30.打ち上げパーティー
「うう……」
「あ、ヴァイス、起きたんですね!」
俺が意識を取り戻すとすぐ横にエレナがいた。どうやら気を失った後に合宿所の救護室に運ばれたようだ。
ベットから体をおこして体を動かしてみたが特に痛みはないようだ。てかエレナ看病しててくれたのか? なんかうれしいな。もしかして今回の活躍でフラグ立ったりとか……
「看病してくれてありがとう」
「気にしないでください、パーティーじゃないですか」
あー、パーティーだもんな、別になんか期待したわけではないからな。やはり主人公のように簡単にフラグがたったりはしないようだ。悲しい。
「そんなことよりもっと言うことあるんじゃないですか?」
「えーと、化粧変えた? 今日も可愛いね」
「はは……殴りましょうか? それとも本気で言ってます?」
「その……相談しなくてすまない。でも今回は命の危険もあったんだ」
「相手はドラゴンですからね……でもそれはヴァイス達だって一緒ですよ、こういう時にみんなで協力するのがパーティーなんですから少しは私たちの事も頼ってください」
ジト目で睨むエレナに俺は素直に謝った。心なしか部屋の気温が下がった気がする。そろそろ彼女にも俺の秘密をばらしてもいいだろうな。といってもゲームの世界うんぬんではなく未来がみれるって方だ。この世界がゲームって話をしても誰も信じてくれないだろうしな……
「それであのあとどうなったんだ? 途中で気を失ったが……」
「あの後はあっさりしたものでしたよ。私たちがだいぶ弱らせていたこともあって、ジェイス先生とレイド、シオンと赤い髪の女の子が遠距離で魔法を撃ってドラゴンも瀕死状態になっていましたね。ただ最後の一撃でシオンがブレスに当たってしまったんですがなぜか無事な様でしたね……彼は色々特殊ですからあれも魔法の一種なんでしょうか……」
エレナの言葉から俺は色々整理する。シオンがブレスに当たって無事だったのは魔王の力に目覚めたのだろう、あれだけドラゴンを傷つけたのに結局結果は変わらないようだ。そして赤髪の少女はメインヒロインだな。これであいつのルートは確定した。今後の対策の参考にしよう。
「そういや打ち上げパーティーはもうはじまっているのか?」
「もう少しで始まりますよ、それで様子を見に来たんです。みんなももう会場にいます」
「そっか、ありがとう。俺ももう大丈夫だから一緒に行こう」
ベットから起きて俺たちは会場へと向かった。
「そこで私が掲げた魔剣グラムの活躍だ!! ドラゴンを弱体化して、みんなの魔法を撃って倒したのだ・もちろん指揮はこの龍殺しの家系であるこの私リチャードである」
パーティー会場で正装に着替えた俺の最初に目に入ったのが偉そうにしゃべっているリチャードである。俺たちがドラゴンと戦ったのは他の生徒達知っているようだ。リチャードには主に少年たちが周りに群がって熱心に話を聞いていた。ドラゴンだもんな、男なら一度はドラゴンスレイヤーとか憧れるよな。気持ちはとてもわかる。
「おお、ヴァイス!! 貴様もあの激しい戦いを話してやれ。こいつはすごかったんだ。様々な道具をうまく使いドラゴンを苦しめたのだからな!!」
「リチャードから聞いたよ、ドラゴンを瀕死に追い込んだんだろ?」
「いやー、お前らのパーティーはいつか大きいことをやると思ってたんだよ」
リチャードを筆頭に少年たちが押し寄せてきた。普段あいさつ程度しかしないやつらもまるで俺を英雄みたいに褒めたたえてくる。調子いいやつらだなと思う反面すごい嬉しい。でも強いと勘違いされたらやだよな。厄介ごとたのまれてもきついし。
「いやー、俺は道具を使っただけだし大したことはしてないぞ」
「そんな事ないです。ヴァイスはみんなに褒められるだけの事をしたんです。みんなを守るためにドラゴンの目の前で結界を張るところとかすごかったですよ。まるで正義の味方みたいでした」
「フハハハハ、何いちゃついてんだ、死ぬがいい」
「別にイチャついていません!!」
そうだそうだ、これはあくまでパーティーの仲間への励ましにすぎない。かませ貴族にすぎない俺を本来メインヒロインであるエレナが好きになる可能性は低いだろう。あ、でもこのまま英雄みたいな扱いが続けば俺にも惚れてくれる女の子が現れるかもしれない。
「よかった、意識を取り戻したのね、心配したのよ」
「ふっ、心配したんだよ、ゾンビの様に眠ってたからねぇ」
「ああ、ありがとう。二人も無事で……ってハロルドどうしたんだ!! 全然無事じゃねえなぁ」
ようやくティアとハロルドと合流したのだがなぜか、ハロルドはなぜか頭を包帯でぐるぐる巻きにされていた。俺が気絶した後に攻撃を受けたのか!!
