表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/88

誰かがみた転生人生

 これは、夢だ。思考に靄がかかったような状態だったが、不思議とそれだけはわかる。

 


 記憶を取り戻した時、俺は、人間達と戦っていた。四人パーティーだったのか、二人はすでに焼死体になっていて、一人はするどい爪か何かで、腹部を切り裂かれ、息絶えていた。そして最後の一人は、杖を構えて震えながらも俺に立ち向かおうとしてる少女。

 なぜ記憶を取り戻したのか? 彼女の魔法を受けた衝撃か、はたまた、他にも理由があったのか、俺にはわからないけれど、唐突に前世の記憶を思い出したのだ。



『君の魔法で俺は正気に戻った。俺は今まで、悪い魔女に洗脳されていたんだ。戦う気はないから杖を収めてくれないか?』



 もちろん、出まかせである。杖を持った少女は俺の言葉に一瞬困惑したようだったが、すぐにこちらを睨んで叫んだ。



「何を適当な事を言っている。私の仲間を殺したくせに!! そんな見え見えの嘘を信じると思うのか!!」



 最な言い分である。悲しい事に、俺は、彼女の仲間を殺した事を覚えている。だから、彼女が怒る気持ちはわかる。だけど、俺にもどうしようもなかったのだ。だって、記憶を取り戻す前は、人間が獲物にしかみえなかったのだから……でも、記憶を取り戻した今は別だ。だから俺は何とかこの少女を説得しようと思う。



『圧倒的に有利な俺が、お前に嘘をつく必要があると思うのか?』

「う……それは……」



 俺の言葉に少女は呻く。動揺している。畳みかけるなら今しかないだろう。



『死んだ人間は生き返らすことはできないが、お詫びだ。俺の持っている財宝をやるよ』

「な……私がものにつられるとでも……」



 困惑している少女を、俺は宝物庫に案内をしてやる。どうやらドラゴンには魔力を持つ武具や、金銀財宝を集める癖があったようだ。少女は困惑しながらも、ついてきた。そして宝物庫の中をみると先ほどまでとは別人のように目を輝かせた。



「これは……古代文明の魔剣じゃないか? それに大賢者がもっていたという英知の杖!? なんでこんなところに……ああ、これはいかなる傷も癒すというエリクサー!!」

『ものにはつられないんじゃなかったのか?』

「う…うるさい、今のはお前を油断させるための演技だ」



 俺が指摘すると彼女は端正な顔をゆがめて、顔を真っ赤にして怒鳴り返してきた。そして、さまざまな宝の中から、彼女が選んだのは、強力な力を持つ杖だった。その杖をみたときの彼女の笑顔はなんというか、とても美しかったのを覚えている。

 その後、俺は少女に、人に害をなすつもりはないから誰も近寄らないようにしてほしいと周囲の人間に伝えてくれと、伝言を頼み、新しい人生を楽しむことにした。

 


 転生した俺は空を飛んだり、獲物を狩ったりして異世界を楽しんでいた。だが、その平穏は数日で破られる。ある日何人もの人間達が、俺の住む山にやってきたのだ。そいつらは俺を見つけるとこういった。



「貴様の持っている財宝を渡せ。ドラゴンにはもったいないだろう」

『等価交換なら構わないが……そうだな……なにか美味しいものと、情報でもくれないだろうか?』

「はっ、化け物と交渉何かするかよ」



 その一言が終わるのを待たずに、矢と魔法が飛んできて、戦闘が始まった。俺は別に積極的に戦うつもりはないが、相手がこちらを殺すつもりならば話は別である。仕方なく、人間達を迎え撃った。

 そして戦いは一方的になった。なぜなら、俺の鱗はほとんどの攻撃から身を守ってくれるのに、人間たちは俺の炎で一瞬で消し炭になるのだから。

 そして、ひときわ強力な魔法が飛んでくる方を睨むと、何人かの魔法使いらしき連中がいた。そして、その中に見逃した少女を見つけてしまった。それで俺は全てを理解した。彼女は俺の持っている財宝に目がくらんだのだろう。彼女と目が合う。



「死ね、化け物め!!」



 魔法の杖から放たれた魔法は、確かに強力だったけれど、俺の鱗を貫くほどではなかった。なのに、なぜかすごく痛かった気がする。俺の放ったブレスによって、少女を含めた魔法使いたちはあっけなく焼死体となった。もう、彼女が宝をみたときに見せた、あの美しい笑顔を浮かべることはもうないだろう。



 その後も同じようなことの繰り返しだった。安住の地を探している時に、魔物に襲われている少女を助けた。その、少女に色々と話を聞いて、俺はこの世界がゲームの世界で、自分はその中の、中ボスに転生したことを知った。

