エレナとデート
着飾った俺とエレナは夜の街を歩く。夜道を歩く俺たちははたからみたらどう見えるだろうか? カップルのようにみえたら嬉しいと思う。
劇場の近くにつくとさまざまな露店があり、その中に演者達の似顔絵が飾ってあるのをみて、エレナが嬉しそうに声をあげた。
「あ、ヴァイス。この似顔絵、この前の主役の人の似顔絵ですよ。この人ヴァイスにちょっと似てません?」
彼女が指をさしたのは、以前の劇で俺に似ているといっていた英雄の人の似顔絵だ。よくみなくてもわかる。この人の方がかっこいいわ!! さすが劇の主役であって、イケメン度がやばい。からかっているのかと思いエレナをみるが彼女にその気配はない。眼がおかしいのだろうか? でもさ……
「いや、全然似てないだろ……むしろ、エレナがヒロインに……いや、エレナの方が可愛いな」
「もう、仕返しのつもりですか? 見え透いたお世辞を言わないでください」
そういって彼女は怒ったふりをするが頬がにやけているのを俺は見逃さない。これってさ、告白しても大丈夫だよな? 手もつないでるしさ。これで、友達としてしか見てないとか言われたら女性不審になるぞ。前世の記憶を探るが、ひたすらゲームをやっていただけで、何の役にも立たない。
劇のロビーは相変わらずにぎやかだ。貴族や商人の社交場にもなっているのだろう。エレナは場慣れをしているのか涼しい顔だ。その反面俺は二回目ということあり、緊張しながら進む。
「チケットを」
「あ、はい。これです」
「楽しみですね、ヴァイス」
受け付けのお兄さんに俺は二名分のチケットを渡す。立ち見の席の次に安い席である。彼女が前回用意してくれたVIP席とはえらい違いである。エレナは気にしないといっているが、やはり少し、気になってしまう。これでも結構奮発したんだけどな。これだけの金があれば結構贅沢なものが食べれるし……やはり貧富の差はなかなか激しいようだ。ゲーム知識を使ってもっと金を稼ぐしかないな。
「エレナ様? エレナ様ではないですか!!」
俺たちが席へ向かおうとすると、高そうな服を着ている初老の男性が声をかけてきた。使用人が着るようなデザインの服を着ているが、素人目でも立派なものだということがわかる。たぶん俺が今着ている服より高いんじゃないだろうか? エレナとはどういう関係なのだろうか?
「奇遇ですね、ジョシュア。あなたがここにいるということはお父様もこちらにいるという事でしょうか?」
彼女はジョシュアと呼ばれた男性に微笑みを浮かべて返事をする。でもさ、笑ってはいるけれど、その顔はいつものエレナとは違って、最初に会った時のように壁があるような気がしたが気のせいだろうか?
「エレナ様、劇を観るのならばそのような安い席ではなく、こちらの席にしてください。招待席のチケットを送っていると思いますが……それとそちらの方はどなたですか? ずいぶんと親しいようですが……」
そういうとジョシュアは見定めるかのように俺の服をみて、顔をみて、最後にエレナとつながれた手をみて顔をしかめる。ああ、思い出した。彼の名はジョシュア。エレナの家の執事でエレナの父の専属をしているのだ。昔はエレナの教育係も務めていたらしい。
ゲームではエレナルートに入ったときのみに、登場して、平民出身である主人公のシオンと、エレナがいい感じになっているのをたしなめる役割である。そしてこの後、シオンとエレナを、エレナのお父さんのところに連れていかるのだが、エレナが本気でシオンの事を好きと悟ったお父さんはエレナとシオンの仲を認めてくれるのだ。くっそ、ゲームでの事を思い出して、シオンにちょっと嫉妬心が出てきた。俺は隣のエレナをみて、実感する。彼女は俺の横にいるのだから……俺が少し手に力をいれてしまったからか、彼女は一瞬怪訝な顔をした後に、俺を安心させるように、微笑んだ。
「ええ、今はまだ、ただの友人のヴァイスです。授業でパーティーも組んでいるんですが、とても、頼りになるんですよ。手紙にも書いていると思いますが」
「ああ、彼がヴァイスですか……」
そういうとエレナは、より強く俺の手を握る、しかも、「まだ、ただの友人」という部分を強調している。そしてそれをみてジョシュアは不快そうな顔をする。ちなみにジョシュアは今は無茶苦茶感じが悪いが、悪い人ではない。エレナを本当に大事に思っているのだ。まあ、自分が面倒見た子が、地方貴族なんかと仲良くしていたら不愉快だろうさ。現代社会で言うと、医者の家系の娘が、ただのサラリーマンをつれてきたときのもっとひどいバージョンだからな。彼的には例えばレイドや、リチャードのような力を持った存在と仲良くなってほしかったんだろう。
「まあ、いいでしょう。エレナ様、あなたのお父様も来ていらっしゃいます。そのような席ではなく、こちらにいらしてください」
「そのような席!? この席はヴァイスが頑張って取ってくれたんですよ。私はこちらで観ます!!」
「エレナ様!! 我が家の格を知ってください!! あなたがそのような席でみているなどとほかの貴族にばれたら、あらぬ噂を流されるかもしれないのですよ」
エレナとジョシュアが、にらみ合う。そしてその騒動に周りの人も注目し始める。これってちょっとまずくないか? 俺としても変に目立ちたくないし、俺とエレナの関係をお父さんに認めてもらえればジョシュアも余計なことを言わなくなるだろう。それにしても、ゲームでは高級レストランでおきるイベントだったが、俺が行動したせいか、色々かわりつつあるらしい。まあ、イベントの中身自体はあまりかわらないようだが……
「まあまあ、エレナ。せっかくいい席に案内してくれているならいいんじゃないか? このチケットは今度ハロルドとでも観る時に使うよ」
「でも、このチケットはヴァイスが私のためにがんばって……」
「いいんだ、その気持ちだけで嬉しいよ」
「話はまとまったようですな。それではお二人ともこちらです」
エレナは納得をしていなさそうだったが、俺が了承したこともあり、しぶしぶといった感じでうなずいた。そうして俺たちは招待席へと向かう。エレナについって、席へと向かう時に追い抜く瞬間に、ジョシュアは俺の耳元でささやく。
「ありがとうございます……そしても申し訳ありません。これからあなたにはつらい事がおきると思います」
俺はジョシュアをみてきょとんとする。ゲーム通りならこの後はグットエンドのはずなのに……結局、俺は転生者のドラゴンに色々言っていたくせにまだ、この世界のことを知らなかったのだろう。それはドラゴンを無事に倒せたっていう慢心と、ティアとハロルドがうまくいっているという油断もあったのかもしれない。
とうの昔にゲームとは違うルートを進んでいるというのに……俺は現代人ではなく、この世界の貴族だというのに……貴族同士の恋愛は家の意思も関係するっていう事の意味をきちんと理解してなかったのだ。
なんかこっちも読んでもらえているようで嬉しいですね。
ありがとうございます。




