エレナの父
エレナについて行った俺は、舞台がよく見える特等席に案内される、そこはプライベートを尊重されるかのように、敷居があり、テーブルと三脚の椅子が並べられている。いわゆるVIP席という奴だろう。普通にはチケットを買う事すらできないんろうなぁ……と思っていると先に席に座っていた男性がこちらを見て声をかけてきた。
「久しぶりだね、エレナ。あと君がヴァイス君かな。娘が仲良くしてもらっているようだね」
彼の名前はテスラ。仕立てのいい礼服を着た、温厚そうな顔だちの男性だ。だが騙されてはいけない。この人は国の中枢で権力争いをしているのだ。ただのいい人に務まる仕事ではない。ゲームではそこまで活躍はしなかったが、笑顔の裏で何をかんがえているかはわからない。俺は少し警戒を強める。まあ、何があるってわけではないんだけどさ。
「お久しぶりです。お父様、お元気そうで何よりです。どうせ長期休みには実家に帰るんですし、わざわざ招待してくださらなくてもよかったのに……」
「ああ、ごめんごめん。せっかくのデートを邪魔してしまったかな? でも、愛しい娘にせっかく会えるの機会なんだ。多少のわがままは許してほしいな。二人とも座ってくれないかな、私ばかり座っているのは申し訳ないからね」
そういうとテスラさんは、椅子をさす。背後に待機していたジョシュアさんがエレナ、俺という順番でそれぞれの目の前の椅子を引く。これは座らないわけにはいかないだろう。
「はじめまして、魔法学園でエレナさんとパーティーを組ませてもらっているヴァイスです。本日はお招きありがとうございます」
「こうして会うのは初めてだね、ヴァイス君。君の事はエレナからの手紙で名前がよく出るから。一方的に知っているんだがね」
「手紙ですか……」
そう言うとテスラさんが意地の悪い笑みを浮かべる。手紙っていったいどんなことを書いているんだよ。変なことを書いていないといいんだが……俺がエレナに目で聞くと彼女は顔を真っ赤にして答える。
「ちがうんです、別にヴァイスの事だけを書いているわけではないんですからね。ティアやハロルド、ついでにリチャードのことだって書いています!! お父様、からかわないでください」
「はて、そうだったかな? それにしてはヴァイス君のことばかり、書いてある気がするのだが……まるで英雄みたいとか……」
エレナのやつ何かいてるんだよ。なんか無茶苦茶恥ずかしいんだけど……俺はそんなたいそうな人間ではないというのに……エレナも顔を真っ赤にしているだろうと彼女をみると、俺の予想とは違い、真剣な顔でテスラさんに返答をしていた。
「そうなんです、ヴァイスは英雄みたいなんですよ、彼がいなかったら学校はもっとつまらないものになっていたと思います。それに、私がちょっと悩んでいた時もいつも背中を押してくれるんです」
そういって、彼女は満面の笑みを浮かべた。おそらく孤児院での事を話しているのだろうが、あれは俺だけの力ではない。それにさ、気になってる人が悩んでいたら力になりたいと思うのは当たり前だと思うんだよな。
エレナの言葉にテスラさんは苦笑をしている。そりゃあそうだよな、実の娘からののろけ話なんて俺だったら絶対聞きたくない。
「エレナは、ヴァイス君を本当に信頼しているんだね、そういえば、新しいドレスをプレゼントしようと思って用意していたんだ。よかったら着てくれないかな?」
「え……ドレスですか……でも……もう劇も始まりますし……」
「王都の最新の流行りなんだ、噂では魅了の魔法がかけられているらしくてね、彼もきっとエレナに夢中になるんじゃないかな?」
なにやらテスラさんがエレナの耳元でささやく、すると彼女は俺をみてなぜか顔を赤らめた。一体何を話ているんだろうな。親子の秘密の話だったりしたらと思うと中々つっこみにくいものである。
「ヴァイス、すいません、ちょっと席を外しますね」
「え、もうすこしで劇が始まるけど大丈夫か?」
「それまでには戻ってきますよ。楽しみにしていてくださいね」
そういって彼女は部屋から出て行った。そして部屋にはテスラさんとジョシュアさん、そして俺だけになる。なにこれむっちゃきまずいんだけど。例えるならば、戦地で俺一人で敵に囲まれている気分だ。でも俺はこのあとの流れを知っている。
「ふふ、ヴァイス君に話したいことがあってね、娘には席をはずしてもらった」
そういうと、テスラさんに微笑んだ。でも、その笑みはエレナに向けているときとは違って、まるで仮面の様で……俺はなぜか、嫌な予感がした。
「エレナが昔、誘拐されたことは知っているかな?」
「ええ、本人から聞きました。昔さらわれて怖い思いをしたと……」
「ふふ、あの子がそのことを話すなんてよっぽど君を信頼しているんだね。君にお願いがあるんだ聞いてくれるかい?」
「ええ……俺にできることならなんでも」
きた。ゲームではここでエレナを一生守ってくれと言われるのだ。もちろんテスラさんに言われなくても守るつもりだ。俺の返事は決まっている。俺はしっかりとテスラさんを見つめ返す。
そんな俺をみてテスラさんは、本当に申し訳なさそうに言った。
「たぶんエレナは君の事を好きなんだろう、あんなに人に心を許したエレナを久々に見たよ。だからこそ、君の方から彼女を振ってくれないか? 君では彼女を守ることができない。これは彼女のためだし、君のためでもあるんだ」
「え……今、何て言いました?」
テスラさんの口から出た言葉は予想外の一言だった。俺は言われた言葉の意味が分からず思わず聞き返すのであった。
次回から話が一気に進む予定です!! この土日に書くつもりなのでよろしくお願いします。
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また、新作の追放もののハイファンタジーを書いてみたので読んでくださると嬉しいです。
8万字まで書き溜めがあるので、楽しんでいただけると嬉しいです。
『無能扱いされて、幼馴染パーティーを追放された俺は外れギフト『翻訳』を駆使して成り上がる~馬鹿にされたギフトは『全てと会話できる』チートギフトでした。人を超えた魔物や魔族と共に最強パーティーで無双する』
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こちらもかなり気合を入れて書いたので読んでくださると嬉しいです。