 山を渡るという少女の装備は貧弱で、魔物にあったらすぐに殺されてしまいそうだった。だから、護衛をすると申しでると、彼女は驚きながらもうなずいた。

 少し一緒に時を過ごして、俺は油断をしたのだろう。俺が浅い眠りから目を覚ますと、少女は逃げようと崖の方へと走っていくのがみえた。「そっちは危ないぞ」と、声をかけると、なぜか、少女は恐怖に顔を歪ませ俺をみる、そしてよそ見をしたせいか、バランスを崩して崖から転落をした。

 何度も人を助け、裏切られ俺は気づく。ドラゴンになった俺と、人間は相いれないのだと、ゲームでもそういう設定だった気がする。

 このキャラの名前は「ファフニール」人を快楽のために殺す悪竜で、勇者に殺される存在だった。結局俺はゲームのロールプレイから抜け出せないのだろう。誰かを助けても結局は裏切られ、より最悪な結果になる。やがて、俺はゲームの世界の住人と和解しようとすることの無意味さを知った。しょせんデータの集合体にすぎないやつらと、わかりあう事なんてできなかったのだ。

 


 それからは簡単だった。俺は勇者に殺されず、自分が生き延びる方法をひたすら探した。ある時は人々の村を襲った。ある時は魔女を脅迫して魔法を教わった。幸いにもゲームの知識があったため、重要人物の居場所は頭に入っていた。

 そして俺は、転生の秘術を覚え、勇者と戦い敗れたのだ。どうせ、勝てないのだから仕方ない。適当に戦いながら願う。次に目覚めた時は、俺の事を仲間と思ってくれる人に会いたい。そうだな……俺と同じ転生者だったらわかりあえるはずだ。俺はそう願い、長い眠りについたのだった。




 変な夢をみた俺は目を覚ます。頭がぼーっとするが、何やら手に暖かい感触がある。視線を感じ顔をあげると、一人の少女と少年が俺を心配そうにみていた。



「ヴァイス……目が覚めましたか!?」

「ん……エレナか……!?」

「ハロルド、ヴァイスが目覚めましたよ、みんなを呼んできてください」

「わかった!! 三日も目を覚まさないから心配したよ」



 そう言うとハロルドは俺に声をかけてから、部屋を出て行った。ティアを呼びに行ったのだろう。それにしても三日も寝ていたのか……

 ぼーっとしている俺の身体を甘い匂いと共に柔らかい感触が包んだ。びっくりするとエレナが涙を流しながら俺の胸に飛び込んできた。



「よかった……全然目を覚まさないから、ずっとこのままだと思っていました」

「心配させたようだな、すまない……でも、お前と一緒に劇を観に行くって言う約束があるんだ、死んでたまるかよ」

「まったくです、もしも、死んでいたら、地獄で説教ですね」

「待って、俺は地獄に行く事確定なのか?」

「当たり前でしょう、あなたが死んだら、一人の女の子を泣かせることになるんですよ、地獄行きです」



 そう言ってエレナは軽く俺を殴るふりをする。軽く笑いあったあとに、俺達は見つめあう。彼女の目はなぜかうるんでいて、とても美しかった。っていうか近くない? なんか抱き着かれているかんじだしさ。俺がてんぱって固まっていると彼女は、何を勘違いしたのか、目をつぶる。え、待って。これってあれだよな……



「ヴァイス!! 目を覚ましたのね、心配したのよ!! ってごめんなさい、お楽しみの最中だったのね」

「ティア、空気読んで欲しいなぁ、今二人、すっごいいい感じだったよねぇ」

「ティア!! これは違うんです!! 別に楽しんでなんかいません!!」

「ぐぇ」

「ああ!! ヴァイス大丈夫ですか!?」



 照れたエレナに突き飛ばされて俺び上半身はベットから転がり落ち、頭をぶつける。いってぇ……だが、この痛さこそが俺が生きているという証明である。こうして俺は日常に戻ったのだった。でも……あの夢はなんだったんだろうな。あいつは……あのドラゴンはどんな人生を送っていたのだろう……?






なんかむっちゃシリアスになってしまいました。この話は次で終わりです。


次の話を投稿したら登場人物一覧を投稿しようと思います。




面白いなって思ったらブクマや感想、評価などいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 思った以上にドラゴンくんの人生過酷だったな() でも生き抜くための行動力が半端無くて笑った。 シリアスから戻って思った…やっぱ主人公はクソぬるゲールートだな…と。 ドラゴンくんの来世に幸あれ…
2020/04/18 05:28 名無しのハテナ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