表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

78/88

エレナとヴァイス2

「それでは話をしましょうか、ねえ、ヴァイスにアステシアさん」

「ええ……できれば平和的な話し合いで済ませたいわね……」



 笑顔なのに一切目が笑っていないエレナの言葉に、冷や汗をかいてこちらを見ているアステシアが答えた。俺? 怒ったエレナに下半身が氷漬けにされているんだけど……やばい、感覚がなくなってきた。ちなみにティアは話し合いがすむまで誰も入れないようにするために、扉の前で門番をやっているようだ。



「そろそろ命にかかわりますね。正直ヴァイスには色々言いたいことがありますがこれで許してあげましょう」



 その一言で氷が消えて体が自由になった。うおおおおお、むちゃくちゃこわかったよぉぉぉぉ。ラブコメみたいな展開かなと思ったのに、サスペンスになるところだったぞ。前世で読んでいたラノベで暴力系ヒロインに「ばかばかばか」って怒られてに魔術を放たれる主人公がいいなと思っていたが、いざ自分がなるとシャレにならなかった。エレナにあるのは完全なる殺意だった。今も不機嫌そうにこちらを睨んでいる。



「ねえ……エレナってこんな性格だったの? 前に会った時はこう……もっとおとなしい感じだったんだったわよ……」

「いや、普段は良い子なんだけど、今は色々あって……いや、俺が悪いんだけどさ……」



 さすがにボロボロの俺を哀れに思ったのか、アステシアが俺を支えてくれる。というかエレナとアステシアは面識あるんだな。まあ、貴族の令嬢とそのお抱えの商人の娘だ。パーティーとかであったりするのだろう。

 それよりも、俺を支えているアステシアをみたエレナは見たエレナの頬がひきつる。あ、これはやばいやつだ。俺がとっさに何を言おうとする前に、エレナが口を開いた。



「お二人は面識はなかったと聞いてましたが、ずいぶんと仲が良いんですね。」

「そりゃあ、そうよ。だって、私たちは婚約者ですもの、ねえ、ヴァイス」

「なっ……」



 からかう様に抱き着いてくるアステシアさんを俺は押しとどめた。これ以上はエレナに申し訳なさすぎる。よく見るとエレナは涙目でこちらをみているしな。俺の態度で察したのか、アステシアさんも素直に引いてくれた



「エレナ、俺が悪かったから話を聞いてくれ、アステシアさんも誤解をされるようなことを言わないでくれ。その……いきなり、距離を取ったことは謝るよ。でも、アステアシアさんのことは俺も今日知ったんだ。そこは信じてほしい」

「言い訳はしなくてもいいですよ、ヴァイス。今回の事はお父様が原因なんでしょう? おおかた、私を守れないだろうから、関わらないでほしいとかいわれたんじゃないですか? あの人は過保護ですから……それにそこの方は何度か会ったことがありますから父との関係者というのもわかっています」

「いや、距離を取ろうとしたのは俺の意思で……」

「もし、本当にそうなら、私は今すぐ部屋から出てきます。あとは申し訳ありませんが、パーティーも抜けさせていただこうと思います。変わりの人間は必ず探すのでご安心ください。もう一度聞きますね、昨日の帰り際の言葉と距離を取ることを決めたのはヴァイスの意思なんですか?」



 エレナがかつてないほど真剣な顔で見つめてくる。その視線は力強いけれど、よくみると手が震えている。ああ、俺はまた彼女を傷つけてしまったのだ。覚悟はしていたが、いざ悲しい顔をしている彼女をみると胸が痛む。ゲームならばこれが決定的な選択肢となるだろう。この世界はゲームと同じ世界観だが、セーブ機能はない。



「私はお邪魔の様だから席を外すわね、どちらでもいいけれど、悔いがない返答をしたほうがいいわよ」



 アステシアはそういうと好きにしろとばかりに笑みを浮かべて部屋を出て行った。気を遣ってくれたのだろう。これでここでの会話は誰にも聞こえないだろう。だから俺は答えを伝える。



「エレナの言うとおりだ。俺はテスラさんにエレナから手を引いてくれと言われたよ。俺じゃあ、君を守れないってな。それで俺も色々考えて……」

「私をフッて、距離をおこうとしたと……」



 言いよどんだ俺の言葉をエレナが続けた。そして俺の顔をみて彼女はわざとらしく大げさにため息をついた。そのしぐさがあまりに嘘くさく、そして可愛らしくて、俺は思わず笑みをこぼしてしまう。



「何を笑っているんですか!! 私は本気で怒っているんですよ!! 私は気が付かないうちにヴァイスに嫌われることをしてしまったのかと悩んでたんです!! 劇場ではヴァイスが買ってくれたチケットは使わなかったですし、ドレスを見た時だって一瞬複雑そうな顔をしてたじゃないですか!! それに、私とはもう二人で会わないって言った時だって理由を言ってくれなかったからずっと考えていたんですよ!! ティアにも話を聞いてもらって、ヴァイスがそんなことを理由もなくするはずがないって言われて色々考えて……でもわからなくて……」

