17.下心付きで再インストール!?
義妹で委員長である一樹と、転校生で令嬢、そして中身が狂戦士のリンとの敵対心祭りが開始されて以降、常にどちらも臨戦態勢で、教室全体が緊張に包まれる日々となってしまった。
幸いにもすぐに春休みに入り、同じクラスの連中はもちろん、俺も何とか平穏無事に学年を上がることに成功する。
転校生のリンが来たのも、冬真っ只中のもうすぐ春という時季だったので、色んな意味で安心した。
そして待ちに待った春となり、2年生になった。
義妹の一樹は引き続き同じクラスとなり、同時に生徒会副会長という肩書も得られている。
もちろんリンも引き続き同じクラスになっていて、早くも荒れる予感があった。
だがどういうわけか俺のクラスには、生徒会長なるあの女子の姿があり、リンと一樹が何も言えない状況が作り出された。
加えて、仕組まれたかのような男女比のおかしい人数のクラスとなっている。
「ハーレムリーダーくん、いっちゃんから話は聞いているよ?」
「……小野瀬でお願いします。で、何をですか?」
「やだなぁ~タメなんだから、敬語はやめて欲しいな~」
「何を聞いたと?」
「令嬢女子と修羅場なんでしょ? いっちゃんがいながら、令嬢にも手を付けるなんてそのまんまだよね!」
「違いま……違うから! 俺じゃなくて、あの二人の相性が悪いだけで……」
「うんうん、言い訳するところも変わっていないね~!」
「……くっ」
留学帰りの生徒会長、黄前緋奈は、LOR上の攻略組の仲間だった。
そんな彼女に俺は、ハーレムパーティのハーレムリーダーと揶揄されている。
間違ってはいないが、何故今さらそれをいじられなければならないのか。
「ヒナには秘策があるよ? 聞きたい?」
「いや、別に……ヒナがいればあの二人も大人しそうだし」
「つれないなぁ。この際だから、リーダーくん」
「……小野瀬と」
「小野瀬くんはぼっちを引退してることだし、2年になったし、再インストールな気分でやり直して見ればいいんじゃないかな?」
「再インストール……? え、それってまた復帰しろって意味で?」
「違うし!! じゃなくて、人生……ていうと大げさになるから、2年生になった小野瀬幹くん。君は、ハーレムスキルを持ちながら宝の持ち腐れをするのか!? だから、勿体点けずに改めて新たな学生生活を始めようじゃないか!」
ハーレムスキルって何だよ。
確かに学年が上がってクラスのメンツも一新された。一樹とリンは変わらずだが、見知らぬ女子がやたらと増えた。
ヒナの言葉通りにはなりっこないだろうが、2年生になったことでリンの気持ちにも変化が訪れてくれるかもしれないし、一樹も生徒会でそれどころじゃなくなる可能性がある。
そういう意味では、再インストールという言葉が当てはまりそうだ。
「面白い。それならそれで初めから開始したい……かな」
「あぁ、そうそう。下心は忘れないように! いっちゃんもそうだし、あのリンって女子も手ぬるい感じだから、君が強引に行くようじゃないと攻略出来ないぞ?」
「攻略する気は無いんだけど……」
「される側だとしても! ぼっち引退して、現実でもハーレムリーダーやっちゃいなよ!」
「……やらないって」
「面白いことになるよ! そしたら気が変わって、あっちの世界が恋しくなるかもだし」
「本当に勘弁……」