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32.指名依頼

「ヴァイス、暇なら冒険者ギルドに行くんだけど付き合ってくれないかなぁ?」

「ダンス踊るくらい仲いいんだろ、ティアと二人で行って来いよ」

「あれはリーザの告白を断るためって説明したじゃないか!!」



顔を真っ赤にして抗議するハロルドをからかうのが最近日課である。さいわいハロルドとティアは自分の事で精一杯なようで俺とエレナが二人で踊っていたことは知られていない。まあ、そのうち誰かから聞くかもしれないけどな。



 そういうわけで俺達三人は街に来た。エレナも誘ったのだが今日は孤児院で一日中過ごす約束をしているということで断られてしまった。

 まずは冒険者ギルドの前に隠しショップによることにした。ドラゴンを倒したのを手伝ったということで素材の一部をもらうことができたのだ。これを金に換えるも良いし、素材を元に武器や防具を作ってもらうのもありだ。



「なんか胡散臭い店ねぇ……」

「そういうことは店でいっちゃだめだよ……だからみんなにオーク並みの頭っていわれるんだよぉおおおお。痛い痛い頭を握らないでぇ」

「あんたにしか言われてないわよぉぉぉ、あんたのせいで私陰でオーク女とか呼ばれてんのよ!!」



 二人がいつもの夫婦漫才をしているのは無視しておく。まあ、ティアがそういうのも無理はない。なんかよくわからない頭蓋骨とかおいてあるし、いや、本当になんだこれ。人骨じゃないよね? こわ!!



「おお、坊主生きてたか? 大型ドラゴンは倒せたかよ」



店主は俺に気づくとからかうように笑いかけてきた。あーやっぱり信じてなかったんだな。いや、当たり前なんだけどな。



「もちろんです、このドラゴンの素材を使って何らかの防具の作成と素材の買取をお願いできますか? 店の商品と交換でもいいですよ」

「な……本物の竜麟じゃねえか!! これどうしたんだよ!!」

「だからドラゴンを倒したって言ったじゃないですか」



 ドラゴンの素材をみて驚きの声を店主があげた。そんな店主にどや顔で答える俺。ちょっと性格悪かったかなと思うが、気持ちよかった。

 信じられないという顔をしている店主に先に換金だけお願いして俺たちは冒険者ギルドに向かった。





「やっぱり討伐クエストにしよ!! これなんてどう? ゴブリンの巣襲撃とか、オークも目撃されてるみたいよ。なかなか楽しそうじゃない」

「巣の襲撃はまずいって……難易度がこの前と違うし、エレナだっていないんだよ、それにティア同族殺しはまずいと思う……痛い痛い!! 無言で脛を蹴らないでぇ!!」

「つっても手ごろなクエスト中々ないよな、うえ、下水に住む大ネズミ退治とか臭そうだな……」



 冒険者ギルドについた俺たちは張り出された依頼書をみながら手ごろなものを探す。ドラゴンの素材を売った金で多少は財布に余裕ができたものの俺の強さは隠しショップで買ったチートアイテムとゲームの知識を使っての戦いだ。金はいくらあっても足りないくらいだし、実戦経験を積んで少しでも強くなりたい。ついでに孤児院からの依頼もないかみておく。

 以前直接依頼してくれてもいいとリオに言ったのだがそこまで甘えるわけにはいかないと断られたのだ。変なとこでまじめだなぁと思ったがそういうのは嫌いではない。


「あの、ティアさんにハロルドさんでよろしいでしょうか?」

「そうですよ、なんでしょうか?」

「お二人に指名依頼が入っているんです。お話を聞いていただけますか?」

「何かの間違いではないでしょうか? 僕たちはまだまだ新人ですし……」



 俺がゲームで効率が良いクエストは何だったか思い出しているとギルドの職員が声をかけてきた。ハロルドが怪訝な顔をしながら対応した。

 もっともである。指名依頼は文字通り冒険者を指名した依頼だ。依頼書が張り出されるものとは違い指名された冒険者だけが受けることができるのだ。本来であればハロルドやティアのようなたいしてクエストもこなしていない人間に来るようなものではないのだ。



「いいんじゃない、もしなんかの間違えでもクリアしちゃえばいいのよ!!」

「いやいや、そういうものでもないんじゃないかなぁ、またドラゴンと戦えって話とかだったらどうするんだい? これだから脳筋は……いたっ!!」



 あきれ顔のハロルドをティアが足の指を踏んで抗議した。そうだね、ギルドの職員がいるからいつもみたいに頭をつかんだりはできないよな。



「あれ、話もういっているんですか? そうなんです。ドラゴン退治なんです。なんでもお二人は魔法学園の合宿所に現れたドラゴンを倒したということでそれで指名が入ったみたいなんですよ」