「いやぁ、野生のオークに襲われてねぇ……」
「誰がオークよ!! あんたが今回の事を何か聞いてもくだらないこと言ってごまかすからでしょ。さすがに悪いと思って治療したんだからいいじゃない……」
「オークの中では知らないけど、人間の世界では適当に包帯を巻くだけのこと治療っていわないんだよ……」
なんだいつものじゃれあいか……心配して損したぜ。しかし俺のお見舞いがティアじゃなくてよかった。下手にごまかしてたら俺もああなっていたかもしれないのだ。最近ティアの凶暴性増してない?
「しかし、まるで英雄扱いだな、びっくりしたよ」
「そりゃそうでしょーよ、ドラゴンよ、ドラゴン!! 冒険譚の王道じゃない。また戦いたいわね」
「いやぁ、僕は二度と戦いたくないなぁ……命がいくつあっても足りないよ……今回の模擬戦で結構点数稼いだし、ドラゴンを足止めしたのも成績に加味してくれるってさ」
「みんな無事でよかったですけどもうこんな無茶はしたくないですね……」
俺たちは今回の戦いの感想をそれぞれつぶやく。みんなで顔を合わせてようやく達成感に包まれた。俺は守れたのだ。今回の戦いはぎりぎりだったがエレナもティアも、ついてにリチャードも全員無事だった。俺のゲームの知識が役に立ったのである。素直にうれしいし、チートスキルとかなくてもなんとかやってけるのではないかという気持ちになる。今回で道具を使いまくれば強敵とも渡り合えるってわかったしな。
「リチャード!! ここにいたのね、探しましたわ!!」
「おお、エリザベス、ドラゴン殺しの私を褒めたたえに来たのかな?」
いや、ドラゴン殺したのはお前じゃないだろと思いつつ、声の方をみるとエリザベスがリチャードに向かってきた。後ろにはいつもの二人もいる。目が合うと軽く会釈をしてくれた。いい子たちだ。
少年たちに自分の手柄を語っていたリチャードが笑顔でエリザベスに振り向いた。
「褒美をくれるというならば今夜私と踊ってはくれないかな?」
「何が褒美よ……私がどれだけ心配したと思ってるんですの? この泣き虫リチャード!!」
「エリザベスまってくれぇぇぇ!!」
乾いた音と共に場が凍った。エリザベスがリチャードの頬を叩いたのだ。そしてそのまま駆け出していったエリザベスをリチャードが追いかけて行った。
「俺たちは何をみせられているんだ……」
「まったくだねぇ」
「いや、私たちはエリザベスの気持ちわかるわよ」
「そうですね、てかわからないってことは私たちが何で怒っていたかちゃんと伝わっていないんでしょうか?」
あれ? なんかこっちの雰囲気も悪くなってない。エレナがジト目でみつめてきた。うう、こわい。話をそらそう。
「お前らは追いかけなくていいのか?」
「ええ、だってねぇ……」
「いつものことですからね……」
話題転換のためにリーザとメリルに声をかけた。二人は顔をあわせて苦笑した。あれか、ティアとハロルドのやりとりみたいなものなのだろう。
「それより、ハロルドさんよかったら今夜私と踊ってくれませんか? それてもティアさんと踊る予定でしょうか?」
「え? ダンス別に誰とも約束してないけど……」
「な、なんでそこで私の名前が出てくるのよ!!」
リーザの言葉にキョトンとした表情で答えるハロルドと、なぜか顔を赤らめているティア。そういやさっきからダンスってなんだ、リチャードもエリザベスを誘ってたな。
「なあ、さっきからダンスってなんだ?」
「え、知らないんですか? 強化合宿の後の打ち上げでダンスを一緒に踊ると結ばれるっていうジンクスがあるんですよ」
ひそひそとエレナに聞くとまじかって顔をされた。結構有名な話だったのか……まあ、あっちの世界でも文化祭の後に告白とかあったしそれと同じようなものだろう。ここ最近ドラゴンの事で頭一杯だったから全然知らなかった。それにゲームでもシオンはドラゴンとの戦いがきっかけで魔王の力に目覚めた反動で寝ているのでダンスイベントなんてなかったのだ。
「返事はいますぐじゃなくてもいいんです。ダンスホールでまってますから!!」
そう言い残し、リーザとメリルは去っていった。リーザの顔はりんごの様に真っ赤になっていた。メリルも「よく言ったわね」とリーザを褒めていた。え、ハロルドに春がきたの?
「エレナちょっと付き合ってくれる?」
「ええ。大丈夫ですよ」
ティアはその光景をみてしばらく不機嫌そうな顔をしていたがエレナとどこかへいってしまった。「なんかもやもやする」とつぶやいていたのがとても気になった。
「どうしよう、ヴァイス女の子にダンス誘われたのなんてはじめてだよ」
「とりあえず死ねばいいんじゃないかな……」
俺は吐き捨てるように言ってやった。リア充爆発しろ。なんでこいつだけもてるんだよ、俺もがんばったじゃん。ドラゴンと死ぬ気で戦ったのに!! とりあえずダンスパーティーになったら色々厄介なことがおきそうである。俺も誰かさそってみるか……いや、断られたら死にたくなるな……
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さていきなりもてたハロルドはどうするのでしょうか?一回で終わらす予定が思ったより長くなってしまいました。次で終わらせます。




