テスラの願い。
前回のあらすじ。
エレナとデートしていたら、エレナの父に会って、一緒に劇をみることになったよ。
テスラさんの言葉があまりに予想外で俺は思わず聞き返してしまう。なんでだ? ここはゲームでは主人公とエレナの関係を応援してくれるはずだぞ。
「うちの家系は国の中枢を担っているのだ、良くも悪くも目立つため敵が多いのだよ。君ではエレナを守ることはできないだろう?」
「そんなことは……」
「あるさ、守るというのは何も武力から守るだけではない。あらゆるからめ手からも守れるのかと聞いているのだよ。君の事についても調べさせてもらっている。地方貴族の長男だろう。家の力も弱く後ろ盾もない君では抑止力にはなれないんだ」
俺はテスラさんの言葉に何も言えなくなる。確かにこの人の言うとおりだ。エレナは強いって言っても学生レベルだし、俺のゲーム知識は権力争いには役に立たない。そもそも仮に俺がいくら強くなったって、ずっと彼女をといることはできないし、そもそも毒などを盛られたら終わりである。じゃあ、シオンは何で認められたんだ? レイドか……第三王子である彼の後ろ盾があるからシオンはテスラさんに認められたのだろう。さすがに権力争いでの嫌がらせ程度で、王家を敵に回すようなことはできないだろう。そもそも王家を敵に回すほどの敵ならば、テスラさんが事前に気づかないこともないだろうし
「頼む、私はもう、あの子が危険に会うのを見たくないのだ。もちろん、タダでとは言わない。君の実家に援助もするし、代わりの婚約者も用意しよう。だからエレナとは距離をとってくれないか?」
そう言ってテスラさんは俺に頭を下げた。それはあり得ない事だった。だって国の中枢を担っている人が、俺のような地方貴族の長男に頭を下げるなんて……公の場ではないとはいえプライドが許さないはずだ。でも、この人はそれだけ、エレナことを大事に思っているのだろう。もしかしたら、昔エレナが誘拐されたことがあるからかもしれない。
もしも、これが高圧的に俺とエレナを引き離そうとしているのだったら反発できた。もしも、厭らしい策略で俺とエレナを引き離そうとしていたのだったら、反撃もできた。でもさ、こんな風に言われたらどうすればいいんだよ。目の前にいるのはただの一人の父親だった。娘の命を心配するだけの父親だった。
「俺じゃあ……駄目なんですか……これから、俺だって頑張ってみます。それでも俺じゃあだめなんですか?」
「ああ、君ではエレナを守れないんだ。もしも、君が学園でトップになってもそれは変わりはしないよ。力だけでは彼女を守ることはできないのだから……だから、頼む。エレナとはもう、これ以上仲良くならないでくれ……私は、もう二度と彼女を危険な目に合わせたくないんだ」
悲痛な表情で懇願するテスラさんに俺は何も言えなかった。何も言う事は出来なかった。だってさ、なんていえばいいかわからないんだよ。
「少し……考えさせてください」
「ああ、ありがとう。本当に申し訳ない」
「お父様、ヴァイス遅くなってしまいました、このドレスを着るのに時間がかかってしまって……」
そう言いながら部屋に入ってきたのは美しいドレスに身を纏ったエレナだった。そのドレスは何か魔術でもかかっているのか、流れる水のように生地が美しい。それが彼女の魅力をさらに際立させている。だけど……今の俺はそんな彼女をじっくり見る余裕なんてなかった。
「おお、エレナ。やはり君に似合うと思ったんだ」
「フフ、ありがとうございます。お父様。ヴァイスはどう思いますか?」
「え……ああ……」
「ヴァイスどうしました? 気分が悪いんですか?」
「ほら、劇が始まるようだよ」
可愛らしく首をかしげている彼女に俺は何も答えることができない。そしてそのまま劇が始まってしまうのであった。特等席からみた劇だったけれど、俺の頭には何も入らなかった。
すいません、ハイファンの影響で更新が遅れてしまいました。




