かませ貴族の恋愛譚 1
話し合いの後、俺たちは朝一の馬車に乗り、実家へと向かった。学校の方にはジェイスさんがいなかったので他の教師に休暇届は渡してあるので問題はない。
「みんなすまないねぇ、僕のわがままに付き合ってもらって」
「気にするなよ、俺が焚きつけたようなものだしな」
「それにティアだってこんな事望んでいないと思います。だってこの前まであんなに……いえなんでもありません」
後半なにやらエレナがごにょごにょと誤魔化した。女子会というやつだろうか。俺の話題とかも出てないかなぁ。そう思ってエレナをみつめたが彼女はごまかすかのような笑みを浮かべるだけだった。
昨日ハロルドは俺たちにこういったのだ。『僕はティアに話を聞きたい。確かに僕ら貴族にとって結婚は恋愛だけじゃなく政略結婚もあるっていうのはわかっているけど、それじゃあ納得いかないんだ。ティアと会うためにオーキス様と敵対するかもしれない。それでも僕に力を貸してくれないか?』と、親友が頭を下げたのだ。ならばできる限りの力を貸してやるものだろう。それに親しい人間に頼られるのは嬉しいものだ。
馬車を乗り継ぎオーキス様の屋敷へとついた。目上の貴族にアポイントメントも無しで面会を求めたのだ。てっきり門前払いをされるかと思ったが、意外なほどあっさりと応接間へと通された。オーキス様実は暇なのだろうか?
「普通に通されたねぇ……」
「ああ、もっと揉めると思ったんだけどな……それよりだ、ちゃんとティアの事を聞くんだぞ」
「私たちが学校休んでまでここに来るっていう時点である程度目的はばれているとは思いますし、それがいいですね」
俺の言葉にエレナも同意してくれた。オーキス様に頼んでなんとかティアに話を聞かせてもらわないとハロルドは納得できないのだろう。
「準備ができたそうです。こちらへどうぞ」
メイドの案内でオーキス様の執務室へと向かった。ノックをすると「どうぞ」という声が聞こえメイドが扉を開けた。ごくりと生唾を飲む音が聞こえたが俺かハロルドどちらだったろうか?
「やあ、久しぶりだねー、三人とも。特にエレナ嬢は何年ぶりだろう。ティアとは同室らしいね。いつも迷惑をかけているとは思うがかまってやってほしいな。さあさあ、三人とも座りたまえ」
オーキス様の言葉に従い俺たちは座った。久しぶりにお会いしたが相変わらず穏やかそうな笑顔だ。だからこそ厄介である。この人はティアの婚約の話を俺達には黙っていたのだ。うすうすハロルドとティアの関係も知っているのだろう。
「それで、学校を休んでまでここにくるとはどうしたのかな? よっぽど急ぎの用事でもあるのだろうかな」
「ええ、いきなり本題で申し訳がありませんがティアさんが婚約したというのは本当でしょうか?」
相変わらず余裕のある表情のオーキス様とは対照的に緊張した面持ちでハロルドは尋ねた。しかしストレートに言ったな。答えを聞くのは怖いが聞かなければいけないことだ。代わってやりたいがここはハロルドが頑張らねばいけないのだろう。
「うん、そうだよ、話が回るのが早いね、正式に決まったら君たちもお披露目パーティーに招待するからよろしくね」
「あの……昔の話ですがティアには恋愛は自由にさせるっておっしゃってませんでしたっけ?」
一切悪びれることのないオーキス様の言葉に固まったハロルドの代わりに俺は会話を繋いだ。ついでに机の下でハロルドの足を踏んで気合をいれてやった。ハロルドが恨めしそうに俺をみるが気にしない。
「そう思ったんだけど学校でも特に婚約者候補が決まっていないみたいだったからね。いい縁談があったら受けようって思って募集してるんだよ」
あのツンデレ娘め!! お前がオーキス様にハロルドといい感じですとか言っとけば今回の事は防げたんじゃねえか……いや、冷静に考えたら親に恋愛事情とか赤裸々に話したりしないな。特にティアはそういうの苦手そうだし。
「では僕も婚約者の候補に立候補させてもらってもよろしいでしょうか? 彼女とは自分で言うのも何ですがよい関係を築けていると思ってますし、幸せにできると思います」
ハロルドが意を決したように口を開いた。え? なんかかっこよくない? 公の場ではないといえ貴族の令嬢の親に田舎貴族が娘をくれというのだ。下手したら不敬罪になってもおかしくはない。さすがにオーキス様はそんなことはしないだろうが、とはいえハロルドの握られた手は緊張のためか震えていた。
