リチャードの試練
エリザベスは何を考えているのか? 俺の疑問を余所に俺たちはワイバーンの巣を進んでいく。
「ねえ、ハロルド、ワイバーンって何キラーベアーくらいなのかしら」
「もうその単位で行くんだねぇ……通常の冒険者なら中堅クラスなら戦えるかんじだから三キラーベアーかなぁ、でも僕らなら二キラーベアーくらいだと思うよ、なんでだと思う?」
「え……なんでかしら……私たちが大型ドラゴン倒したことあるかとか……」
「違いますわ……私たち貴族は平民とは違い魔法が使えるからですわ、ワイバーンは空を飛ぶから剣などは当たりにくいですが、魔法が使えれば空を飛んでいても当てやすいですもの」
「さすがエリザベス!! 略してさすエリだな、私のために調べてくれていたのか?」
「そんなわけないでしょう……寝言は寝てから言うのですわ」
なんだかんだ楽しそうに話しているみんなをみて俺も笑みがこぼれたが気を引き締めなければ……油断をしてはいけない。何を考えているんだエリザベス?
念のためにリチャードにも魔法の込められた巻物を一枚渡しておいた。これさえあれイレギュラーがあっても多少は安心できるだろう。
エリザベスとリチャードの関係性ははたからみても別に悪いようには思えなかった。基本的にリチャードがデートに誘ったり、話しかけたりしてエリザベスがあしらうという感じだったが、本気で嫌だったらパーティーをずっと組むことはないだろうし、なんだかんだ一緒にいるのだ。エリザベスもまんざらではなのだとおもっていたのだが……
「そろそろだ……気を引き締めるぞ」
リチャードの台詞にだれかがごくりとつばを飲み込んだ。ワイバーンの巣はかなり広い洞窟だ。自然にできたもので元々は複数の魔物が住んでいたらしい。だがリチャードの先祖のシグルトが洞窟の主を倒して以来魔物の数は減り最も力をもっていたワイバーンのみがすみつくようになったそうだ。それ以後リチャードの家が管理をしており試練の時に使用しているらしい。
「グェーグェー」
「グルルグルル」
声のほうを見るとワイバーン同士が戦っていた。大きいワイバーンが小さいワイバーンを一方的に攻撃していた。同士討ちか?
「リチャードやはりおかしいですわ、一旦引いてあなたのお兄様に相談したほうが……」
「いや……今日は…今日だけは逃げるわけにはいかんのだ!! エリザベス、ハロルド魔法をでかいほうに頼む。ティアとヴァイスは弓で小さいほうを射抜け!!」
「了解、風よ!!」
「ああ、もうなんでこうなるのかしら、しかたないですわね、私にあわせなさい。風よ!!
二つの風の刃が交じり合いでかいほうのワイバーンの下半身と上半身を真っ二つに切り裂いた。すっげえ威力だな。さすが我がクラスの魔法トップクラスの二人だ。
俺とティアの矢が小さいほうのワイバーンの胴体を射抜いたが相手は少し苦しそうな顔をしたもののこっちに向かってきた。大型ドラゴンのときとは違い竜殺しの毒は塗っていないのだからしかたない。
「やっぱり接近戦じゃないと燃えないわよね!!」
「いや、できれば遠距離でしとめたいんだがな……」
楽しそうなティアにリチャードがぼやく。接近してきたワイバーンをティアとリチャードが迎え撃った。まっすぐ向かってくるワイバーンの爪による攻撃をティアが受け止め、その隙をリチャードがついて斬りつけた。
「俺も忘れないでくれよ!!」
援護とばかりに俺は矢を放つ、俺の矢はワイバーンの翼を射抜き一瞬動きが鈍った。その隙をティアたちが逃すはずもなかった。二人の斬撃によってワイバーンは断末魔をあげて息絶えた。
「リチャードやるじゃん」
俺はワイバーンを倒し一息ついているリチャードに声をかけた。俺の場合ゲーム時代の知識ででどう動くか、どう攻撃すれば有効か大体わかっているので対処できたのが、俺と同じくらいの実力のリチャードがティアと同じくらい動けたのに素直に驚いたのだ。あれ、なんかこいつ竜殺しの力に目覚めたとか?
