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交渉

 翌日俺とエレナそして事情を話してついてきてもらったリチャードと共にウェルダー商会へと訪問した。ちなみにティアとハロルドは冒険者ギルドの方でちょっとした仕事をしてもらっている。孤児院のものというとあっさりと応接間に通された。

 しばらく待つと初老の温厚そうな男性が入室してきた。これが今回の黒幕か。-+



「はじめまして、私はこの商会を経営しているウェルダーと申します。主に薬草を扱っております。失礼ですがあなたがたは孤児ではないようですが孤児院とはどんな関係なのでしょうか?」

「私たちは魔法学校の生徒です。孤児院の子達と個人的に懇意にしてましてね、なにやら最近不審者がいるというので警備をしていたのですよ」

「ああ、なるほど話は聞いたことがありますね、孤児院に出入りしている貴族の少年少女がいると、確かエレナさんとティアさんあと二人の少年ですね。あなたがそのうちの一人ですしょうか」

「ええ、ヴァイスと申します。こちらがそのエレナです、もう一人は後ほど紹介いたしますね」



 こいつこの短期間である程度調べたのか? いや、元々孤児院に出入りする人間はある程度把握していたのかもしれない。俺とハロルドの事を特定できていないのは地方貴族だから情報が少ないからか……

 とはいえここまではあらかたシミュレート通りだ。ここからが本番だ。ゲームだと選択肢がでてくるが現実はそうではないし、解決方法も違うのだから。



「なるほど……貴族の方々は偉いですね、下々の面倒までみるとは……ですがあまり我々をいじめないでほしい。我々も生きるのに必死なのですよ」



 そういってウェルダーはエレナに視線を向けた。ああ、これはエレナの親が商人ギルドに口を出したのがばれているな。さすが商人といったところかさっきから情報収集能力が高い。



「だからといって、孤児院の妨害に火をつけるなんて許されると思いますか!!」

「はてなんのことでしょうか? ああそういえば私の雇ったものが孤児院に忍び込んだというのは聞きました。…確かに孤児院で薬草を売っていてなんとかしてほしいとはいいましたが、まさかあんなことを勝手にやるとは……」



 ウェルダーはエレナの言葉に肩をすくめた。あくまで自分は関係ないとしらを通すつもりのようだ。まあそうするよな。俺は今にも飛び掛りそうなエレナの手を押さえた。やべっ、思わず触っちゃったけどセクハラとかいわれないよね。



「孤児院の子から聞いたんですが、商売の邪魔をするなと警告されたようですが、そんな少量でも影響がうけるものでしょうか? 孤児院で栽培している薬草の量なんてたかがしれていると思うのですが……」

「そうですね、貴族の方にはわからないかもしれませんがこの商売は舐められたらいけないのですよ、勝手な商品のルートを一つ認めてしまってはほかの者も入ってこようとしますからね」

「なるほど……」



 面子の問題もあるってことかこの人の言うこともわからなくない、幸いにも孤児院にはまだけが人は出ていない。だからチャンスをあげてもいいかなと思う。こちらも貴族の力をつかったわけだしな。



「ならば孤児院の薬草を市場価格より少し安めにウェルダー商会で買い取ってもらう事は可能でしょうか? 不幸な行き違いもあったようですがこうして話し合ってわだかまりも少しはなくなったと思うのですが」



 俺の言葉にウェルダーは少し考えたそぶりをみせ俺とエレナ、リチャードをそれぞれを値踏みするようにみた。



「大変申し訳ないのですが今薬草は余っている状態でして……現状のルート以外は不要なんですよ……」



 俺の提案にウェルダーは申し訳なさそうに首を振った。交渉は決裂か。俺がもっと美味しい餌をもっていれば考慮したかもしれないが、放火を不問にするだけでは足りなかったらしい。こいつはチャンスを棒にふったな。欲をかかなければよかったのに。



「なるほど……ではしかたないですね。リチャード例の話をしてくれ。こっからお前の仕事だ。」

「うむ、ようやく私の出番だな。退屈すぎて眠そうだったぞ!!」

「リチャード……? まさか魔法学園の竜殺しのリチャード様ですか!」



 ウェルダーは驚いたように声をあげた。あれ、どうでもいいけど世間ではリチャードが竜殺しになってんの? 俺たちもがんばったんだけど。さっき俺の名前言ったときこの人ノーリアクションだったよな。やはり家が有名だと話題性もちがうんだろうなぁ……不公平すぎない?



