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戦闘の跡地とデート

 冒険者ギルドで騒いだ次の日に、俺はリチャードと一緒にワイバーンの巣に来ていた。そう、最後にドラゴンと戦った場所である。

 あの夢は転生者のドラゴンの記憶だったのだろうか、それとも俺の罪悪感がみせた夢だったのだろうか。真実はわからない。だが、俺は一つの予感と共に再度ここにきたのだ。



「だいぶ、片づけられているんだな……」

「まあな、ドラゴンの素材はいい防具になるからな。我が騎士団の装備の強化に使われるんだ、あとドラゴンの肉はなかなか美味いぞ。今度喰わせてやるよ」



 横のリチャードがどうでもいいことを言ってくる。ドラゴンの肉か……ティアは喜びそうだが、しばらくはそんな気分になれないな……というか、人語をわかる生物を食うって発想がよくわからねえよな。

 俺は骨すら回収されて、綺麗になった洞窟に花を置いて手を合わせる。もっと時間があったらあいつをわかってやれたのだろうか? もっと話せば俺はあいつと仲良くできたのだろうか。俺はくだらない妄想を振り払うために頭を振りかぶって、リチャードに声をかける。



「ひょっとしたらなんだが、ここのどこかにドラゴンの卵があるかもしれないんだ。探すの手伝ってくれないか」

「別にかまわないが……みつけてどうするんだ? ああ、でも食べたら力つきそうだよな。俺はスクランブルエッグが好きだぞ」



 何言ってんだこいつ……さっきから食べる事ばかりじゃないか、てかドラゴンって高級食材なんだろうか? 俺の見た夢であいつは転生の魔法を覚えていた。その転生の魔法は、自分が死んだときに近くにある竜族の卵に、その精神を移すというものだった。そしてあいつはここを最後に帰る場所をにしたのだ。どこか遠くに逃げるのではなくここに逃げたのだ。ならば何かがあるに違いない。すでに壊滅状態とはいえここはワイバーンの巣だったのだ。卵には困らないだろう。



「あったぞ。おそらくこれじゃないか?」

「おお、マジか!!」



 二時間ほど探しているとリチャードがびっくりしたように言った。洞窟の穴の一つに、まるで宝物のように木の枝や何かの骨で守られている卵がおいてあった。やはりあれはただの夢ではなかったようだ。



「なあ、リチャード……この卵は俺がもらってもいいか?」

「ああ、構わないが……まさか、これを孵すつもりか? ドラゴンは人になつかないし、飼育も大変と聞くが……」

「ああ……でもこれが欲しいんだ。頼む」

「まあ、うちとしても卵には食べるくらいの価値しかないから構わないが……」



 そうして俺は、卵を置いて、学校に帰ることにした。ドラゴンの卵に関しては図書館で色々調べてみようと思う、これまで問題はなかったのだ。いい飼育方法がわかるまでは巣に放置で問題はないだろう。




 帰宅した俺は正装に着替える。劇のチケットは持った。エレナの時のように最高級席ではなく、一番安い席になってしまったが、彼女は笑って許してくれた。彼女いわくそういうのは気持ちが嬉しいらしい。



「あれ、ヴァイス、もう夜中だけどどこか行くのかい?」

「ああ、ちょっとな……」

「どうせデートでしょ、うらやましいなぁ」

「うっせー、お前だってティアと行けばいいだろうが」

「うん、そうだね……たまにはクエストじゃなくてデートしたいよぉぉぉぉ」

「その……なんかすまなかったな……今度またダブルデートしようぜ」

「本当かい? 絶対だからねぇぇぇ」



 俺の言葉にハロルドは神にでも出会ったかのように泣きながら感謝してきた。ちょっとこいつ必死過ぎない? でも、まあ、今回はこいつにも色々お世話になったからな……今回の告白がうまくいったらまたダブルデートをしてもいいと思う。やっべえ、すげえ、緊張してきた。俺はチケットと共に彼女へのプレゼントを胸に部屋を出るのであった。




 そして学校の女子寮の近くの中庭で俺は美しい少女に出会う。彼女は俺をみるとにこりと微笑んだ。



「こんばんは、ヴァイス」

「ああ、待ち合わせより早いけど寒くなかったか?」

「ふふ、今日が楽しみだったものでつい早めに来てしまいました」



 そういうエレナはとても可愛らしいドレスを着ている。というか、なんか宝石とかついているんだけど、絶対高くない? え、何なの、勝負服? 俺が見惚れてぼーっとしていると、なぜか彼女は不機嫌そうに唇を尖らせた。