「それは本当に悪かった。でも……いや、言い訳はできないな。また俺は自分だけで決めちゃってたな……」

「全くです!! あの時も言いましたよね、でもよかった……嫌われたわけじゃないんだ……ヴァイスのばかぁ……」



 そういうと彼女は俺に抱き着いてきて、胸元に顔をうずめた。そしてしばらく彼女からすすり泣きが聞こえた。結局俺は彼女を傷つけてしまったようだ。彼女はこんなにも俺を想ってくれているのに、俺は逃げようとしてしまったのだ。彼女のために別れる? 何を考えていたのだ俺は? 彼女をこんなにも傷つけて何をしたかったのだ。

 劇場で、確かに貧富の差を感じたけどさ、テスラさんの言葉や、上流階級の雰囲気にのまれたってのもある。でもさ、だからってなんで俺はあんなふうに簡単に決めてしまったんだ? 俺は自分の運命を変えるためにがんばってきたんだ。そのために、同胞である転生者だって殺した。なのに、なんで俺は運命を変えようとしないで、楽な方に逃げてしまったのだろう。アステシアも何か手はあるといった。だったら俺がやることは決まっている。  

 俺が新しい決意を胸に秘めていると、彼女が顔を上げた。そして。俺に抱き着いたまま彼女は言う。



「ヴァイス、あなたの私への本当の想いを教えてくれませんか? そうすれば、許してあげます」

「いや、だって俺の気持ちなんてわかってるだろ」

「わかるわけないじゃないですか、好きって言われたこと一度もないんですよ。それなのに、いきなり二人っきりではもう会わないって言われて……そんな人の気持ちなんてわかりません。だから、今ここで、口にしてください」



 俺がへたれて一瞬身を引こうとするが、抱き着かれているため逃げ出せない。というか身体能力はエレナの方が高いんだから当たり前なんだよな。俺は彼女のぬくもりを感じながら、覚悟をする。テスラさんが危惧していたようなことが実際におきるかもしれない。でも俺は、もう逃げない。その覚悟を胸に秘めながら言った。



「俺はエレナが好きだよ。もう逃げないからこれからは一緒にいてほしい」

「ふーん、私は別にあなたの事が好きかわからないですけどね」

「え? は? 待って、この状態でフラれるの?」



 俺が驚いた声を上げると彼女は、拗ねたように唇を尖らせて俺から体を離した。そして意地の悪い笑みを浮かべてこう言った。



「一日前だったらオッケーしたんですけどね、ちゃんと父と話してきます。手紙だとのらりくらりとかわされるので直接話してきます。実はもう馬車を用意してるんですよね。全てを解決したらもう一度返事をします。だからそれまでもやもやしていてください」

「え、今から行くのか? もう、夜なんだが……」

「ええ、アステシアさんの件といいお父様は色々と画策していそうですからね、早めに行動をして潰します。ヴァイスが私の知っているヴァイスだったってわかっただけで満足です。あと、一言いっておきますけど、私は守られるだけの女の子じゃないんですよ。でも、どうしようもなくなったら助けをよびますからその時は助けてくださいね」



 そういうと彼女はさっさと部屋を出て行ってしまった。俺結構本気で告白したんだけど……すっげえもやもやするんだけど……でも、あれってオッケーってことなんだよな? 

 俺が悩んでいると、アステシアがにやにやしながら部屋に入ってきた。


「エレナがすごい顔を真っ赤にして、嬉しそうな顔をして出てきたわよ。一体どんなことをいったのかしらね、このすけこましは」

「人聞きの悪い事を言わないでくれないか? その……色々だよ」

「ふーん、私としてはどうでもいいんだけどね。それでエレナはどこにいったの?」

「アステシアさんはマジで俺に興味ないんだな……ああ、それは……」


 あれ、これってアステシアに行っていいんだろうか? テスラさんに情報が筒抜けになるんじゃ……俺が悩ましい顔をしていると察したのか、彼女が口を開いた。



「おおかた、テスラ様に直接交渉しに行ったって感じかしら。恋する乙女はすごいわね。ああ、勘違いしないでほしいんだけど私はあなたとの婚約は成功しても、失敗してもどちらでもいいのよ。テスラ様の事情で婚約が破棄になれば、もっといい婚約者を紹介してもらえるかもしれないしね」

「あ、そう……ここまで行くと清々しいな」

「それで……あなたは好きな女の子が頑張っているのをただ見ているだけでいいのかしら?」

「よくはないな。俺だって何かしたいんだよ。そういえば提案があるとか言ってたけど……」



 俺の言葉に彼女はうなづく。そして、再び資料を取り出した。



「他国にいるのだけれど、ドラゴンライダーって知ってるかしら? もしも、あなたが持っているドラゴンの卵を無事孵して従えることができれば、あなたは英雄になれるかもしれないわよ」

「ドラゴンライダーか……」



 俺は彼女の言葉をオウム返しにする。ドラゴンを従えるっていったいどうすればいいんだろう。でも、成功すれば確かに強力な力にはなりそうである。ドラゴンのやばさは俺が身をもって知っているのだから。  確かに魅力的な提案ではあるがひっかかるものはある。リチャードは言っていた。ドラゴンの卵は食べるくらいしか用途がないと……そして、目の前の彼女が俺に力を貸すメリットがないのだ。まさかボランティアではないだろう。かなり打算的な性格だしな。








ここまできてようやく主人公に強力な力が手に入る可能性が……


面白いな、続きが気になるなって思ったらブクマや感想、評価いただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 成る程、此処で彼が出てくる訳ですね。 このモヤモヤの海に一条の光が差しました。 どんな塩梅にしてくれるかはケイ先生の腕の見せ所ですね(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