「本当にドラゴンなのか……」

「さすがの僕は今はちょっと……」

「え、またドラゴンと戦えるの!?」



 俺とハロルドはドラゴンというだけでげんなりした。ティアさすがに頭おかしくない? 戦闘民族なの?俺ら死にかけたよね……

 とはいえさすがに情報早くないか? てかまた、ドラゴンかぁっと思ったが俺はゲームの時の知識を思い出した。たしかこんなクエストはあったな。とある貴族の成人の儀式でワイバーンの巣にある石板のかけらを持って帰るという儀式がある。それの護衛を頼まれるのだ。ゲーム内でも主人公であるシオンがドラゴンを倒した少し後に指名依頼が入るのだ。サブイベントなのでとばしてもいいが金の払いはよかった覚えがある。


「あの、ドラゴンっていってもワイバーンとか小型ですよね」

「ええ、そうです。ワイバーンの巣に行くので護衛っていう依頼ですね。そもそも大型のドラゴンなんてそうそう現れませんよぉ」



 ギルドの職員さんは苦笑した。いや、俺らが戦ったのは大型のドラゴンなんだけどね。ちなみに小型のドラゴンや中型のドラゴンは討伐の依頼は大型ドラゴンほどではないが素材が貴重なため高く売れるんで冒険者には人気である。



「まあ、ワイバーンならなんとかなるしとりあえず話だけ聞いてみるか?」

「そうだねぇ、依頼主も貴族だしコネを作っとくのも悪くないねぇ、やばそうならエレナやリチャードも誘って行けばなんとかなるかなぁ」

「では行きましょう。いざ冒険ね。色々準備をしましょう」



 みんな乗り気である。まあ、大型ドラゴンに比べれば楽勝だよな。それに貴族の護衛だ。まさか俺達だけというわけではないだろう。それぞれ買い出しするために一旦別れ、俺は隠しショップにむかった。



「おお、坊主すげえな、あれ本当に大型ドラゴンの鱗じゃねえか。これならいい防具ができるぞ。最初来たときは冷やかしだと思って悪かったな」

「いえいえ、楽しみにしてます。それで今度はまた相談があるのですが……」



大型ドラゴンを倒して俺の事を認めたのかやたらフレンドリーになったな。まあ、実際俺は弱いし、最初来た時もゲームの知識を使っただけだし実際おっさんが俺を店の客としての実力を持っていないと判断したのは間違えではないんだよなぁ。



「今度はワイバーンかよ……お前つくづくドラゴンと縁があるな……」

「あははは、なんなんですかね……」

「まあ、いいぜ、これからもよろしくな。ついでにこれもつけといてやるよ」



 確かに連続でドラゴンか……確かに店主が苦笑するのももっともである。しかしこれならリチャードも無理やり誘えばよかったな。あいつのドラゴンへの知識と魔剣はワイバーンにも有効だろう。こういう時に限っていないとはタイミングが悪い。

 店主のおっさんの言われるままに俺は買い物をした。気に入られたのかおまけをくれたし、金額も少しサービスしてくれたのが嬉しい。このショップの客として認められたのだろう。



「しかし、今年の魔法学園の生徒は優秀なやつが多いな、さっきも黒髪のガキと赤髪の小娘が買いに来たよ。もしかして知り合いだったりするのか?」

「いやー、わからないですね……」



 店主が荷物を積めながら雑談してきたが俺は冷や汗を流す。うわ、シオンとヒロインじゃん。あいつらもここくるのかよ……できれば会いたくない。やはり将来自分を破滅に追いやる人物とはかかわりたくないよなぁ……




 それぞれ買い物を済ました俺達は合流して依頼主の屋敷へと向かった。今回の貴族はこの街に屋敷があるのだ。うちのような田舎貴族とは違うのだろう。うらやましい限りである。依頼書をみるとなにやら騎士の家系のようだ。

 豪華だが質素な屋敷についた。門番に話をするとすでに話は通っていたため屋敷の中へと通された。執事らしき人が俺たちを案内してくれた。

 なんだかんだ地方貴族なのでそこまで偉い貴族と会う機会は少なかったため今になって緊張してきた。せいぜいオーキス様だもんなぁ。あの人はやたらフレンドリーだったけど普通は違うのだろう。隣をみるとハロルドも緊張していつるようだ。ティアは……まあいいだろう。これ失礼あったら処刑とかならないよね?



「お客様を連れてまいりました」

「フハハハハ、待っていたぞ、ヴァイス達よ!! あれエレナはいないのか……まあいい、私が今回の依頼主だ」


 応接間で俺たちを待ち構えていたのは聞きなれた声だった。そういやこいつ騎士の家系で有力な貴族だったなぁ……






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今回は彼の話です。

ドラゴンの分類追記しました。

大型ドラゴンがヴァイス達が倒したドラゴン。小型ドラゴンがワイバーンなどです。

討伐準備の回でも追記いたしました。


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