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ドラゴンライダーへの道

 俺の目の前に四人の少年少女がいた。彼らはそれぞれの武器を構えて、俺の事をまるで親の仇でも見るかのように睨んでいた。

 俺は彼らを知っている。後方で魔術を唱えているのがハロルドで、剣を持って騒ぎながら俺をけん制しているのがティアで、隙を探そうとしているのがエレナで、何やら大声で指揮をしているのがリチャードだ。

 俺達のいつもの陣形である。だけどなんで彼らはこんなに小さいのだろう、なんで彼らは、俺に向かって剣を構え魔術を放とうとしているのだろう。



「---!!」


 

 確かに俺は彼らに話かけたはずだった。「俺だ、ヴァイスだ。一体何がおきている?」そう喋ったはずなのに、あたりに響いたのは意味のない鳴き声だった。もちろん彼らに言葉は通じない。

 なんでだ、なにがおこっている? その答えは俺の下にある水たまりにあった。そこに写っているのはいつもの俺の姿ではなかった。そして、もちろん転生前の姿でもなかった。

 体を覆うトカゲのような鱗に、鋭い爪、そして、口には鋭い牙、その姿に俺は見覚えがある。何度も戦ったドラゴンである。いやいや、ちょっと待ってくれ。なにがおきてんだよ。まじで……



「ドラゴンだ。街を守るためにここで喰いとめるぞ」

「---!!」



 俺は再度自分がヴァイスだとみんなに伝えようとしたが言葉にならない。そして、やはり彼らに言葉は通じない。だけど、彼らの気持ちはわかる。それは殺意だ。街を守るために敵を倒す。当たり前の事である。

 言葉が通じないことを悟った俺はあわてて空を飛んで逃げようとしたが、翼に激痛が走り、引き裂かれる。

 おそらく、ハロルドの風魔術だろう。味方にしたときは頼りになった魔術だが、敵に回すとなんとも厄介である。そして、俺は身体が重くなるのを感じた。これはおそらくリチャードの魔剣の力だろう。そして、ハロルドの風に氷が混じる。エレナの魔術だ。

 ついに俺の翼は機能しなくなり地面へと墜落する。最後の力を振り絞って、減速したため致命傷ではないが、体全体に激痛が走る。

 それをチャンスと見たのか、ティアが剣で斬りかかってきた。おそらく、この一撃で俺を致命傷を負うだろう。攻撃を受ければだが……俺は口の中にブレスをため込みながらほくそ笑む。

 彼女はチャンスとなると功を焦る癖がある。いつもならば俺が魔術なり牽制などをして、サポートをするのだが、今の俺は敵である。俺は口を開いてブレスを吐こうとした時に疑問が出てくる。



 なんで俺はティアを殺そうとしているんだ?



 戦っている理由だってわからないけど、なんで俺は彼女を殺さないといけないんだ? 多分俺がブレスを吐けばティアは息絶えて、ハロルドが発狂してしばらくはつかいものにならなくなるだろう。そうすれば残りはエレナと、リチャードだけだ。エレナは確かに強いが俺を殺しきるだけの力はないし、リチャードは魔剣をもっているだけで、俺と同様ただの雑魚だ。

 だからこのままブレスを放てば俺は勝てる。だけど、俺にはどうしてもそれをすることができなかった。



『おいおい、何を悩んでいるんだ。こいつらは所詮ゲームのキャラクターなんだぜ。転生者であるお前の命に比べればゴミのようなものだぜ』



 俺の頭の中に俺ではない誰かの声が響く。その一言で俺の行動は決まった。俺はためていた魔力を霧散させる。すると口の中にあった炎が掻き消える。

 だってさ、ハロルドは俺が転生者だっていうのに親友だって言ってくれたんだ。だってさ、ティアは俺を大事な幼馴染だって言ってくれたんだ。リチャードだって俺を信用するっていってくれたんだ。そして……エレナは俺の事を好きって言ってくれたんだ。

 俺には彼らがゲームのキャラクターだとは思わない。彼らはちゃんとこの世界で生きているのだ。だから俺はみんなに生きていて欲しいのだ。仮に俺が死んだとしても……そもそも俺自体がイレギュラーな存在なのだから……そりゃあ俺だってみんなと生きていたいよ。だけど、みんなを殺してまで生きてはいたくないんだ。