「ふははは、当たり前だろう、兄上の試練についていったり、家の護衛に無理を言ってワイバーンの巣につれていってもらいワイバーンの動きを研究したからな」
「リチャードあなたそんなことしてたんですの? だってあなたは試練を受けるに値しないって言われていたんじゃ……」
「ああ、父上にはそういわれたよ、だからといって……たかが父上に反対された程度であきらめれるはずもないだろう? 現に今役にたっているではないか」
「リチャード…あなたそこまで騎士に……」
リチャードの言葉にエリザベスが何やら悩ましい顔をした。
何気なく言っているがこいつはどんな気持ちでワイバーンの巣に来ていたのだろう……合宿で大型ドラゴンと遭遇したのは偶然だし、俺がリチャードの力を借りたのだって偶然だ。こいつの努力は無駄になったかもしれないのだ。
でもそうだよな。簡単に自分の未来をあきらめることなんてできないよな。俺だって……
「みんなー素材剥ぎ取ったわよ、やっぱ大型はいいわね、この逆鱗とか言い値段で売れるわよ」
「ティア、返り血だらけだよ……仮にも貴族なんだからもうちょっと気を使ったほうがいいんじゃないかなぁ……」
シリアスな雰囲気だったのにティアのせいで台無しだ。でもそれでいいのかもしれない。リチャードの話を聞くのはいまじゃなくてもいい。
俺たちはその後も何回かワイバーンと遭遇したもののあまり苦戦せずにすすむことができた。やはり魔法の存在が大きいのだろう。ハロルドとエリザベスの魔法は圧倒的だった。てかこれ矢と剣だとむちゃくちゃ厄介だよな……エリザベスが魔法を使えると有利といっていた意味を俺は実感した。
「なあ、ワイバーンは何で同士討ちをしてるんだ? こいつらいつもこんな仲悪いの?」
「いや、前きたときはそんなことはなかったな……管理人もなにやら騒がしいといっていたが奥に行く必要はない、試練が終わったらすぐに家にもどり兄上に相談してみよう」
俺の疑問にリチャードも困惑気味だ。ゲームでもワイバーンたちは同士討ちしてなかったしな。厄介なことにならなければいいが……ちなみにゲームでは特にボスも現れずに試練を終えて終了だ。一番奥に行けばボスがいて珍しい素材が手に入るのだが今は試練の終了が一番である。それにゲームと違って死んだらそれまでだしな。
「ティア何食べてるんだい?」
「ハロルドも食べる、美味しいわよ」
「へえ、ちょっともらおうかなぁ、え、何これ? いや本当に何なのこの食感!!」
「ティアそれワイバーンじゃないですの? 確かにドラゴンステーキはありますけど普通もっと大きなドラゴンの肉ですわよ?」
「冒険者たるもの何でも食べれるようにしなきゃだめなのよ。それに魔物の肉を食べると一時的にステータスが上がるって噂もあるのよ」
「いやいや、僕たち冒険者である前に貴族なんだけどねぇ……うう、気分が悪くなってきたよ……これだから脳筋は……」
なんか楽しそうだな……しかし思った以上に苦戦しなくてよかったと俺が安堵したときだった。なんだろう変なにおいがする。何かが焼ける匂いだ。ティアがもっている肉ではないな……
俺たちは嫌な予感を感じつつも奥へ向かった。そして試練の間とよばれる部屋で俺たちを待っていたのは騎士の像と大量のワイバーンの焼死体、そして一際でかい一匹のワイバーンだった。
「リチャードあれは何ですの……?
「あれは……ワイバーンロードだと……この巣の主だぞ。なんでこんなとこにいるのだ」
ワイバーンロード。ゲームではこの試練の間のさらに奥にいるボスモンスターである。通常のワイバーンより大型な癖に素早く火も吐くことができる中々強力な魔物だ。
大型のワイバーンは焼死体なったワイバーンの死肉を喰らっていた。みていてあまり気分のいいものではない。
「リチャードどうす……」
「---!!!!!!!!!」
俺がリチャードに進退を聞こうとした時ワイバーンロードがこちらに気づいたのか大きな音をたてて叫んだ。もし俺たちが大型ドラゴンと遭遇していなかったらパニックになっていただろう。あの時に比べればまだ距離もあるし、恐怖も少ない。俺はなんとか持ち直した。ティアたちも少しひるんだだけで大丈夫そうだ。
「ううううう……」
一人だけ雄たけびの影響を受けてしまったのはエリザベスだ。恐怖でパニックになりうずくまってしまっていた。早く正気に戻さないと!!
「エリザベス大丈夫か!!」
「ひぇ……」
俺が声をかけるがまだ立てないようだ。ワイバーンロードがその隙を見逃すはずがない。やつの口から炎のブレスが吐き出せれ火の玉となりエリザベスに向かってくる。
まずい、今のエリザベスでは回避できない。
「ふははは、今度は守るといったろう、エリザベス」
「リチャード!?」
エリザベスをかばうようにリチャードが立ちふさがる。俺はすぐに結界を張るために精神を集中し指輪の効果を発動させる。頼む間に合ってくれ!!
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リチャードの話はあと二回で終わる予定です。ちょっとしごとが忙しく更新遅くなりもうしわけありません。
あとコメディものを短編で書いたのでお暇だったら読んでくださると嬉しいです。
『俺が勇者のパーティーから追放した遊び人が賢者になって復讐しにきちゃった』
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