でしたから。義妹のお名前を使い続けておりましたので、助かりました」

「あ、はは……それは何というか」

「わたくしは、ここでイツキさまと思い出を作りたく存じます」

「思い出……っていうと、ど、どんな意味での?」

「イツキさまが望むこと、もの、全てです」

「望むこと……」

「ええ」


 それはもしや、あんなことやこんなこと……。


 いやいや、相手はかつての狙撃仲間(ゲームの中だけど)だったし、そんな感情を起こしては行かんだろうと俺の中の小さな俺がつぶやいている。


 恐らくここから出してくださいという答えも、想定しているだろう。 


「じゃ、じゃあ――」

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