 そんな事を考えている間にもティアの剣が俺の眉間にせまる。ああ、俺はここで死ぬのか……



『なんでお前はそんなにそいつらの事が信じられるんだよ……」



 最後にそんな声が聞こえた気がした。



--------------------


「うおおおおお」



 俺は卵を落としそうになりあわてて目を覚ます。どうやら卵に魔力を与えていた最中に眠っていたようだ。なんか変な夢を見たようだがイマイチ思い出せない。まあ、夢なんてそんなもんだよな。

 よほどの悪夢だったのか、汗で着ていた服が濡れてしまっている。



 あの後俺はガンプの爺さんにドラゴンの育て方を教えてもらいながら少しここに滞在することにしたのだ。みんなに心配させないように手紙を書いたので心配はないだろう。授業をさぼることになるため成績はおちるだろうが仕方ないの事である。どのみちこのまま何か力を得ることができなければテスラ様に認めてもらう事はできないだろうしな。



「ドラゴンの卵に定期的に魔力を与え、語り掛けるか……シンプルだけど、本当に効果あるのかね」



 俺は溜息をつきながらドラゴンに魔力を与える。どうやらドラゴンは目と魔力で他者を認識するらしく、こうすることによって親だと思うらしい。あとは、卵が孵る瞬間に立ち会って家族と認識してもらい一緒に過ごすという事を聞いてくれるそうだ。

 ドラゴンを使いこなせば俺も少しは認めてもらえるだろう? 魔王の力を持つシオンや、第三王子という身分をもっているレイドに比べればはるかに劣るが、今の俺にできるのはそれくらいしかないのである。



「まあ、今はそんなことを考えていても仕方ないな。風呂でも入るか」



 そう、なんとここにはお風呂が……というか温泉があるのである。もちろん、日本のような旅館や銭湯にあるような綺麗なものではなく、雑に温泉がの源泉が流しっぱなしになっているところに、氷を扱えるドラゴンが温度調整をしているというだけの粗末なものだが、無茶苦茶嬉しい。この世界の人間あんまりお風呂は入らないしな。

 俺が鼻歌を歌いながらお風呂に入ろうと扉に手をかけようとした瞬間に扉が開かれる。



「あら、一緒に入りたかったの? 正式に婚約してくれるならいいわよ」



 扉から出てきたのはアステシアだった。あっぶねぇぇぇ。ラッキースケベするところだった。こいつの裸を見たらマジで金をとられるか、婚約させられそうである。てかこの人どんだけ婚約したいんだよ……



「いや、そんなことしたらエレナにぶっ殺されるし、婚約はしないっての。ていうかそれどうしたんだ?」



 彼女はお風呂上りなためか少し蒸気した肌が何とも艶めかしい。だけど、俺が気にしたのはそこではなかった。



「ああ、これ? 普段は染めているのよ。この色は目立つでしょう? まるで……貴族みたいで」



 そう言うと彼女は蒼い髪をつまみながらどうでもいい事のように言う。いや、確かに珍しいんだよな。この蒼い髪はエレナとか一部の貴族にしかない色である。っていうことは彼女もまた貴族の血を引いているのだろうか? でも、彼女の父は金で貴族の立場を買ったエレナの家のお抱えの商人のはずだ。まさか、こいつのお母さんはエレナの家の関係者なのだろうか? 身分違いの恋というやつだったり……などと考えていると、彼女がめんどくさそうに溜息をついた。 



「まあ、あんまり言いふらさないでおいてくれると助かるわ。変な事を勘ぐる人も出るでしょうしね」



 そういって去っていく彼女の後ろ姿を見つめながら俺は顔に出ていたかと反省ながら、とりあえずお風呂に入ることにする。



 それにしても、わけがわからなくないことが増えてきたな……アステシアに関してゲームの知識でも、そこまで重要キャラでは無かったためそんなに印象はない。個別イベントも権力目当てで、王子であるレイドに言い寄るも冷たくあしらわれるくらいである。ただの情報屋という印象しかないのだ。設定資料集でも買っておけば結果は変わっただろうか。

 あとはドラゴンの卵に関してもだ。ザンプのじいさんも見たことがないという事からおそらくワイバーンの卵ではないだろう。となると転生者の卵なのだろうか? そうしたら俺に力を貸してくれる可能性はかなり低い気がする。とりあえずお風呂で気を休めながら俺はいろいろとかんがえるのであった。


 


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― 新着の感想 ―
[良い点] さてさて、自身の存在意義を賭けた戦いの最中ですが、これが実と良いですねぇ。 と、言うか実らねば話が進みませんが(笑) 色々、伏線が貼られてますが冗長的ならない事を祈っております。
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