ドラゴンライダー
「何をしている!!」
俺はアステシアの尻を揉んでいる爺さんに斬りかかる。やりすぎかもしれないが、動きから言って素人ではない。何らかの対応はするだろう。それにアステシアは仮とは言え婚約者である。彼女にセクハラしたやつを許すわけには行かない。
「バーン!!」
「だろうな!! 火よ」
爺さんの声と共に俺に飛びかかってきたワイバーンに向かって振り向きながら魔術を放つ。急降下して襲ってきたのだ回避はできまい。リチャードの所でさんざんワイバーンを相手にしたのだ。動きくらいはわかっている。俺の魔術も決定的ではないが、あたれば多少はダメージを与えれるはずだ。
しかし、俺の予想が外れワイバーンは体を逸らして、魔術をかわす。どうやら先ほどのは急落下するように見せたフェイントだったようだ。こいつ頭がいいのか? いや……違う。アステシアの尻をもんでいるじいさんを見るとにやりと笑った。このじいさんが指示を出しているのだろう。
ふと見るとアステシアも悪鬼のような目でじいさんを睨みつけて、尻をもんだ手をはたいているが、それ以上の抵抗はしていない。
「俺を試しているってことかよ」
「そのワイバーンを倒したらこの女を離してやろう」
「助けてヴァイス……で、いつまで触っているのかしら」
俺を挑発するかのように言って再度尻を揉もうとした爺さんだったが、その直後にアステシアに指をとられ、へし折られそうになって涙目になっている。ちょっとあの子怖すぎるな……
とはいえ、知能のあるドラゴンか……確かに厄介な相手ではある。人が魔物に勝っているのは主に知能で優れているからだ。俺は剣を構えて、バーンと呼ばれたワイバーンと向かいあう。おそらくこの戦いにドラゴンライダーになれるかの何かがあるのだろう。
「グェーグェー」
「火よ!!」
声を上げながら再度こちらに降下してくるワイバーンを引き付けてから魔術を放つ。俺の放った火の玉はワイバーンと俺の間で爆発して、煙がまき散らす。そして俺は落下して煙の中からくるワイバーンの爪を受け流す。
「これでいいか? 魔術を放てばあんたの相棒が傷つくぞ」
「ふーむ、本当はドラゴンライダーの強さをお主に教えたかったんじゃがの。お主かなりドラゴンと戦い慣れているのう」
再度空中へと戻るワイバーンの背中に向かって、片手を掲げてそう言うと爺さんが残念そうに言った。それとは反対に俺は自分が強くなっているのを実感した。今回のはゲームの知識を使ったわけではない。これまでの戦いで培った経験で勝ったのだ。ワイバーンの爺さんが何らの方法で意思疎通をしていると考えた俺は煙で二人の視界を封じたのだ。結果どうすればいいかわからないワイバーンはそのまま突っ込んできたのである。
いきなり、知能のあるドラゴンにいきなり襲われればテンパったかもしれない。だが、あいにくだけど、俺はもう転生者との戦いでそれを経験している。
「どう? 合格かしら」
「うむ、そうじゃな。そこそこ知恵は働くようじゃし、羽化したドラゴンに食い殺されることもあるまいよ。小僧、ドラゴンライダーになりたいんじゃろ? わしが教えてやろう。卵をみせてもらうぞ」
そう言うと爺さんは俺が止めるまでもなく、馬車の方へと向かっていってしまった。アステシアも肩をすくめて追いかける。
「なんじゃこりゃー!!」
馬車から爺さんの情けない悲鳴が聞こえてくるのであった。




