アステシアの意見
俺は卵を抱えながら考える。先ほどのあれはただの夢だったのだろうか? それとも本当にこいつの正体はあの転生者なのだろうか。仮に本当に転生者だとしたらあいつは俺に力を貸してくれるだろうか? あっちからしたらだまし討ちで殺した相手である。自分が同じ立場だとしたら力を貸すだろうか……だが、俺はこいつの力を借りなければエレナの父に認めてもらう事は難しくなるのだ。
「どうしろって言うんだよ……」
「何を悩んでいるのかしら? リラックスしたいなら私の膝は空いているわよ」
「いや、エレナにばれたら恐いし……」
「ちぇっ、もしものってきたら取引に使おうと思ったのに……」
「油断も隙もねえな!!」
俺はからかうように微笑むアステシアを見てげんなりとする。話を聞いてはくれそうだがどうしたものか。転生の事を話すほどの信頼は彼女にはまだないのだ。だけど、俺よりも酸いも甘いも経験していそうな彼女ならば俺の悩みにもある程度ヒントをくれるかもしれない。
「これはたとえ話なんだが……」
「あ、それ、知ってるわよ、大抵自分の事よね」
「話の腰を折らないでくれないか!? くっそ……まあ、そこは想像に任せるさ。もしも……もしも、自分を殺した相手がいて、そいつに力を貸すやつがいたらどういう心境だと思う?」
「中々難しい事を聞いてくるわね……」
彼女は眉をひそめながら渋い顔をした。まあ、そりゃあそうだよな。自分を殺した相手の気持ち何て普通はわからないものだ。だって、死んでいるしな……
「そうね……さすがに殺されたことはないけれど、ひどい目にあったことはあるわよ。それでも……許そうと思ったのはなんでかしらね……私が知らないところで苦労していたというのを知ったとか……私の事を知らないとはいえ、心配してくれたとか、弱っているところを見て、なぜか助けなきゃって思ったりとかかしら……あとはそうね……私にはできなかったものを、諦めたものをみせてもらえそうだったから……かしらね。それならそいつがどうなるのか気になるもの。許しはしないけれど、自分が成し遂げる事の出来なかったことを成功させてくれるそうなら、先をみたいと思うんじゃないかしら」
彼女は遠い目をしてそういった。その言葉には不思議な重みがあり、彼女の人生の過酷さを感じさせる。でも……自分が成し遂げる事の出来なかった事か……こいつも俺と同じ転生者だ。そして、ゲームの中ボスだった。こいつはこの世界の人間をゲームの駒と考えていたけれど、最初はそうではなかったはずだ。以前見た夢がこいつの過去ならば、最初は手を取り合おうとしていたのだ。それこそゲームの流れに逆らおうとして……
俺のようなかませ貴族が、メインヒロインの一人と結ばれる。ああ、確かにそれはゲームの流れに逆らっているだろう。だからお前は助けてくれるのか? 俺は目の前の卵に声をかけるが返事はない。
「ヴァイス、ついたわよ」
「ああ、ずいぶん早かったな」
彼女の後を追って俺はも降りるとそこには大きい小屋が立っていた。そこからはドラゴンらしき獣の泣き声が響く。
「あらあら、怖いのかしら? そんなんでドラゴンライダーになんてなれるかしらね」
「別にこわがっているわけじゃないさ。だた、ドラゴンライダーがどんな人かなって気になっただけだ」
「はいはい、そういうことにしておいてあげ……」
「アステシア!!」
いきなり迫りくる気配に俺はとっさに卵をアステシアに預け剣を構える。空から一体、地上からこっちに走ってくる影は一体。合計二体だ。未知の敵かよ!! ゲームの知識は使えない。俺一人でどこまでいける?
「邪魔じゃの、バーン頼んだぞ」
「きゃあっ!!」
その一言で巨大なワイバーンが空から襲撃をしてきた。俺はその爪の一撃をとっさに受け流す。金属の削れる甲高い音と共に火花が散る。空中の敵の攻撃は防いだが地上の影がアステシアを襲う。
「アステシア、大丈夫か!!」
かろうじで振り向いた俺の見たものは汚いローブをしたおじいさんにケツをもまれているアステシアだった。え? なにがおきてんの?
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