女子寮
翌朝俺は女子寮の前にいた。授業が始まるよりかなり早い時間なので人通りは少ない。アステシアと共にドラゴンライダーを訪ねるために彼女の部屋に向かうのだが、その前にどうしてもやっておかなければいけないことがある。俺が女子寮の裏口へと行くと、門番がいる。門番は俺の顔をみると一瞬怪訝な顔をしたが、黙って通してくれた。
「よかった……こんな格好して捕まったら黒歴史ってレベルじゃねーぞ……」
俺はため息をつきながら入り口に置いてある鏡を見る。そこには長い金髪のストレートに魔法学園の女子制服に身を包んだ俺がいた。本当は今日の朝にアステシアと旅立つはずだったのだが、その前にエレナとティアに今回の件を謝りたかったのだ。昨日はエレナから訪ねてきてくれたて話し合ったがそれではダメだと思う。ちゃんと俺の方から謝りに行きたかったのだ。ティアにも迷惑をかけたしな。アステシアにそのことを伝えたら彼女はにやにや笑いながらも制服とかつらを貸してくれたのだ。いつのまに用意をしたのだろう? さすが商人の娘である。
緊張しながら女子寮を歩くが幸いにも誰かに会うことは無かった。でもさ、なんか興奮するよな。女子の園だぜ。リチャードとかむっちゃノリノリできそう。俺は意を決してエレナとティアの部屋の前に立って深呼吸をしてからノックをする。
「はーい、こんな朝早くになによ……」
「ああ、すまないな、エレナもいるか?」
寝ぼけ眼のティアが出てきたので俺は声をかける。てか、本当に寝起きだったからか、パジャマがずれていて下着見えそうなんだけど……俺はハロルドに心の中で謝る。彼女はきょとんとしていたがいきなりすごい殺気を込めて睨んできた。
「不審者ーー!! 女装して女子寮に来るとか何考えてんのよ!!」
「うおおおおお、待った。俺だよ、ヴァイスだ!! エレナに謝りに来たんだよ!!」
「ヴァイス……?」
いきなり拳を振りかぶったので俺はあわててかつらを取って、正体を明かす。確かに声は男だもんな、朝っぱらから怪しいよな。これで一安心かと思いきやさらに目つきが鋭くなった。なんでだよ!?
「この二股男ぉぉぉぉ!!」
「ぐはぁぁ」
俺は思いっきりティアに腹をぶん殴られて壁まで吹っ飛んだ。あっぶねぇ、咄嗟に腹筋に力を入れなかったらゲロ吐いてたぞ……てか、無茶苦茶痛いんだけど……てか、拳みえなかったんだけど……ティア強すぎじゃない? これがネームドキャラとかませ貴族の違いだろうか……
「これはエレナの分よ……あの子はね、一昨日泣いて帰ってきたのよ。エレナから事情は聞いているけどあの子を悲しませたあんたを私は許せないの」
「ティア……ごめん……」
エレナは泣いていたのか……そりゃあそうだよな、俺はどれだけ彼女を悲しませてしまったのだろう。自分のへたれさが本当に嫌になる。最初っから素直にエレナに相談していればこんなことにはならなかっというのに……俺の表情から何かをみとったのか。ティアはわざとらしいため息をつくと笑顔を浮かべてこう言った。
「でも、これで許してあげるわ……その顔だと自分がどれだけ愚かな事をしたかわかってるみたいだしね。それで、どうしたの。エレナだったら昨日から一度帰ってきて父親に逃げられたからとっつかまえるって言ってまた出て行ったわよ」
「エレナってアクティブすぎない」
「あんたのためでしょ、誇りに思いなさいよ。あんたは知らないかもしれないけどあの子があれだけ取り乱すのってあんた関連だけよ」
「ああ、そうだな……俺は大事なものを失いそうだったんだな……」
俺は立ち上がる。そしてティアにも宣言をするつもりで伝える。エレナががんばってくれているのに俺だけががんばらないわかにはいかないだろう。
「あのさ、俺も俺でエレナと結ばれる方法を考えているんだ。アステシアの提案にのってみるよ。エレナが帰ってきたらちょっと外出するけど安心してくれって伝えてくれ」
「ええ、わかったわ、ちゃんと伝えておくからがんばりなさい。あんたは昔っからやるときはやるし、誰かが困った時には欲しい言葉をくれるもんね。だから信じてるわよ」
「それが俺の力だからな。だれにでもできるさ」
ティアの誉め言葉に俺は自虐的な笑みを浮かべる。ゲームの知識を使って、悩んでいるであろうタイミングに声をかけているだけである。何も特別な事ではないのだ。すると彼女は俺を軽くはたいた。咄嗟にビビッて身構えてしまったのはさっき殴られたことがあったからだろう。
「またそんなこと言って……あんたのようにこれからおきる事を知っていても、あんたが行動したから私やはハロルド、エレナやリチャードはついてくって決めたのよ。だから私たちが信じたあなたをもって信じなさい」
「ティア……ありがとう」
そうして俺はティアにお礼を言ってアステシアの部屋へと向かう。その時俺は女生徒と目が合った。声を出さないように会釈をする。しかし彼女はなぜか驚いた顔をしていて……
「きゃー、変態よ!!」
「え、なんで……やっべえ、かつらをティアのとこにわすれてたぁぁぁぁぁ」
今の俺は女子制服を着て堂々と女子寮を歩いてるわけで……確かに変態だぁぁぁぁぁ。捕まったら停学じゃねーか!! アステシアと外出どころではない。そうして俺は悲鳴を上げた女子から必死に逃げるのであった。
あのなんとか逃げききった俺はアステシアと合流して彼女の手配した馬車へと向かった。今日の彼女は動きやすそうな服装だ。でもさ、荷物が結構多いんだけど? なんなら旅行でもいくのかってくらいあるんだが……
「じゃあ、行きましょう」
「ああ、でもどこにいくんだ?」
「うちの支部にドラゴンライダーが住んでいるのよ。そうね……ここから馬車で2、3日言ったところかしら」」
「はぁぁぁぁぁぁ。男女が二人で旅行ってまずいだろ!?」
聞いてないんだが……でも、もしかしてこの世界ではそういうのって普通なのか? ハーレムが許される感じだしな……俺が困惑していると彼女は俺をからかうような笑みを浮かべた。
「大丈夫よ、だって、私たちは婚約者ですもの。ああ、でも、エレナが聞いたらどうなるかしらね?」
「は……? お前ぇぇぇぇ!! ちょっとエレナに手紙を書くからおろしてくれ」
「ダメよ、もう馬車は動いてるもの。手紙ならちゃんと私が書いておいたから安心しなさい」
「安心できねぇぇぇぇ、おろしてくれぇぇぇぇぇl」
俺の悲鳴が馬車内に響くのであった。てか、すでに嫌な予感しかしないんだが……
新作を始めました。幼馴染とのいちゃらぶものです。よろしくお願いいたします。
『催眠ごっこで結ばれるラブコメ ~初恋の幼なじみの催眠術にかかった振りしたらムチャクチャ甘えてくるんだけど』
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短編で円卓モチーフの追放ものを書いてみました。よかったら読んでくださると嬉しいです。
これだけで完結しております。
『音魔術によって心を癒せる宮廷音楽家、戦争の役に立たないとリストラで追放されたが、隣国の剣姫に拾われて楽しい宮廷ライフを過ごす。~城内がギスギスして内部崩壊しそうだから戻ってきてくれと言われてももう遅い』
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