アステシアの情報網
「でもさ、ドラゴンライダーなんて簡単になれるのか? 龍殺しの家系であるリチャードだって、ドラゴンは狩るものとしか見てなかったんだぞ」
「それはそうでしょうね、彼の家は魔剣によってドラゴンを狩って成り上がったわ。ならば狩る事には特化しているでしょう。でも……もしも、魔剣という武器が無くて、対抗手段がなかったらドラゴンと共存を選ぶ国があってもおかしくないとは思わない?」
「なるほどな……」
彼女の言葉に俺はうなづく。ゲームではなかったが、ジェイスさんの件をみるかぎり、他のゲームも混じっている世界のようだ。ならば、ドラゴンに乗ったりするゲームがあって、その文明が残っているのかもしれない。
「それで……俺に協力する見返りはなんだ? アステシアが言った通りうちは歴史だけ古いだけで金もないぞ。リチャードの家みたいに魔剣みたいな宝だってない。何が欲しいんだ?」
「私の家が商人をやっているっていうのは知ってるわよね。そのおかげで、色々人脈もあるし、情報の重要さも知っているの。ヴァイス……あなたは人には秘密の情報網があるでしょう?」
「何のことだ……?」
俺の言葉に彼女はにやりと笑う。その笑みはなんとも得意げで、俺の誤魔化し何てお見通しとばかりだ。こいつまさか俺が転生者だという事を知っているのか? 俺の事をどれだけ調べたんだ? 別にばれたらまずいというわけではないが彼女に言いようのない恐怖を感じた。
「まずは、あなたはパーティーでオーキス様の娘であるティアの隠し事を見抜いたみたいね。会ったこともない貴族の令嬢を秘密をどうやって見抜いたのかしらね? そして、あなたはティアに取り入って味方にした。次に、あなたは学園に入学してクラスでもっとも有力な貴族の令嬢であり、実力もあるエレナにパーティーを組まないか声をかけた。そして、警戒心の強い彼女の心を開かせ見事にパーティーに加えた。そして、この地方の領主の息子であるリチャードの悩みを解決した。そして、エレナとリチャードというあなたのクラスで権力をもっている二人を取り込んだわ。結果あなた達のパーティーはクラスで一位の成績と、二位のリチャード達と友好的な関係を築いているわ。たかが、地方の貴族に過ぎないあなたがどこで二人の悩みに関する情報を得たのかしらね?」
どや顔で語るアステシアだが、何か勘違いしている気がする。エレナはタイプだからっていうのと、人脈が欲しいっていう邪な気持ちも最初はあって声をかけたが、リチャードに関してはなんか勝手に絡んできたとしかいいようがない。情報っていうのも、確かにエレナに関してはゲームの知識を使ったが、リチャードなんてマジでモブキャラだったぞ。なんの情報もなかったぞ……俺が何と言っていいかわからず沈黙していると彼女は上機嫌に言葉を続ける。
「みなまで言わなくていいわよ、ヴァイス。あなたはオーキス様の命令で動いているのでしょう? あなたの家の執事であるセバスと、あなたがしょっちゅう部屋を訪れているジェイス先生はかつてオーキス様と学校でよくつるんでいたそうじゃない。ジェイス先生を通してオーキス様に情報をもらっているといったところかしら。大方子煩悩なオーキス様があなたに本来の自分を出せないで悩んでいるティアの話し相手になってもらうために、同世代のあなたが選ばれて、ティアの周りに地位の高い人間を囲って彼女の人脈を強化する。その見返りにあなたの家もハロルド様の保護下に入るといったところかしらね。どうかしら? かなり自信があるのだけれど」
「どうだろうな……」
「そんな驚いた顔をしなくてもいいわよ。私は魔力も、剣術も大したことは無いけれど、人脈と情報網だけで成り上がったの。あのレイド様に声を掛けられるくらいにね。だから、あなたが正体を気づかれたからってへこむ必要はないわ。それにこのことは誰にも言わないから安心しなさい。婚約者様」
本当に嬉々とした表情で言い切った彼女を前に、なんかもうめんどいからそれでいいかと、反論する気力もなくなってしまった。まあ、確かにこの世界が俺のやっていたゲームに似ていて、俺は転生したのだというよりは説得力があるだろう。それに今回はへっぽこな推理を披露しているが、レイドに声をかけられるだけの実力と、ゲームの時の活躍からして、無能ではないのだろう。だったら話をあわせて彼女の力を借りるのもありだと思えてきた。エレナと結ばれるならばそんなことは些細な事だ。
「それで……見返りは何だ? 俺に頼んでオーキス様と近づきたいってことか?」
「いえ、私の主であるテスラ様とはオーキス様と親しいとはいえ派閥が違うもの。裏切りを疑われるようなことはしたくないわ。私に有用な情報をくれればいいの。情報網は多いに越したことはないもの。それと私が困った時に手を貸してくれればいいわ」
「へぇー、俺が嘘をつくかもしれないぞ。よく、この短期間で信頼したな」
「当たり前でしょう……だって、あのエレナがあなたを信じたのよ。彼女をあんな表情にさせるあなたが悪人だとは思わないわ」
そういう彼女は先ほどまでとは一転して物憂げな表情でささやくようにいった。彼女の瞳に移る感情は何だろうか? 付き合いの浅い俺にはわからなかったけれど、何か強い想いを感じた。
「じゃあ、取引成立という事でいいかしら? 私の知り合いのドラゴンライダーの元へ行きましょうか。彼には貸しがたくさんあるからきっとドラゴンの従え方を教えてくれるわ」
「ああ、わかった。頼む」
そういうとアステシアは満足そうに言って部屋を出て行った。明日か……学校があるがエレナの方が大事である。それに一日くらいなら大丈夫だろう。だが、俺は行き先を確かめずにうなづいたことを翌日になって後悔するのであった。
更新が久々になってしまいました。
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