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葛藤

「それではドラゴンは我々冒険者ギルドが倒す事になったら極力協力を頼むよ」

「わかりました。作戦決行の際は私たちも協力いたします」



 冒険者ギルドにて俺とアンディさんは事情を聞かれていた。アンディさんと俺の話を聞いてドラゴンの脅威度をはかり街の騎士団にも協力を求めるか、冒険者たちだけで片をつけるかを協議するそうだ。一般的に街の中は騎士団、街の外は冒険者、例外としてワイバーンの巣はリチャードの家の騎士団の縄張りとなっている。そんなんいいから、協力して倒せよと思うが、色々しがらみがあるらしい。

 俺は転生者の話は触れずに、たまたまドラゴンの隙をついて逃げられたと説明した。知能があるとは知られているが、ドラゴンの知能がどのくらい高いかまでは知られていないし、真実を話しても信じてもらえるとは思えないしな。

 長時間の拘束の後、俺はようやく冒険者ギルドをあとにする。




「ヴァイス、大丈夫でしたか?」



 森から脱出して以来、冒険者ギルドに拘束されて自由がなかったのだが、ようやく解放された俺をむかえてくれたのは、駆け寄ってきたエレナだ。後ろにはハロルドとティアもいて、たった半日しか離れていなかったのにずいぶん長くかんじるものだ。三人の顔をみて安心する俺がいた。



「ああ、なんとかな……」

「よかったです、本当に心配したんですよ。私をかばってドラゴンにさらわれて……死んでたらどうしようって……」



 涙目でほほえむエレナをみて俺はどうしてもドラゴンを思い出してしまう。あいつは彼女を喰わせろと言いやがった。こんなにも俺の心配をしてくれている彼女を、今まで俺とともに冒険をしていた彼女をだ。俺にはもう彼女がゲームの世界の住人とは思えない。だがだからといって誰かを犠牲にできるのか? エレナ達と同様にこの世界で生きている誰かを俺は生贄にしなければいけないのか?



「ヴァイス? どうしたんですか、難しい顔をして……」

「いや、なんでもないよ。心配させたな」



 俺はエレナを安心させるように微笑んだ。明日は学校だ、疲労もやばい感じだし、早く帰って寝よう、寝れば何かいい考えも浮かぶかもしれない。

 エレナが俺をみて何やら心配そうな顔でこちらを見つめているのに気づく。彼女にドラゴンの事を話すか? いや、それはまずいだろう。以前話を聞いてくれると言っていたし、彼女に話せば俺は気が楽になるかもしれないが、彼女に負担をかけてしまう。話すならばせめて何らかの解決策が出てからだ。









「ぐおっ」

「おっ、入っただと?」



 鈍い音と共に俺の手に激痛が走る。剣を振ったリチャードがきょとんとした顔をしてやがる。昨日はろくに眠れなかったからかしくじったようだ。今は授業でパーティーを組んでの模擬戦中だ。くっそ、防具に守られた手首だったので致命傷扱いにはならないが、あと一撃を食らったら戦力外で離脱になってしまう。



「ふははははは、みろ、エリザベス!! ついにヴァイスを倒したぞ、ドラゴンも倒しヴァイスも倒した!! そろそろ私の求愛をうけてくれてもいいのではないだろうか?」

「うるさいのですわ、今は授業中ですのよ、リチャード前!!」



 俺をかばうかのように一人の影が現れる。影が来た方をみると、すでに担当していた相手を氷漬けにしているようだ。



「氷の女王の息吹よ、すべてを凍りつくせ」

「え、ちょっと……いつもより破壊力たかいぃぃぃぃぃ!!  というかエレナ顔がこわいぞぉぉぉぉ」



 その言葉を最後にリチャードは情けない顔をしたまま氷漬けになった。まったく相変わらず俺が苦戦したリチャードを瞬殺かよ、強すぎない?



「ありがとう、助かった」

「どうしたんですか? 昨日からおかしいですよ。 その……心配事があるならいってください。私達は……私はそんなに頼りないですか?」



 いつものようにお礼を言ったのだがエレナはなぜか不機嫌そうな顔をした。俺だって彼女に話して楽になりたい。だがそれは彼女にも誰かを生贄にしないといけないという、罪悪感を植え付けるだけになってしまうだろう。解決策のない以上話すわけにはいかないのだ。



「え、いや、別に心配事なんてないぞ……その、足をひっぱってごめん」

「もういいです、授業はまだ終わってませんよ、指示をください」



 俺は気を取り直して授業に専念する。結果ハロルドとティアのコンビがエリザベスを圧倒し、メリルをエレナが仕留めうちのパーティーの勝利だった。クラスで一位が俺たちで二位がリチャード達なんだが、本来は指揮をとるはずのリチャードが、俺にだけは対抗意識があるせいか前衛に出てくるから、ウチの勝率がかなり高いんだよな。







「ヴァイス、大丈夫か?」

「ん、右手か? 薬草巻いたから大丈夫だぞ」



 授業が終わり着替えていると、リチャードが心配そうに声をかけてきた。俺は剣が当たった手首を振りながら、ちゃんと動く事をアピールしながら答えた。むしろお前のが平気かよ、エレナに凍り漬けにされていたけど。



