転生者と転生者
主人公が魔剣を使っていますが『依頼達成』の時にもらった剣です。
俺はワイバーンの巣で一人奴を待つ。もう一人の転生者、この世界をゲームとして考えているドラゴンの転生者を……
だが俺は思う、俺もああなった可能性があったのだと。もしも、俺にハロルドのような親友がいなかったらどうなっていただろう? ティアのようにともに高みを目指す幼馴染がいなかったらどうなっていたのだろう? エレナのように俺を想ってくれている人がいなかっただろう? リチャードのような競えあうライバルがいなかったらどうなっていただろう? そして……俺がかませ犬の貴族に転生していなかったらどうなっていただろう?
俺はかませ犬の貴族に転生した、だからみんなと頼り力をあわせ生きる事ができた。いや、そうせざるおえなかったのだ。もしも、俺が強力な力を持っていたら、こんなにもみんなに感情移入できただろうか……例えば俺がドラゴンのような強力な存在に転生していたら……
「------!!!」
俺のくだらない思考は巣に響いた荒々しい咆哮によって中断された。ようやく来たか……俺は唯一の入り口に神経を集中させ、影が見えた同時に巻物を取り出す。
「くらえ!!」
魔法が込められた巻物から火の玉が現れてやってきた影を焼きつくす。おかしい……小さすぎる。俺が違和感に気づき、とっさに飛びはねて転がると同時に影が見えたと思うと火の塊が俺がいたところを襲撃した。背後の爆発音と同時に衝撃が俺を襲うが致命傷ではない。
『やってくれたな、イレギュラー!! だが、真っ向勝負で俺に勝てると思うなよ』
俺を空から見下すようにドラゴンは言った。強気な口調とは裏腹に奴の体はボロボロだ。翼はいたるところが切り刻まれており、鱗もところどころ剥がれ皮膚がむき出しになっている。どうやら作戦は成功したらしい。ハロルドたちもおそらくは無事だろうか? 冒険者たちに死傷者は出ていないだろうか? 気になるがいまはそれどころではない。
「そういうわりにはお前も随分とこざかしいことをするんだな」
『こざかしいのは貴様の方だろうが!! 俺を騙し転生者としての特権を独り占めにする気だろう!!』
俺は巻物によって焼かれたワイバーンの死骸を指さして挑発するように笑う。やつは俺が待ち伏せをしているのに気づき、そこらへんに転がっているワンバーンの死骸を咥えて、投げ込んだのだ。俺はまんまとはめられてしまったようだ。だが、大丈夫だ、相手はもう瀕死なはず……それに俺には奥の手がある。
それにしてもこいつは相変わらずずれたことを言っている……転生者の特権だと? それをつかってようやく俺は人並みだというのに……
俺は手持ちのアイテムを確認しながら、戦闘態勢を継続する。結界を発生させる指輪に、魔法が封じ込められている巻物が三つ、あとは学校で支給されたボウガンがある。そして最後にもう一つ
「剣よ!!」
俺は魔剣を構える。リチャードの依頼をクリアしたときにもらった剣だ。リチャードの『グラム』ほど優秀ではないがゲーム中盤でもそこそこ使えた剣だ。能力は一定期間の身体能力の上昇、切れ味もそこら辺の剣より優秀である。とはいえ……
「くっそ、空をとぶなんてずるいだろ!! 火よ!!」
そもそも剣が届く間合いに敵がこない。せっかくの魔剣だが、完全に身体能力の強化にのみしか使えていない。俺は自分の魔法で相手の目くらましをしながら、強力な魔法が封印されている巻物をうつタイミングを狙う。チャンスは三回だ。
俺の能力の低さも、巻物の強力さも、相手はシオン達と共闘したときに理解したのだろう。中々隙を見せない。俺は魔法と矢で牽制をするので精いっぱいである。
「くっそ、度重なる戦闘でボロボロなはずなのに……」
『ちょこまかと!! 雑魚キャラのくせになぜ当たらない!?』
お互い決定打をあたえられないまま、時間が過ぎていく。一見みると均衡状態だが、俺は魔剣で身体能力を上げているし、魔力もそろそろつきかけているのだ。このままではまずい。奥の手を使うしかない。
「炎よ!! 結界よ!!」
巻物を一つ使い足元に爆発を発生させて、直後に自分の靴に結界を張る。爆発が、結界越しに爆発が発生し俺をすさまじい衝撃が襲う、まるで弓で射られた矢のようにドラゴンへと向かう。こいつを倒すには意表をつく攻撃をするしかない。
「うおおおおお!!」
俺の決死の攻撃はドラゴンの眉間を狙ったが、ドラゴンはまるで察していたかのように、体をよじる。攻撃はドラゴンの頬をかすめただけだった。俺は天井にぶつかり全身に衝撃が走る。俺はとっさに天井に剣を突き刺して落下を防ぐ。普通の剣ならばへし折れていただろうが魔力が込められた剣は岩をも容易に貫いた。
『なにかやってくると思ったよ!! だが甘かったな』
ドラゴンが天井にぶら下がった俺をまるで獲物をみるかのごとくみつめる。俺はそれに笑みでかえしてやる。
「いいことを教えてやるよ。巻物は開くだけで魔法が発生するんだよ」
「---!!」
俺が飛び上がった時に、空中に広げておいた巻物から発生した風の刃がドラゴンの翼を切り刻む。こちらを憎らしげに睨みながら落下していくあいつをみていた俺だったが、いきなり猛烈な疲労に襲われる。魔剣のバフが切れたようだ。俺の手から握力が抜けてやつ同様俺も落下する。やばいもう、体がボロボロだ……とっさに受け身をとったが激痛からは逃れられない。
俺は痛みを感じながらもよろよろと立ち上がる。そしてやつと目があう。やつの翼はボロボロでもう飛べなくなったようだがまだ元気なようだな。だが、それでいい。
「なあ。なんで俺がお前と手を組まなかったか知りたくないか?」
『気になるが……お前のことだ、何か考えがありそうだからな、殺させてもらう』
そういうとドラゴンは大きな口を開けブレスを吐く準備をする。指輪で防ぎきれるだろうか? 防ぎ切った後に何ができる? 俺は
俺の顔をみてやつは勝利の笑みを浮かべた気がした。その笑みはやつの右目を貫いた矢によって悲鳴へと変わる。
「---!!」
「ふははは、見ろ、私の矢が当たったぞ!!」
「あぶねー、間に合ったか……お前の敵は俺だけじゃない……俺が紡いできた全てなんだよ!!」
俺は増援のリチャードの声に安堵の息をこぼす。はなから一騎打ちなんてするつもりはない。これはゲームではないのだ。戦闘に人数制限はない。相手を油断させるために一人で時間を稼ぎ、援軍の音に気づかれないように、派手に火の魔法を使い音を響かせ、援軍が来た時に逃げられないように翼を切り裂く。俺はこいつをここで仕留めると決めたのだ。
更新遅れてすいません、仕事がバタバタしていて推敲に時間がかかってしまいました……
次からもうちょっと更新速度を上げたいと思います。




