29.令嬢さん家のおもてなし?
「――う~ん……」
「くっ、くすぐったいです。もう~しょうがないリーダーです。許してあげます!」
あれ、これはMMOゲームの中だっけか。
それとも夢かな。
色んなゲームをして来た。
最初にやったゲームはFPSだったものの、レスポンスが遅すぎて途中で投げ出したけど、キャラも中の人の反応も可愛いものだった。
あの頃は別に白いモノに目が無い状態じゃなかったが、銀色に輝くエルフは綺麗すぎたのを覚えている。
名前を忘れてしまったのは手痛いミス。
そのすぐ後にLORを始めてしまったから、会えずじまい。
清楚なイメージがぴったりな女性? は初めてだった。
それはともかくとして、何やら体がむずがゆい。
生徒会室から脱出出来たまでは記憶があるが、その後は不明。
もしや、無我夢中で逃げ出した先がどこかの森の中だったりするのか。
どうもさっきから髪を好き勝手に触られたり、手や腕が意思に反した動きをさせている気がする。
どこかに攫われでもしたんだろうか。
それが出来そうなのは、攻略組の……。
「……終わりました。イツキさま、どうぞ首をお上げ下さいませ」
「――へっ?」
まるで美容室に行ったかのような感じで、垂れ下がっていた首を上げた。
真面目に美容室かなと言わんばかりに、やや熱めのタオルが顔にかけられている。
いやいや、もしかして椅子に拘束されてた系か!?
「お目覚めですか? イツキさま」
「え、え~……と、みこさん?」
「はい。さようでございます」
「こ、ここは? 美容室……じゃないですよね?」
「うふふっ、面白いことをおっしゃいますね。でも遠からず……です」
夢の中でいい思いをしたような感触があったが、見事に夢だった。
最初に聞こえた声と、俺に声をかけたみこさんでは明らかに違う。
気のせいか。
「そうするとここは、リンのお屋敷?」
「ええ、そうです。リンは席を外しておりますが、火照った体を冷やしてからじゃないと会えないと言っていましたよ」
「火照っ……!? え、俺何かしたんじゃないですよね?」
「してましたね。思いきり、まさぐってましたよ。さすがですね!」
「ちょぉっ!?」
「ご安心ください。イツキさまは意識が無かった状態です。罪はありません」
「そ、そうですか……」
意識が無くてもそんなことをするとか、どういうことだよ。
みこさんが冷静すぎるんだが、俺の想像力をどうしてくれる。
「お召し物はこちらでご用意致しました。落ち着きましたら、別室でお着替えください」
「はっ? ま、まさか……今って――」
「もしご希望でしたら、わたくしがイツキさまの……」
「ひっ、一人で着られますから!!」
「……ふふっ、残念です。それでは、後ほど」
夢じゃなかったんだ……。
知らずに裸にされた挙句、だだっ広い風呂に混浴でもしたのだろうか。
くぅぅ……何だか悔しい。
とにかく着替えをして、それからだ。