「そうではない、授業中、心あらずだったろう? そうでなくては私が貴様に真っ向からせめて勝てるはずがないからな」

「お前自分で言ってて悲しくないか?」

「ふっ、ライバルがつよいのは良い事だからな。まあ、貴様には借りがある。何かあったら言うといい、金と権力ならなんとかなるぞ。ただ、エレナと何かあったときは……他をあたってくれ」

「心配しなくても、お前に恋愛相談はしねーよ。でもありがとう」



 俺の言葉に満足したかのようにリチャードは去っていった。あいつにいわれるって言う事は、俺はよっぽどひどい顔をしていたらしい。


 






「あれ、エレナは?」


 リチャードと話していたために少し遅れて食堂に向かうと、ハロルドとティアが仲良く食事をしていた。いつもは四人でランチをとるのだがエレナがいない事に気づく。



「うーん、なんか用事あるんだってさ」

「あんた何か悩み事あるならいいなさいよ、ドラゴンにさらわれてから様子がおかし……んん!!」

「だからさっきヴァイスが話すまでそっとしとこうって言ったじゃないかぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 ティアの口をあわててハロルドが必死に押さえつけていた。俺はいつものやりとりに少し安心感を覚えた。



「心配させて悪い……でも、今は話せないんだ……」

「君はため込む癖があるからねぇ、まあ、耐えられなくなる前に言うんだよ、話をするだけでも楽にはなるからさ」

「そうよ、今のあんた目だけでなく顔もゾンビみたいよ。エレナもすっごい心配してたんだから」



 そうしていつものように食事を始める。まったく味のしなかった朝ごはんと違い、ランチは美味しかった。みんなに心配してもらえるのは嬉しい事だが話すわけにはいかない。これは俺の……転生者同士の問題なのだ。とりあえず夜になったら同じ転生者であるジェイス先生に相談してみよう。



 結局エレナとリチャード、ハロルド、ティアだけでなく何人かのクラスメイトにも心配されてしまった。俺はどれだけひどい顔をしているのだろう? トイレで鏡をみると確かに疲れきった顔の俺がいた。昨日も悩んでいてちゃんと寝れなかったこともあるだろう。いつもより死んだ目をしている自分をみて『デットマン』などと呼ばれている事を思い出して苦笑した。

 午後の授業も終わり、ティアとデートという名の冒険をしに行くハロルドと別れた俺は、自分の部屋に戻ることにした。すると扉の前にエレナがいるのに気づいた。いつもの制服ではなく、上品なワンピースのようなドレスを着ている。なんかパーティーでもあるのだろうか?



「どうしたんだ、そんなお洒落をしてデートでも行くのか?」

「ええ、デートのお誘いに来ました。ヴァイスよかったらこの後デートしてくれませんか? 私の気分転換に付き合ってください」



 え、なんだって? 俺はいきなりの誘いに困惑をする。ゲームでもこんな積極的ではなかったはずだが何があったんだ?







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時間は少しさかのぼりヴァイスが冒険者ギルドを出た直後の話。



「アンディ、それで彼の情報は信頼できるのかな?」

「うーん、どうでしょうね? 実際ドラゴンと遭遇した身からしたら、彼が単体で出し抜ける相手だとは思えないんですよねぇ」


 私はギルド長に苦笑しながら答えた。感情で言えばあの少年を信じたいが、あまりにも不自然な事が多すぎる。彼はドラゴンの元から逃げ出してきた言っていたが、あのドラゴンが獲物を逃がすような真似をするようには思えないのだ。



「力は中級ドラゴン並みだが、知能はかなり高いか……中々厄介なやつだな。中級ドラゴン程度に、騎士団の救援を求めれば我ら冒険者ギルドの発言権は下がるが、放置して街に被害が出てもまずい……ちなみにあの少年が生き延びた理由はどう推測する?」

「そうですね、考えられるのは二つ、一つ目は、彼がドラゴンを何らかの方法で使役している可能性、そして二つ目は、ドラゴンに脅迫され何らかの取引を行った可能性ですね、定期的に生贄をよこす代わりに、命は見逃してやるとかそんなところでしょう」



 自分で言っていておそらく二つ目の可能性が高いと思う。彼がドラゴンを支配しているならば自分を助ける必要はないからだ。

 でもなぁ。彼を疑いたくはないんだよねぇ……彼と少しパーティを組んだのだが、少し情がうつってしまったようだ。自分を見下していると思っていた貴族に名前を呼ばれた。敬意を示された。ただ、その程度の事だというのに我ながら甘いとも思う。



「私が彼を監視してみましょう。それで怪しい時は仕留めます」

「おお、そうか。すまないが頼んだぞ」



 そうして私は彼の監視をすることにした。あんまり気持ちのいい仕事ではないが仕方ないだろう。自分の気持ちに整理をつけたかったというのもある。ほとんどあり得ないが、彼が本当に運よく逃げれたって話ならいいのになぁと思う。






思ったよりアンディさんが重要キャラになってびっくりしています。

次の話はエレナ視点で展開します。よろしくお願いします。



ラブコメも書いているのででこちらも読んでくださると嬉しいです。

『厨二時代の可愛い女友達と高二になって再会したら亡き者にしようとしてきたので付き合うことにした』


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