ドラゴンの卵
ドラゴンライダーの爺さんの悲鳴を聞いて馬車へと向かうと、なにやらすごい興味深そうに俺が持ってきた卵を観察していた。なにやらコンコンと叩いたりと好き勝手やっているようだ。割れないよな……
「おい、坊主、この卵はどこで手に入れたんだ? こんな形の卵、儂でも見たことないぞ。ワイバーンでもサラマンダーでもない。この地方特有のドラゴンかのう? それにしてはやけに強力な魔力を持っている気がするが……」
「ああ、これはワイバーンの巣で見つけたんだよ。ワイバーンのボスが守っていたから、てっきり、ワイバーンの卵だと思っていたが違うのか?」
ドラゴンライダーのじいさんの質問に俺は咄嗟に嘘をつく。転生者との戦いの事を話せば、俺の転生の事も色々と話さなければなくなりそうだからだ。ドラゴンライダーの爺さんはともかくアステシアは、どんどん質問してくるだろう。正直彼女を誤魔化しきれる気はしない。
「あら、ワイバーンの卵じゃないのね……じゃあ、あなたたちが倒したドラゴンじゃないのかしら? ねえ、ガンプ叔父様。ドラゴンは転生できるのよね? 私達の街を襲撃したドラゴンがいたのは聞いているわよね。この卵はそいつが転生した時にできた卵って可能性はないかしら? 都を騒がしたドラゴンを従えれるならヴァイスは強力な力を得る事が出来るじゃないの。エレナとの結婚もうまくいくかもしれないわよ」
「アステシアお嬢ちゃん、確かに知能の高いドラゴンの中には転生の魔術を使えるのもいるがそんなのは一部じゃよ。そうでもなければこの世界はドラゴンだらけになってしまうぞ。」
「そうなの……大きい借りを作れたと思ったのに、残念ね。じゃあ、この卵はなんなのかしらね?」
「やはり、ワイバーンじゃないか? 地方によって卵も多少は違いがあるのかもしれないな」
アステシアの疑問に俺が答える。ポケモンとかも地方でタイプが変わったりするんだ。そこそこ説得力のある話ではないだろうか? と思ったが、なぜかアステシアは疑わし気に俺を見つめていた。そんなに信憑性が無い話なのか? それにしても、アステシアはやはり勘がいいな。卵の正体を当ててきやがった。」
「まあ、ドラゴンによって多少は卵の孵し方は変わるが、同じワイバーンならそこまで違いはないじゃろう。万が一違うドラゴンでもせいぜい卵がかえった時に喰われるくらいじゃしな」
そう言ってガンプ爺さんは笑っているが正直こちらとしては洒落にならないんだが……ここで一つ疑問に思ったことを聞いてみる。
「ちなみにドラゴンって誰かに……例えば卵の一番近い人間とかの夢に出てきて何かを訴えたりできるものなのか?」
「なんじゃ、それは……そんな事できるはずないじゃろ。まあいい。さっそくじゃ、金ももらっているし、お前さんも最低限の素質はありそうじゃ。さっそく教えてやろう」
だったらあれはなんだったのだろうか? 本当の夢だったのではないだろうか、それともこいつの力なのか……もしそうならこいつと対話できるかもしれないと思うのであった。でも、俺はこいつと対話してどうすればいいのだろう。こいつに記憶があるならば、俺はこいつの仇なのだから……
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あの後、お父様を追いかけて、ヴァイスの事をもう一度ちゃんと考えると言質を取った私は急いで魔法学園へと戻った。結局一日ほどたってしまったが、多少は光明は見えてきた。
「ヴァイスは喜んでくれるでしょうか……?」
彼は色々と考えすぎなのだ。もちろん、身分違いというのはわかっている。だけど、ここは魔法学園である。ここでの成績や活動次第では父に認めてもらえるチャンスはいくつでもある。
そして、あなたは私の事を心配してくれているようですが、私だって、自分の身くらいは自分で守れるんですからね……
そりゃあ、父が心配しているように、また父を逆恨みした政敵に狙われるかもしれない。だけど、私だって、あの時の力のない子供ではない。もう、成人した女性なのだ。そして、そのために鍛錬だってしているし、ティアやエリザベス、アイギスなど様々などとも人脈を作っている。もちろん仲良くなったのは打算ではないけれど、私やヴァイスの身を守るのに役に立つだろう。大体私は英雄譚に出てくるような守ってもらうだけのお姫様ではないのだから……
とにかく、父と話をつけてきたことを報告しようと、夜も遅いがヴァイスの部屋へ行くことにした。さきほど明かりがついているのは見たのでまだ起きているのだろう。
「ああ、でも、本当はこんな時間に異性の部屋に行くのはまずいですよね……」
本来だったら、明日の朝の授業の時にでも報告すべきかもしれないが、早く伝えたくて、居ても立っても居られないのである。部屋にはハロルドもいるだろうし、間違いも起きないだろう。まあ、万が一いい雰囲気になって間違いがおきてもそれはそれである。
私は男子寮に入ることを決意する。覚悟を決めてしまえば簡単だった。見張りといっても女子寮よりは厳しくないので、あっさりと侵入することができたのだ。正直寝ているのはどうかと思ったが今は助かった。そして、ヴァイスの部屋の扉をノックする。
「リチャードかな? 鍵は開いてるよ。僕もいい加減、エリザベスとの仲直りの仕方を考えるのは疲れたんだけど……」
「すいません、私です。あれ、ヴァイスはいないんですか?」
「え、エレナ?」
申し訳ないと思いつつも入ると、部屋にはハロルドしかいなかった。ヴァイスはどこかに出かけているのだろうか? でも、こんな時間にどこへ……? ハロルドを見ると彼はなぜかまずいとばかりに冷や汗をかいている。
「ハロルド……ヴァイスはどこにいったんですか?」
「その……僕も知らないんだよ。二、三日したら帰ってくるんじゃないかなぁ」
「ふーん、そうなんですか」
明らかにヴァイスの行き先を知っている様子のハロルドが答えた。何か言えない理由でもあるのだろうか。もしかしたら彼も私のために頑張ってくれているのかもしれない。だったら聞くのは野暮というものだろう。
「そうなんですね……、では私が話があるとだけヴァイスが帰ってきたら伝えてもらえますか?」
「うん、せっかく来てくれたのにごめんね。ヴァイスが帰ってきたらすぐに伝えるからね」
「夜分遅くに失礼しました」
私が頭を下げて帰ろうとした瞬間だった。扉が乱暴に開けられてリチャードがやってきた。彼はいつものように情けない顔をしている。
「遅くなったな、ハロルド!! ヴァイスがあの女と旅行中で寂しいだろう? 私の話につきあ……エレナ……?」
リチャードは私に気づくとハロルドと同様に冷や汗をかいた。それにしても今彼は何と言っただろうか。あの女と旅行……? あの女とは誰だろうか?
「すまん、用事を思い出した」
「僕もちょっと、でなきゃいけないんだった」
「お二人とも少し詳しく教えていただきますか?」
「ひぃぃぃぃ」
「足がこおったぁぁぁぁぁ」
言葉に魔力を含め魔術を放つ。窓から逃げようとしたハロルドと、扉から出ようとした、リチャードの足が凍る。さて、今夜は長くなりそうですね。ヴァイスはどこにいったんでしょうか? こととしだいによっては私は……
もうちょい更新を増やしたい……がんばります




