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4.ティアという少女

 ざわざわと貴族たちが笑顔を浮かべながら談笑している。俺たちもまたその例に漏れずハロルドの親父さんにつれられぶどうジュースを片手に様々な貴族と挨拶を交わしていた。



ティア……

ハロルドの情報によると趣味は恋愛小説を読む、好きな食べ物はシフォンケーキ、人見知りであり、普段はパーティなどにでないが今回は彼女の誕生パーティーということもあり欠席できなかったのではないかということだ。


 俺の知ってるティアと違う……どちらかというと敵に襲われたら「くっ殺せ!!」とかいいそうな性格だったし恋愛小説より冒険譚を好み、貴族のくせにケーキより冒険者が好みそうな野性味のある料理を好むキャラだったはずだ…… 顔も確認したがゲームより幼かったが本人で間違いはなさそうである。


 どういうことだ……ゲームと性格がちがうのか? もしくはゲームの世界ではなくゲームに近い世界に俺は転生してしまったということなのだろうか……


「オーキス殿久しぶりです。おお、こちらがティア様ですね、お可愛い。将来が楽しみですな」

「いやいや、お世辞がうまいですな」


 ようやく俺たちの順番が回ってきたようだ。ハロルドの親父さんとオーキス様が挨拶をかわす。


「こちらが私の息子のハロルドとその親友のヴァイス君です。ティア様とは同い年ということで話が合うかとおもいましてつれてまいりました」

「ヴァイスと申します。こういう場は不慣れですがよろしくお願いします」

「はじめまして、ティア様。たった今ご紹介に預かりましたハロルドです。ティア様に会えるのを楽しみにしていて何日も眠れませんでした。お会いできて光栄です」


 あれ? ハロルドなんかキャラ違くない? ってかよくこんなお世辞がぽんぽん出るもんだ。

 

 しかし効果はいまいちだったようでティアは愛想笑いを浮かべるだけだ。しかしかわいい。ゲームのときは凛々しい印象が強かったが、今はおしとやかに微笑んでるせいか本当にお嬢様のようだ。


「はじめまして、ティアと申します。私もこういう所は不慣れなのでおかしなことがあったらいってくださいね」


 そういって彼女は微笑む、え? 今俺に対して微笑んだよね? は?かわいい。金髪にセミロングな髪形といい、つり目だけどフリルのついたロングスカートがおしとやかな雰囲気を醸し出している。

 

 しかし、ゲームと違いすぎるのが気になる……俺は一つの可能性に思い当たり、かまをかけることにした。


「ティア様は本が好きと聞いたのですがどのような本がお好きなんでしょうか?」

「そうですね、恋愛小説などを……」

「ああ、私も最近読みましたよ『エミレーリオの冒険』など面白いですよね」


「そうそう、エミレーリオがドラゴンと戦ったときどうなるか感動しましたよね!!」

「さすがティア様お詳しい。あれ?でもあれは確か恋愛ではなかったような……」

「あ……」

「ああ、それは私の愛読書でしてね、ティアが勝手に読んだみたいですね。今度書斎に入るときはちゃんというんだよ」


 ハロルドの父と談笑していたオーキス様がなにやらてんぱっているティアさんに助け舟を出す。


 あー、でもこれやっぱりゲームと同じ性格では? ゲームでは恋愛小説より冒険譚を好んでいたので話をふってみたのだが食いついてきた。


「お誕生日ということでティア様にプレゼントをお持ちしたんです。もしよろしければうけとっていただけませんか?」

 ちょっと微妙な雰囲気になったのを察したのか、ハロルドが話題をすり替える。ついでに俺の足を踏みやがった。余計なことをするなってことだろう。


「あら、なにかしら。気になります」


 そういってほほ笑むティアさんだったが心なしがぎこちない。

 俺たちは用意してきたプレゼントを同時に差し出した。 


「こちら私の家の者が作成したシフォンケーキです。わが家の自慢の一品です」

「こちらはうちのセバスが作った燻製肉になります。どうぞ」


 ハロルドがまじかよって顔で俺をみている。まあ、だよね。ふつう燻製肉とかお嬢様には渡さないよな。

 

 しかし、ティアさんの視線は好物のはずのシフォンケーキではなく燻製肉にくぎ付けである。しかも表情は驚きというより、早く食べてみたいって顔だ。

 やはりティアはゲームのティアと同じだ。なんらかの理由で好みなどを偽っているのだろう。


「ティア、プレゼントをもらったのだからお礼を言いなさい」

「あ、ありがとうございます、おふたりとも嬉しいです」


 また、オーキス様が助け舟を出す。ティアさんはなぜかこちらを凝視している。


「ティアと話をしてくれてありがとう、二人ともこれからも仲良くしてくれると嬉しい」 


 オーキス様のお礼で交流は終了となった。


「あ、おまちになってください。」


 俺たちが去ろうとするとティアさんが俺の手を握りなにか手紙を渡してきた。え? もしかしてラブレター?



「くっそ、なんで君ばかり盛り上がるんだ!! しかも事前の情報と全然ちがうじゃないか!」


 俺は帰りの馬車でハロルドの愚痴をひたすら聞いていた。馬車には俺たちしかいない。ハロルドの父は挨拶があるがもう夜も遅いということで俺たちだけで帰ることになったのだ。


「まあ。あれだな。人生経験の違いってやつだな」


本当はゲームの情報なんだけどね。しかしチートスキルこそないもののこの知識はかなり使えるのではないだろうか?


「しかもラブレターまでもらうなんて!! なんて書いてあるんだ見せてくれよ」

「いやー、もてる男はつらいね」


 このまま、ゲームの知識を使って行動すれば未来もかえられるのではないだろうか? 

 悔しそうなハロルドに笑いかけながら俺は手紙をみて絶句した


 手紙にはこう書いてあったのだ……『秘密を暴く奴は許さない、殺す』と……

 え? まって? なんで? いやまじで?


 「どうしたんだヴァイス、熱烈なアプローチでも書いてあったのかい?」


 驚きと恐怖のあまり落とした手紙を拾ったハロルドも絶句していた。


「なあ……君はなにをしたんだい……」


 そんなん俺はききてえよ……

「なんでだー!!」


 こうして俺のパーティーは大失敗に終わったのだ。

 

 後日オーキス様から家に招待する旨の手紙を受け取り俺は本当に死を確信した。俺はどこで選択肢をまちがえたのだろう


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