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男子会

 エレナとのデート? が終えた俺は彼女を女子寮に送って、ようやく自分の部屋に帰宅した。彼女のおかげでだいぶ気が楽になったと思う。今日はゆっくり休んでハロルドやティア、リチャードにも協力を仰いでみようと思う。

 部屋には戻ったが、ハロルドもまだ帰ってきていないようだ。ティアとイチャイチャしているのかもしれないな。などと思っていると、部屋の扉がノックされはしたものの、二つの人影が部屋に侵入してきた。



「おお、帰っていたか、よかった。せっかくの差し入れが無駄になるところだったからな」

「まあ、帰ってこなかったなら、エレナとうまくいったってことだから、それはそれでよかったんだけどねぇ……でもその顔をみる限り、少しはマシになったみたいだねぇ」

「ああ、心配させたみたいだな。でも、もう大丈夫だ。ありがとう……ん? なんでエレナと出掛けて行った事を知っているんだ?」

「おいおい、正装で外出しておいて目立たないはずがないだろうが。しかも、二人で夜の街にだぞ……此れは何かあるなと噂になっていたぞ」

「まあ、黙って座ってるといい。今お茶を入れるからね」



 そう言って、ハロルドがキッチンで紅茶を入れ始め、リチャードはテーブルにケーキを並べ始めた。え、何なのコイツら? 男子会でも始める気なのか?



「なあ、一体何がはじまるんだ? 俺は寝不足だから早く寝たいんだが……」

「まあ、いいから食ってみるといい、きっと驚くぞ」

「お茶もリラックス効果があるのを選んでいるからねぇ」



 リチャードはなぜか得意気にお菓子を差し出してきたので、抗わずに口をつけた。口の中にかすかな甘みが広がる。ああ、懐かしい味だ……この世界の貴族は貴重な砂糖を使えば使うほど美味いと思っているせいか、全体的に甘ったるいのだ。他の転生者のおかげでなのか、都会や、平民も使うようなカフェならともかく、俺の家のような地方貴族ではまだまだその風潮が強い。甘すぎるお菓子に難色を示していた俺に、セバスが気を使って作ってくれたのがこの味である。



「ふはははは、驚いたか!? 貴様の実家に問い合わせて我が家のシェフに作らせたのだ。やはり故郷の味というのは心が安らぐからな」

「ありがとう……」

「うわぁ……なんか素直な貴様はキモいな」



 何なんだよコイツら、人がせっかく素直に感謝しているというのに。でもエレナの言う通りなんだな。おれは思った以上に皆に心配させていたらしい。俺は故郷のお菓子を食べながら思う。こいつらならエレナと同様に俺のいう事を信じてくれるだろう。



「で、エレナとはやったのか?」

「ぶはぁっ、何言ってんだよ、お前。頭おかしいんじゃねーのか」



 俺の口の中が暴発した。こいつ何言ってんだ。くそが、俺の感動を返せよ。そもそも俺達はそういう関係ではない。いや、ちょっといい雰囲気になったかなとは思うが、とりあえず今はドラゴンを倒さなければいけない。



「その様子だとまだのようだな。丁度良かった。人の三大欲求は食欲、睡眠欲、そして性欲だという。今、貴様は食欲は満たされただろう、睡眠欲は後で存分に満たすがいい!! ついに完成したのだ。世界を変える新たな魔法がな!! いくぞ、氷よ!!」

「風よ!!」



 え、何言ってんだこいつ? てか室内で魔法を使うなよ。先生にばれたら反省文書かされるぞ。そう思っていたのだが、俺は目の前の光景に目を疑った。ハロルドの姿が消えたのだ。



「これは僕の風とリチャードの氷によって大気の気温を調整し、人為的に蜃気楼のようなものを生み出したのさ。そうだね。『幻影ミラージュ』とでも名付けようかなぁ」

「幸運にも今日は上級生の連中が夜戦訓練でな。ちょうど帰ってきたところだ。くたくたな体をリフレッシュして、汚れを落とすには何をすると思う」

「風呂か……」



 俺はごくりと唾を飲み込んだ。こいつらクソすぎるな。上級生の裸を覗きにいくつもりかよ。でも……誰かが止めなきゃいけないんだ。そう……誰かが……この計画を知っていて、且つ、今この場にいる人間が……



「女子には絶対ばれないようにな。エリザベスにばれたら口を聞いてもらえなくなるんだ」

「お前らそんなことは許さないぞー、俺が絶対止めてやる」

「果てしなく棒読みだねぇ……」



 俺はこいつらの凶行を止めるためリチャード達についていった。そう、あくまで止めるためだ。その時たまたま上級生の裸がみえても事故だろう。こんな事を考える余裕ができたのはエレナのおかげだろうか、まあそんなこと言ったらぶっ飛ばされそうだけど。





 大浴場、なぜこんなものがあるかといえば、おそらく他の転生者の影響が理由だろうなとは思う。ちなみに大浴場は毎日開かれているというわけではなく、大体月に3回くらいである。まあ、魔法でお湯を温めたりコストも結構かかるからな。普段は男子寮や女子寮でそれぞれがお湯で体を洗うくらいである。まあ、そんなことは今はどうでもいいのだ。



「じゃあいくぞ。氷よ」

「風よ」

「おお、すげえ!!」



 自分の姿が消えたのを見て俺は興奮のあまり俺は声をあげてしまった。え、なにこれ、本当にすごいんだけど……てかハロルドのやつ盗聴魔法の次は覗き見魔法も使えるのかよ、すげーな。犯罪魔法のバーゲンセールじゃん。



