正義の味方ウィンディーネ仮面
最近気づいたことがある。俺は食堂で一番安いランチを食しながら周りをみた。少し離れた席ではなんかリチャードとエリザベスが仲良さげにご飯を食べている。あいつ前まで俺とランチ食ってたくせに…… シオンと赤毛のメインヒロインも視界の隅で仲良さげにご飯を食べている。さすが主人公、もうあの子は攻略寸前だね!!
そう周りでカップルが増えてきたのである。いや、こいつら貴族だし、リチャードみたいに婚約者決まっているわけでもなければ魔法学校で結婚相手みつけるのがベストなんだけどね、別に嫉妬しているわけじゃないけどなんで俺には春がこないんだ? かませキャラだからか。一応大型ドラゴン倒したり活躍したんだけどな。
「ん?どうしたんだい、ゾンビみたいに死んだ目をして……あ、いつものことか」
「なんか元気なさそうだけど大丈夫? 私のお肉食べる?元気出るわよ」
すっごい名残惜しそうにティアが俺に肉を差し出してきた。いやそんな涙目になるくらいならいらないよ。え、俺そんなにやばい顔してたの?
「ヴァイスも悩み事ですか……よかったら相談に乗りますよ。あ、体調悪いならこれ飲みますか?」
そう言ってエレナが薬草ジュースを差し出してきた。あれ、これって間接キスじゃん。え、本当にいいの? でもこれ無茶苦茶苦いんだよな。一瞬悩んだが一口もらった、やっぱりまずい……
「そういうエレナも元気ないけど大丈夫か? 無茶苦茶眠そうだけど……」
「そういや、最近夜に外出したりしてるけどどこ行ってるの?」
「あははは、内職みたいなものですよ。孤児院の子たちのためにちょっと作業してるんですよ。それに睡眠不足は大丈夫です。これがありますから」
エレナは眠そうに目をこすりながら答えた。薬草ジュースを飲むにつれ彼女の眠そうな顔が徐々にいつも通りのものに戻っていく。すげえなこれ、エナジードリンクみたいなものだろうか? 俺もさっき飲んだけど変な副作用とかないよな。
本日の授業を終えて俺は自分の部屋でハロルドと雑談をしていたらドアがノックされた。こちらが開ける前に勝手に扉が開く。ノックの意味ないよな。
入ってきたのはティアだった。なにか楽しいことでもあったのか目を輝かせていた。
「ねえ、エレナが外出したのよ、いまなら間に合うから追いかけてみない? なんか楽しそうなことがおきそうな気がするのよね」
「君ねえ、シリアスな内容だったらどうするのさ……」
「いえ、私の勘だとあれは彼氏よ!! きっとこっそり夜にこっそり会ってるんだと思うわ」
エレナに彼氏……なんかもやもやするな。てか寝不足ってそういうことかよ!! 俺がワイバーンと戦っていたりしている間にあいつリア充になってたのか……なんだろうこの気持ちは……すっきりしない
「まあ、暇だしいってみるか」
「おやおや、いつになく乗り気だねぇ」
なにやらにやにやしているハロルドを無視して俺は外出準備を始めた。なんでこんなにもやもやするんだろう。
急いで外に出るとエレナの後ろ姿が見えた。あんまり近づきすぎてはばれるよな……俺が悩んでいるとハロルドと目があった。
「僕に任せて、風よ!!」
「え、なんだこれ、足音が消えた!!」
「風魔法の応用さ。すごいだろう?」
こいつどんどん器用になっていくなぁ。俺もそろそろこういう技術を手に入れなければいけないな。どうせ魔力少ないから火力要因としてはあんまり役にたたないしね。ハロルドに相談してみよう。今後の事を考えつつ俺たちは学園を抜け出すエレナの後をついていった。
エレナはどうやら孤児院のほうに向かっているようだった。夜ということもあり少し心配である。酔っ払いとかもいるし昼に比べると治安は悪くなるしな。
「うーん、やっぱりこれデートとかじゃないんじゃないかなぁ……だって孤児院に向かってるし……」
「わからないわよ、それに孤児院にだって男はいるじゃない」
