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冒険者ギルドへの提案

俺は冒険者ギルドの前の扉に立っていた。後ろにはティアとリチャードがいる。今回の作戦は成功するだろうか? その一歩がこれで決まるのだ。緊張しないはずはない。俺はようやく扉のノブに手をかけ……



「何ちんたらやってんのよ、さっさと開けなさいよ」

「うおおおお、お前!! 緊張とかねえのかよ!!」

「うっさいわね、うじうじしてても始まらないでしょ。こんにちはー」



 ティアが乱暴に扉を開けて中に入っていった。俺とリチャードは顔をあわせ溜息をつきながらも仕方なく後に続く。そしていつもの依頼の貼られている掲示板ではなく、依頼者用のカウンターへとむかった。そう、今回俺達が冒険者ギルドへ来たのは依頼をするためだ。初めての事だし、信憑性のない依頼をすることもあり、心臓がばくばくいってやがる。

 たまたま、ギルドにいたらしきアンディさんと目が合うとニコッとほほ笑んで手を振ってくれた。顔見知りがいたことによって少し落ち着いたようだ。でも隣にメイド服のエルフの女性がいたのは何だろう、そういう大人なサービスでもやっているんだろうか?

 俺は受付の前で深呼吸をして受付嬢に声をかける。



「依頼をしたいのですがここでいいでしょうか?」

「ええ、どのような依頼でしょうか? 内容によってこちらで金額の相場や、ランクなどは判断いたしますので、安心してくださいね」



 俺のような人間の相手も手馴れているのだろう、受付嬢の人がこちらを安心させるかのように微笑んだ。でもごめんなさい、多分その笑顔を凍らせることになると思います。



「依頼内容は人語を理解するドラゴンの退治、ランクは最上級でお願いします」

「はっ……? あの、噂のドラゴンの退治ですか……」

「嘘ではないぞ、この街を守る我が一族が保証人になると、兄上直筆のサインも持っている」



 俺の言葉を補強するかのようにリチャードが一枚の紙を受付嬢に差し出した。受付嬢はリチャードの持っていた紙をみると、笑顔を凍らせ「少々お待ちください」と言って席を立ってしまった。

ギルド内がざわざわと騒がしくなる。それはそうだろう。今話題であろう喋るドラゴンを、しかも戦って生存した俺が依頼を持ってきたのだ。こいつは何だとなるだろうよ。ちなみにリチャードに一度家に帰ってもらったのはこの紙に街の管理者であるアレックスさんのサインをもらうためである。これがあれば冒険者ギルドに融通が利くはずである。



「お待たせいたしました、奥に来ていただけますか」



 俺達は受付嬢についていった。





 奥の応接間は俺も喋るドラゴン遭遇して帰還したときにと入ったことがある。立派な本棚にオークで作られた高級そうな机のある、まるで貴族の館の一室かのような部屋だ。

 


「さあさあ、座ってください、詳しい事を聞かせていただけますか」

「はい」



 俺達を出迎えたのはギルド長である。髭ずらの温厚そうなおっさんだ。俺達はギルド長の声を合図に席に座る。



「詳しい内容はここに書いてあります」

「ほぉ、アレックス殿のサインもありますな。これは公の書類として処理していいという事でしょうか?」

「もちろんだ、私が保証しよう」

「リチャード殿が保証してくださるなら安心ですな」



 書類を受け取り、眉をひそめたギルド長にリチャードが答えた。こいつ何でため口なんだよとか思わなくもないが、どうやら顔見知りのようだし、俺の様な地方貴族と違って、街を管理している家系なのだがら色々つながりがあるのだろう。

 それより、ティア恥ずかしいからきょろきょろしないでくれないかな。確かに冒険者ギルドの応接間に案内されるとか英雄譚っぽいけどさ。



「ふむ、つまりあなた方の指示する時間に有力な冒険者たちにドラゴンの巣で待ち伏せをしてほしいとのことですが……もしも、ドラゴンがその時間にいたらどうするのですか? それに戦力を集中しすぎるのも心配なのですが……」



 依頼書を見たギルド長の問いは最なのものだった。依頼書には指定の時間に俺がさらわれた竜の巣に罠を張って潜んでいてほしいというものだった。しかもメンバーはギルドのでも上級ランクの人間ののみに指定してあり、もしも何も起こらなかった場合も依頼料は全額払うという契約だ。