「ヴァイス、声や気配は消えないし、強い衝撃をかけると効果が消えるから気を付けてね。あとこの状態を維持するのに集中してるから他の魔法は使えないんだよね……」



 十分すごいと思うがまあいい。一通り注意事項を聞いた俺達は楽園へと向かう。



「くっそ、思ったより遅くなってしまったな。もう全然人がいないではないか。ヴァイスのせいだ。死ね」

「まあ、ヴァイスが帰ってくるのが遅かったからねぇ」

「お前ら俺を慰めにきたんだよな、傷つけにきたんじゃないよな……」



 姿を隠し大浴場に行ったが、残念なことにすでに人がいなかった。上級生たちも訓練で疲れたのかさっさとお風呂をすませてしまったのかもしれない。どうでもいいが服は邪魔なので俺達も脱いだのだがむっちゃ寒い。浴槽に入ったら魔法が解けるからお風呂にも入ることはできない……こんな時間に俺はなにやっているんだろう……あほらしくなったので帰ろうとしたら脱衣所の方に足音と話し声が聞こえた。あっぶねー、もうちょいで、はちあわせる所だったぜ。



「エレナも今日は帰ってこなければよかったのに」

「何を言ってるんですか!! 無断外泊なんてしたら怒られますし、ヴァイスとはまだそんな関係ではありません」

「へぇー、まだね……てか結構着痩せするタイプなのね」

「やめてください。何を触ろうとしてるんですか」



本当に何を触ろうとしてるんでしょうね? 聞こえてきた声に俺達は思わず動きを止めた。やっべえ、無茶苦茶聞いたことある声だよ、てかさっきまでデートしてたよ。エレナも帰宅が遅かったから一息ついてからお風呂って感じなのだろう。

 俺達は顔を見合わせて動きを止める。いや、お互いの姿は見えないんだけどな。声からして、エレナとメリルだろう。でもこのままではエレナの裸がみんなに見られてしまうのか……それは嫌だ……すごい嫌だ。俺の中で何かがもやもやする。



「すまない、リチャードかハロルド……」

「は? ぬおおおおおお」



 俺は隣にいたやつを湯船に放り投げた。気配はあるから大体場所はわかるのだ。バッシャーンという音と共に魔法が解けて湯船にリチャードが浮かぶ。



「何の音かしら……ってきゃーーー」

「うおおおお、これは違うんだ、いや違わないが……ヴァイス、貴様ぶっ殺してやるからな!!」



 扉を開けた着替え途中のメリルと全裸で湯船に入っているリチャードの視線が合った。よし、いまのうちに逃げ出そう。一瞬間が空いて大浴場にメリルの悲鳴が響き渡った。



「リチャード、いいやつだったな……」

「そのいいやつを君が殺したんだけどねぇ……」



 ハロルドと俺は今のうちに風呂場を脱出しようと、脱衣所のメリルの横を足音を残して駆け抜け扉を出た。そこには着替え途中のエレナもいるわけで……



「ハロルド……」

「僕は見ない、ティアに誓って見ないから地獄へ引き摺り込まないでくれ」



 流石親友である。俺の言いたいことが伝わったようだ。俺達はこの地獄から逃げ出すために急いで脱衣所から脱出を図る。その時つい本当に出来心でエレナのほうをみてしまった。デートから帰って着替えたのだろう。ドレスからネグリジェへと様相を替えている。脱ぎかけのためか胸元が乱れているのが艶めかしい。あれ、なんかこっちをみてほほ笑んだ気がした。目は全然笑ってないけど。



「氷よ、覗き魔を拘束せよ」

「うおおおお」

「風よ」



 エレナを中心として波紋上に氷が広がり俺の足に氷がまとわりついた。え、なんなのこれ? こんな魔法知らねーぞ。!! 設置型の魔法かよ!! ハロルドはいつの間にか浮いて回避してやがる。風魔法って便利過ぎない?



「どうせ、ヴァイスかハロルドあたりかと思いますが、姿を現さないと氷像にしますよ」



 彼女の言葉に反応するかのように魔法が解けた。ナイスだ、ハロルド。このままだったら殺されてたぜ。ついでに助けてくれない? 俺の願いもむなしく出口の扉が開いて何者かが出て行った。くっそ置いていきやがったな、アイツ。



「元気を出してとはいいましたが、こんな風に元気を出せとは言ってませんよ……」

「いや、これには深い事情があるんだ」

「興味ないですね。ヴァイス……何か言い残すことは?」

「その……結構着痩せするタイプなんだな」

「死ね」



 彼女にしては珍しく詠唱が無い状態で魔法が襲ってきた。結局無事逃げ切ったのは俺達をおいていったハロルドだけだった。

 結局俺達はパンツ一つの正座状態で下半身だけ氷漬けにさせられ、女子寮の廊下に『私たちはお風呂を覗きました』と書かれた看板を首にかけられて放置された。リチャードは延々と文句を言ってくるし、通りかかる女子には汚いものを見るような目で睨まれてさんざんである。まあ、エレナとこいつらのおかげで少しは気が楽になったからいいのだろう……いや、よくねーよ。俺とリチャードの女子の評判は底辺に落ちたのであった。



シリアスが続いたのであほっぽい話を書きたくなってしまいました。次回からまたシリアスになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なんだかんだ主人公を慰めようとしてくれたんだな...多分 完成した魔法は最悪だったけどまぁでもうんいい奴らだったよ(死んだ風に言うなw)安らかに眠れ... [気になる点] 好きって気持ち…
2019/12/29 08:56 名無しのハテナ
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