「私のこの格好をみて何かいう事はないんですか、英雄さん? あなたの会うために精一杯お洒落をしてきたんですよ」

「いや、その……とても似合ってるよ。てか英雄さんってなんだよ」



 エレナは芝居がかった口調で誉め言葉をおねだりしてきた。くっそ可愛いな、おい。



「ふふふ、知能のある強力なドラゴンを倒したんです。英雄と呼ばれてもおかしくない行動だったと思いますよ……それに……ヴァイスは私にとっての英雄ですから……今回はお疲れさまでした。今日は私をエスコートしてくださいね」

「ああ、任せとけ。じゃあ、エレナは英雄のヒロインである、お姫様かな。精一杯エスコートさせてくれよ」

「なんというか……恥ずかしいこと言いますね……」

「お前が言い出したんだろうが!?」



 俺は……いや、俺たちは二人して頭を真っ赤にしてくだらないことを言い合う。でも、俺が英雄だというのなら、それは彼女のおかげでもある。彼女が俺に気合を入れてくれたから俺は勝てたのだ。


 

「でも……こういうやりとり、嫌いじゃないですよ」

「ん? なんかいったか?」

「いえ、なんでもないです、さ、行きましょう」



 そうして、俺が歩き出すと、手が暖かいものに包まれる。いきなり手をつながれて俺がびっくりしていると、彼女は意地の悪い笑みを浮かべた。



「今日はエスコートしてくれるんでしょう? 本当だったらヴァイスの方から握ってほしかったんですが……」

「くっそ……俺の反応を楽しんでいるだろう!?」



 やべえ、なんかすっげえどきどきしてきたんだけど。てか、ここ女子寮から丸見えなんだけど、ティアとかにみられてないよな……















 私は窓から、夜の街へと繰り出す二人の男女を見下ろす、幸せそうな二人を見下ろす。



「ヴァイス……地方貴族の長男。成績は優秀だがさぼりがち、剣技も魔法も特段優れたものはないけれど、ドラゴンを倒したりと色々と活躍が目立つか……不思議な男よね」



 私は報告書を読みながら思う、彼はおそらく幸運を持っているのだろう、幸運の女神に愛されているのだろう。そういう人間はいるものだ。そしてそういう人間は身近のものにも幸運を運んでくれるものだ。でも、報告書だけではいまいちどんな人物かはわからない、今度挨拶をしに行こうと思う。学年も違うし、今まで、学校で接点はなかったが、自分の婚約者に挨拶をしに行くのだ。おかしなことではないだろう。

 今回の婚約話は私としてもありがたい。相手は権力とお金がない地方貴族だが、歴史はある。私の家に箔をつけるのにはちょうどいいだろう。金しかない私の家にとって貴族であるという事と、あの人に貸しを作れたのはとても大きい。そして、彼にとっても悪い話ではないだろう。お金と中央貴族へのパイプが同時に手に入るのだ。彼は違う人を想っているようだが、想い人と結ばれないのはよくあることだ。説明をすれば彼も納得するだろう。でも一つだけ申し訳ないなと思う。



「エレナごめんなさいね。最後のデートを楽しみになさい」



 この事実を知ったら彼女は心を痛めるだろうか? それとも激怒するだろうか? でも……私は思う。彼では彼女は守れないだろう。だからこれでいいのだ。彼女にはもう二度と傷ついてほしくはないのだから……いつしか、私がみていた二人の影は街へと消えていった。


というわけで次から新しい話になります。最後に出たキャラは新キャラですね。ヴァイスとエレナの恋はどうなるでしょうか? そんなにシリアスにはならないです。


この作品も最近読んでくださる方が増えてきて嬉しいです。

面白いな、先が気になるなって思った方はブクマや評価、感想などいただけたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったですよ(≧∇≦)b次回も楽しみに待ってます(●´ω`●)
[良い点] 新キャラ登場で、また新たな展開ですね。 エレナに対しても、ヴァイスに対しても色々と含みがあるようでして。 何と言うか、貴族の恋愛・婚姻事情を垣間見ましたね。 実家からは何も知らされていない…
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