「指定の時間にドラゴンがいないことは私が保証しよう。万が一いた場合は撤退してもらって構わないし、その場合も依頼金は全額払う」

「ですが……」

「おやおや、ドラゴン殺しの家系である我が一族よりも、あなたの方がドラゴンに詳しいのかな? 我が家にはドラゴンを呼ぶためのアイテムがあるのだ」



 そう言ってリチャードは竜笛を袋からとってギルド長にみせる。ギルド長は「ううむ」と竜笛をみつめながら唸った。

 ちなみにこの竜笛はリチャードが偉そうに出したが俺がやつからもらったものである。俺が出すよりもリチャードが出す方が効果的だと思ったのだ。効果に関しては嘘をついていないので許してほしい。



「わかりました、ですが万が一当てが外れた場合は……」

「我が一族が責任をもとう」



 この一言で話はまとまった。あとは細かい打ち合わせをして俺達は冒険者ギルドを出るのであった。



「あー、疲れた!! やっぱりめんどくさい話はつかれるわね」

「お前何にもしゃべってねーじゃねーかよ。少しは援護しろよ」

「何言ってるのよ、今日は大人しい恰好で来たでしょう。女の子がいるだけで場は和むのよ。明日ちゃんと依頼が貼られているか確認しとくわね」



 そう言って彼女は大人しくしていたうっぷんを晴らすかのように、ダンスを踊るような感じでくるくると回る。珍しくスカートだと思ったら色々考えていたのか。てかそんなくるくる回るとパンツみえそうなんだけど……



「それにしてもリチャード、やたら家の力を強調していたが大丈夫なのか? もし失敗したら……」

「何を言っているんだ、貴様は失敗を前提に作戦を考え、そんなものに私たちを巻き込んだのか?」

「それは違うが……」

「ならばいいではないか、兄上もこれで借りは返したよと言っていたしな。納得済みだ」

「ああ……あと交渉をほとんど任せてしまったが悪かったな」

「そんなことなら気にするな、それにいったろう。エレナとの関係以外なら力を貸してやると。貴様はこれから他にも色々やる事があるのだ、そちらに力を入れろ。ワイバーンの巣にはちゃんと我が家の私兵たちを控えさせておけば良いのだな」

「……ありがとうな」

「素直できもいな」

「お前まじでぶっ殺すぞ」



 そうして俺達は次の作戦へと向かった。あとはエレナの交渉がうまくいくのとシオン達をおびき寄せるのがうまくいくかだ。



-----------------



「それで……アンディ君はさっきの話を聞いてどう思う?」


 ヴァイス君達がギルドを出るのを確認して、ギルド長が私に声をかけた。私は潜んでいた天井裏から応接間へと降りる。


「アレックス殿のハンコがあるならいいんじゃないですかねぇ、それにしてもまさか竜殺しの家系が出てくるとは……」

「ああ、だがこれなら万が一失敗しても彼らに貸しを作ることができるからな。それで彼を張ってどうだった? まさか私たちとアレックス殿達までまとめて騙そうとしているわけではないだろう?」



 ギルド長のセリフに私は手を肩をすくめて答える。ヴァイス君を張っていたが、ドラゴンと話をしていた様子はないようだ。授業を受け、同級生とデートして、女湯を覗く。青春みたいでいいなぁと思う。ああ、でも異世界とかいっていたのは気になるがドラゴンを倒すために色々考えていたことは確かだ。作戦の精度はさておき信じてもいいのではないかと思う。



「まあ、なにやらやたらドラゴンを倒したがってましたね、あの年頃です。成り上がるチャンスだと思ったのかもしれませんね」

「ふむ、内通者の可能性がないならこの依頼は受けてしまってもいいか」



 私はギルド長のセリフに黙ってうなずく。様子をみていたかぎり怪しい様子はなかった。ああ、そういえば異世界と言えばマリーちゃんがまるで未来を知っているかのような人間が昔いたとか話していたな。冒険者達の間でも噂話や伝説として語り継がれている存在だ。中には実在した人物もいるので完全な眉つばではないのかもしれない。ならばもしかしたら彼はそういう人間なのかもしれない。ひょっとしたら本当に英雄の誕生に立ち会えるかも、などとおもうのであった。






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