「フハハハハ、やはり私は有名すぎるようだな。ヴァイスは私の子分みたいなものでな。泣きつかれて力を貸してやることにしたのだ。貴様に提案がある」

「はい、なんでしょうか?」



 尊大な態度のリチャードに媚びへつらうような態度でウェルダーは返事をした。え? 貴族ってこんなに偉いのか? いや、この街に屋敷があるだけあってリチャードの家はこの街ではかなり権力をもっているのかもしれない。てかこれこいつに話進めさせたらあっさり解決したんじゃ……



「貴様ら商人の事だ。私の家で管理しているワイバーンの巣で異変が起きているのは知っているだろう?」

「はい、詳しいことは知りませんが噂は聞いています。最近急に武器を買い付けたという話が流れてきましたがワイバーンの巣の調査をされるのですか?」

「さすが話がはやいな、今度私の兄上の指揮で騎士たちが調査も兼ねてワイバーンロードという魔物を倒しに行くのだ。そこで提案だ、貴様の所から薬草を買い付けよう、そうだな……貴様のほうから部下を二人用意してもらい同行してもらう。そして薬草を使った分だけ相場の倍額で支払おうではないか……そのかわりわかるな。孤児院が薬草を購入するのを認めろ」

「なるほど……交換条件ですか……ですが歩合制となるとこちらが損する可能性も……いや、だが倍額……」



 ウェルダーは困惑した表情で唸った。歩合制だが倍額、負傷者が出れば儲けは出るが、負傷者が少なければ儲けは仕入れで赤字になる可能性があるのだ。リチャードのところの騎士の実力しだいでどれだけ売れるかが変わる。



「悩むのもわからんでもない、返事は明日まででいいぞ、それ以降まで時間がかかるならほかの商会に頼むことにする」

「わかりました……明日までには必ず返事をいたしましょう」



 交渉が終わり俺達はウェルダー商会をあとにして孤児院へと向かった。

「お前結構ガンガン交渉するんだな。ウェルダーのやつ俺のときと全然反応違ったぞ」

「ああ、私はどちらかというか文官になるように育てられていたからな、父に色々教育されていたのだ」



 リチャードの意外な面をみて俺は驚いた。こいつやっぱり騎士じゃなくて違う職業についたほうがいいじゃ……



「なんだこの幼女パラダイスは!!」

「エレナさん、ヴァイスお帰りなさい……ってこの人誰? 息荒いんだけど!! え、こわっ!!」



 孤児院の幼女たちを観てテンションをあげたリチャードに出向かしてくれたリオがどん引いた声をあげた。そういやこいつロリコンだったな……リチャードの評価が上がったばかりなのに急に落ちていくのを感じた。



「でも引き分けって感じで悔しいですね。リチャードの所の騎士がどれだけ強いか知りませんががワイバーン達やワイバーンロードに無傷で勝利は無理でしょうし……」

「ん? エレナ何をいってるんだ。ここからが本番だぞ。不思議なことにリチャードっていう馬鹿な次男が調査の前日に魔法学園の同級生たちを雇ってワイバーンの巣の調査を勝手に行くんだよ」

「え、それって約束違反じゃ……」

「いやいや、ウェルダーと話をしたのはあくまでアレックスさんと騎士達の調査に関してだぞ。いやーついてないよな。これが冒険者ギルドに依頼とかだったらウェルダーも気づくだろうけどリチャードが友達と遊びにいくだけだもんな」

「あなたっていうひとは……」


 エレナがあきれた声を出す。俺だって最初の交渉が上手くいくならこんなことをする気はなかったのだ。俺たちがあらかたワイバーンを倒しておけば負傷者もかなり減るだろう。そうすれば仕入れで赤字になるはず。それに今回はリチャードとウェルダーの話し合いの結果孤児院の商売は認めてもらったのだ。文句はあるまい



「ヴァイスかえったわよー、とりあえず冒険者ギルドにはワイバーンの巣はやばいって噂ながしといたわよ」

「僕らは実際ワイバーンの巣を経験してるし、ワイバーンの素材も持っていったからねぇ、信憑性はそれなりのはずだよ」


 冒険者ギルドからハロルドとティア達が帰ってきた。よしこれでいい。ワイバーンの巣がやばいって噂は広まったはず。少なくとも少しでも迷う要素はできたはずだ。

「で、ティアとのデートはどうだったんだ?」

「な、別に二人でギルドにいただけだよ!!」


 顔を真っ赤にしたハロルドをからかい暴走するリチャードをなんとかおさえつけて俺達は帰路についた。翌日リチャードから交渉成立という連絡がきた。ワイバーン狩りの始まりだ。


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ちょっとオチを変えたんで二話ほどつづきます。


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