「ほう……君がかい? 地方貴族の三男の君がどうティアを幸せにするのかな? それに君が本当にティアの事を好きかわからないなぁ、だって本当に好きなら告白するチャンスなんていくらでもあったんじゃないかな?」
「う……それは……その……」
「まあ言葉ではいくらでもいえるしね、残念ながらティアは君の事は特に何もいってなかったよ。そうだなあ……もしも、婚約者が決まる前にティアが君の事を言っていたら考えるよ、あ、ただしティアに会うのはだめだよ。口裏を合わせられたら本当の彼女の気持ちがわからないからね」
オーキス様はそういうと俺たちに帰宅を促した。取り付く島もないという感じだ。くっそ、ティアに会えればこんな話すぐ解決しそうなのに。
「ああ、ティアは離れの塔にいるからね、屋敷で偶然会うなんてないから無駄な期待はしないようにね」
わずかな期待も砕かれたな……俺たちは落胆しながら帰宅するのだった。
オーキス様の家から一番近いということで俺の家でみんなと作戦会議をすることにした。久々の実家だが懐かしんでいる余裕はない。
「ティアに会えないのがつらいですね……あの子は今回の件どう思っているんでしょうか?」
「どうだろう……実はハロルドには一切興味なく婚約者候補の事気に入っちゃったりして……」
「いや……そんなはずは……ないよねぇ……」
「ヴァイス!! 言っていいことと悪いことがあるでしょう。確かにハロルドはちょっと皮肉屋で人の事を魔物に例えたりして、デリカシーないですし、人としておかしいんじゃないかなって思う所もありますけどいい人なんですよ」
「うぐ……あ……」
ハロルドがまるで世界の終わりかのような顔をして呻く。軽い冗談だが威力は抜群だったようだ。そうだな、今は洒落にならないよな……でもエレナの方がひどいこといってない? 俺の事はどう思っているの? と聞こうと思ったが怖かったのでやめた。
一応ゲームの時もサブイベントでティアの婚約者と会うイベントはあったのだが、婚約者と会ったはいいもののティアが戦う所をみて腰を抜かして婚約破棄される、というコメディっぽいイベントだったのだ。実際ゲーム内のオーキス様はティアに少しでも恋愛に興味をもってもらうために婚約者を募集しただけなので、婚約自体は破棄になったが問題にならず報酬はもらえた。ゲーム終盤でも使える中々いい武器だったな。
今回無茶苦茶面倒なことになっているがこれは俺の行動の影響だろう。そもそもゲームではハロルドはここでは出てこないし、ティアとも交流はないしな。くっそ、最近ゲームの知識が役に立たなすぎる。
「まあ、話し合えないなら忍び込むしかないだろ」
「本気で言ってるのかい? ばれたら捕まってもおかしくないし、それこそ退学になる可能性もあるんだよ」
「じゃあ、お前はティアがよくわかんねー貴族と婚約してもいいのか?」
「う……それは……」
「でもこれって英雄譚みたいですよね、親に無理やり婚約させられた貴族の令嬢を、恋人が友人や冒険者の力を借りて助けにいく。ティアが好きそうな話です」
たしかにその通りだ。貴族の令嬢はそこらの男より強くて、助けに行くのは恋人未満友人以上の幼馴染だけどな。なんか話ができすぎてるよな。これってもしかして……
俺は使用人を呼ぶための鈴をならした。すると5秒もしないうちに扉がノックされセバスが顔をだした。え、こわ!! 早すぎない?
「なあ、セバスちょっと聞きたいんだけどオーキス様の屋敷の見取り図とかあったりする?」
「何に使うのでしょうか? 現物はさすがにありませんが、何回かお邪魔したことあるので書けますよ」
「ありがとう、じゃあ今晩までに頼めるかな。特に離れの塔について詳しく書いてもらえると嬉しいかな」
「わかりました」
最後にセバスが俺をみてニヤリと笑ったのをみて確信した。面倒なイベントに巻き込まれたな。ここから先はハロルドの頑張り次第だろう。俺はあいつを応援してやることくらいしか無さそうだができる限り力になってやろう。
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いつも誤字脱字報告ありがとうございます。最近誤字脱字が多かったのでワードによる添削をやってみました。
あとは文章力をつけたいですね……