「男って……確か10歳の少年とかだろ……リチャードじゃないんだからそんな年下に興味ないだろ……」
「え……リチャードってそういう趣味だったの……?」
「ああ……エリザベスもそんなかんじだねぇ……」
俺の言葉にハロルドとティアがドン引いた感じでうなずきあう。ごめんお前の知らんとこで株が下がってしまったようだ……ここにはいないあいつに俺はそっと謝った。
確かゲームではエレナにショタコン属性はなかったはず。変わっているところはせいぜい正義の味方に少し憧れているっていうくらいだ。あれ、なんかこういうイベントがあったはずだな。
「ねえ、あれって孤児院の関係者じゃないわよね……」
「どうみても違うだろ、むしろ孤児院から人をさらう系の人種だろ」
「さすがにいいすぎじゃないかなぁ」
エレナを追いかけている最中に俺たちは孤児院の裏手でたむろっているガラの悪い男二人組をみつけた。あー、やっぱりあのイベントが発生するんだな。
「ハロルド、魔法であいつらの会話を拾ってくれ」
「え、ハロルドそんなこともできるの? 私たち女子の話とか勝手に聞いてないわよね? もし聞いてたらどうなるかわかるわよね?」
「そ、そんなことするはずないじゃないか、ヴァイスもこの使い方は秘密にしようって約束したのに……風よ」
やべえ、この魔法は俺とリチャード、ハロルドだけの秘密だったんだ。あとで怒られるだろうがまあ、言ってしまったものは仕方ない。良い言い訳を考えてくれよな、ハロルド
『じゃあ、俺が火をつけるからお前らは周りに人がいないからみてろ、まあ薬草に火をつけるだけだ死人はでねえよ』
『わかりました!! これで金がもらえるなんて簡単な仕事ですね』
完全に黒じゃねえか!! 俺たちは顔をあわせうなずく。阻止しないとまずいな。せっかく孤児院の子たちががんばって育てた薬草である。燃やされてたまるかよ。
「僕らがとってきた薬草だねえ、ちゃんと栽培できたんだねぇ」
「そんなことよりあいつら燃やすとか言ってるわよ、許せないわ。血祭りにしてあげましょう」
「落ち着けよ、今行ってもしらをきられて下手すりゃ俺らが暴行で捕まるだけだろ」
俺たちはエレナの事は一旦置いておき目の前を男たちを監視した。こういうのは現行犯で退治が一番である。一人が孤児院に入っていくの確認して即座にティアが見張り役の男を襲撃する。
「なんだおま……」
腹パン一発。なにこれ強すぎ。泡をふいて気を失った男をみて絶対怒らせないようにしよう……俺とハロルドは二人で誓うのであった。倒れた男はハロルドに任せて俺とティアはもう一人の男を追いかけ孤児院の敷地へと入った。
「そこの男何をしているのですか!?」
孤児院の庭に積まれている薬草に火をつけようとしていた男を制止する声が響く。もちろん俺達ではない。
「誰だてめえ!!」
「ふっ、誰だと言われたら答えるしかありませんね。私の名は正義の味方ウィンディーネ仮面。この孤児院の守護者です!! 氷の蔓よ、愚かな咎人を捕えなさい!!」
そう言ったのはベネチアンマスクで顔を隠した少女だった。少女の手から氷の蔓が発生し男を拘束した。いやいや、正体隠すならもっとちゃんと隠せよ……詠唱同じだし、服装も魔法学校出た時と同じだよ……
「ねえ、ヴァイスあれって……」
「だろうな…」
これは黒歴史確定だろうなぁ……俺はなんだか頭が痛くなってきた。ゲームでもこのイベントみたときはやべえなぁって思ったけど現実で仲良くなった知り合いのこういうシーンをみるとなんとも言えない気持ちになるな……
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最近評価いただけたり、感想いただけることが増えてうれしいです。矛盾点などのご指摘大変勉強になるのでありがたいです。これからもよろしくお願いします。
突如現れたウィンディーネ仮面、正体が気になりますね。ヒントになりますが既に出てきた登場人物です。




