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31.ダンスパーティー

「なあ、ヴァイス……僕はどうすればいいんだろう……」

「よくわからねーけど全裸で僕ダンスなんてできませーんってパーティ会場で叫んでれば解決すると思うぞ」

「君は馬鹿か!! 僕の貴族としての地位がなくなるじゃないか!! 冗談はゾンビみたいな死んだ目だけにしてくれよ!!」


 いや、元々田舎貴族の三男に貴族としての地位なんてたいしてないと思うが……

 俺たちはパーティー会場から一旦自分たちの部屋に避難していた。あそこではドラゴンと戦ったときの話を聞きたがる連中が群がってくるのと、ハロルドが二人っきりで話したいといってきたからだ。


「ふむ、てっきり貴様とティアは付き合っていると思っていたのがちがうか?」

「え、まって。ここ俺らの部屋なんだけど何で普通にお前いんの?」

「そんな……ティアとはただの友達でそんな風に思ったことは……多分ないねぇ……」


 当たり前のようにリチャードがいることに突っ込みをいれたのにスルーされた……あれ? 俺がおかしいのか?


「てか、お前のほうは大丈夫なのか?」

「フハハハ、面白いことを聞くではないか!! 大丈夫だったら今頃エリザベスと一緒にいるわ!」

「そうだよな……本当にごめんな……」



 涙目で笑うリチャードに俺は慰めの言葉をかけてやるしかなかった。だよな、上手くフォローできてたらここにはいないよな……それはおいといて今はハロルドだ。



「で、どうするのだ、ティアとは付き合ってないのだろう? だったらリーザと踊っても問題ないのではないか? リーザはいい子だぞ。性格もいいし、家も私やエリザベスほどではないが力は持っているぞ。あと着痩せするタイプで胸がでかい」

「まあ、エリザベスとずっと一緒に入れるってだけでいい子なんだろうとは思うが……てかリーザの肩もつね」

「当たり前だろう、私としてはリーザのほうが付き合いが長いからな。ちなみにエリザベスはもっといい子だぞ。なんだったら1時間はいいところを言い続けることができる」

「本気でどうでもいいから勘弁してくれ……」

「そうか……」



 本気で残念そうな顔をするリチャード。こいつエリザベスの事好きすぎじゃない? いまはそれよりもハロルドである。こいつとティア仲良いとは思っていたが実際それが友情なのか恋愛感情なのかよくわからないんだよな……多分本人もわかっていないから悩んでるんだろうけど。



「実際、ティアの事どうおもってるんだよ」

「それがわからないんだよぉ……一緒にいて当たり前の存在だったし……でも彼女が笑うと嬉しいんだよねぇ」

「のろけか、死ねよ」

「君が聞いたんだろう!! 僕だってこんな恥ずかしいこと言いたくないんだよ!!」



 顔を真っ赤にしてハロルドが抗議をしてきた。いやー、青春してるな。ちょっとうらやましい。でもこれはティアの事好きなのかもしれない。ティアはハロルドのことどうおもっているんだろうか?



「ふむ、リーザのことはどう思っているのだ?」

「そうだねぇ、まだちゃんと話していないからわからないけど、僕の思う貴族の令嬢って感じかな。優しそうでいいよねぇ。あと胸がでかい」



 いや、こいつ女ならだれでもいいんじゃないか? くっそなんでこいつばっかもててるんだよ!!



「まあ、俺らが何言ってもこいつが決めるしかないんだよな……とりあえずどっちと踊るか決めとけよ」

「え、まって僕を放置するのかい? 力を貸してくれよぉ」

「仕方ねえなぁ、コイン投げるからみろよ。表ならティアとダンス、裏ならリーザとダンスな」

「貴様そんないい加減なことでいいのか……?」

「それで決めるのかい……さすがに二人に悪いような……」



 二人の抗議を無視し俺はコインを投げた。空中をくるくる回るコインがやたらスローに感じた気がした。結果は……






 俺はパーティー会場に飲み物を片手に一人たたずんていた。いつもいるハロルドは今はダンスのパートナーに声をかけに行ってていない。俺はパートナーこそいないもののあいつの恋路の結果をみるためにきたのだ。あいつに彼女が出来たらこういう一人で過ごす時間も増えるのだろうか、少し寂しいな。

 さっきまでドラゴン退治の話を聞きに来たやつらも今はダンスのパートナー探しに夢中なのか誰もいない。俺もパートナー探すかなぁ。でも異性の友達なんてエレナくらいしかいない。



「お疲れ様です、ここにいたんですね、少し探してしまいました」



 壁の花と化していた俺に声をかけたのはエレナだ。急いで走ってきたのか、少し頬が赤い。可愛い。ダンスに誘う相手の候補として考えていたのもあり少し意識してしまうな。



「ハロルドはどうだった?」

「やはりあなたの差し金だったんですね。ティアに『ただ断るのも申し訳ないし、説明するのが大変だからから恋人のフリをしてくれないか?』っていってダンスに誘ってましたよ。ティアはなんだかんだ嬉しそうでした」



 男のツンデレかな? 需要ないぞ。緊張しながら誘ったであろうハロルドの姿を想像して俺は苦笑した。そもそもコインの結果は裏、つまりコイン通りならばリーザをダンスに誘うはずだったのだ。でもあいつはティアを誘った。つまりはそういうことなのだろう。



「みんな踊り始めましたね、あ、ティアとハロルドも踊ってますよ」

「ああ、踊りが下手なティアをハロルドが必死にサポートしてるな、あ、間違えてティアの足踏んで仕返しにぶん殴られてる」

「でも二人とも楽しそうですね、いいなぁ」



 俺たちは踊っているみんなを眺めていた。みんな笑顔だったり緊張していたりだが幸せそうだ。デコボコなティアとハロルド達をみて俺たちは顔を合わせて笑った。あれ、なんかいい雰囲気じゃない? 今なら断られても冗談って言えるかな。



「なんか楽しそうだしよかったら一緒に踊らない?」

「……いいですよ、せっかくですしね」



 俺の誘いにエレナは一瞬沈黙したのちうなずいてくれた。正直ドラゴンと戦う時より緊張した。無茶苦茶嬉しい。

 俺はエレナの手を取りダンスを踊った。握った彼女の手は柔らかく俺を幸せな気持ちにしてくれた。俺はこうして転生して一番幸せな時間を過ごしたのであった。できればこの時間ができるかぎり長く続きますように。俺は柄にもなくそんなことを願うのであった。



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誤字脱字報告ありがとうございました。またブックマークが100を超えました。みなさんありがとうございます。


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