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29.かませ貴族達VSドラゴン

「ハロルド頼む」


 俺は叫ぶと同時に即座に穴から離れた。まだドラゴンは出てきていない。急がないと手遅れになってしまう!!


「わかってるさ、風よ!!」

「氷の鎖よ、拘束せよ!!」


 ハロルドの魔法によって発生した風に包まれエリザべスとリーザ、メリルが合宿所のほうへと運ばれていった。合宿所までは届かないがドラゴンの攻撃範囲からは免れるはずって。ティアたちは!? なんか詠唱も聞こえなかった?


 嫌な予感がしてティアたちをみるとティアとエレナが自分の体に氷の鎖を巻き付けていた。そして鎖の先は氷漬けになった木に巻き付いていた。これじゃあ風で飛ばないだろう。凍った木が重しになってやがる。こいつら俺の行動を読んだのか!? 目が合うとティアはあっかんべーをしてきやがった。

 

「エリザベス、周囲の人の避難と合宿所にいるジェイス先生を呼んできてくれ! ドラゴンが現れたといえばわかるはずだ」

「リチャード、あとで何がおきているのか説明するのですわぁぁぁぁl」



吹っ飛ばされていくエリザベス達をリチャードは満足げに見送った。


「どうして僕が魔法を使うってわかったんだい……」

「あんたたちと何年友達やってると思ってるのよ、なんか隠してるくらい気づくわよ!!」

「ああ、わるかった、でもお前たちを巻き込みたくなかったんだよ。命の危険もあるし……」

「何をいってるんですか、私たちパーティーなんだから少しくらい頼ってください、なんか寂しいです」


 彼女達が怒るのもわかるがこっちはこっちで巻き込まないように必死に考えていたのだ。おそらく俺とハロルドはまだイベントがあるから死なないだろうが、二人はどうなるかわからないのだ……とはいえこうなってしまったら彼女達と共に戦うしかないだろう。ゲームの知識を活かしてやりきるしかない。


「リチャード。エレナとティアも戦力に加えて戦い方を考えてくれ。指揮はたのんだ」

「ねえ、さっきからドラゴンって本当に……」

「グルァァァァ」


 山が崩れ、けたたましい雄たけびと共にそれは現れた。砂埃の中現れたそれは、鱗に覆われた皮膚に鋭い目をしていた。空から俺たちを見下ろすドラゴンはどこか神々しさすら感じた。


「本当にドラゴンですか……」

「本当にあらわれちゃったねぇ……」

「ティアこれを使ってくれ。エレナはリチャードの言うタイミングで魔法をつかってくれ。別に倒さなくてもいいんだ。先生たちが来るまで時間をかせげればそれでいい」

「え、うん。ありがとう。でも倒しちゃってもいいんでしょ」


 呆けているティアだったが龍殺しの矢を渡すと表情が戦士のそれに変わった。切り替えはや!! 俺も見習わないと。体が震えているが深呼吸して落ち着かせる。大丈夫……俺は死なない……よな。


「火よ」


 ドラゴンが大きく息を吸い込むのを確認した俺は素早くやつに火の玉を放った。案の定大したダメージを与えることはできなかったようだが、注意はこちらに向いた。ドラゴンが息と共に炎のブレスを吐き出し俺に襲いかかった。残念ながらそれは読んでいる!!


「ヴァイス!!」

「大丈夫だ!! 結界よ」


 誰かの悲鳴を聞きながら俺は指輪の力を放った。指輪の力で現れた障壁が俺の周りを囲い炎から守ってくれた。うおおお無茶苦茶こわい。結界がミシミシと悲鳴をあげてやがる。ゲームの時の知識でこれくらいならぎりぎり防げるとは知っているが心臓には悪すぎた。しかもこの指輪俺の魔力を使うから精神的な疲労が半端ないのだ。あまり多用はできないな。



「今だ!! ヴァイス、ハロルド風を使え!! ティアは矢を放つのだ。その矢はドラゴンを弱らせる」

「風よ!!」



 指輪で威力をブーストしたハロルドの魔法と俺の持つ巻物から放たれた真空の刃がドラゴンの翼を襲った。なんという威力だろう、真空の刃はやつの翼を切り裂いていく。ちなみに巻物から放たれる魔法の威力はゲーム中の最大魔法と同等である。すさまじい威力に俺は少し高揚感を感じた。これが強者の感覚かよ。


「グルァァァァ!!」


 残念ながら俺たちの攻撃は翼を傷つけたものの地面に落とすまではいかなかった。俺は魔力を失いただの紙と化した巻物を今のうちに捨てた。ドラゴンは周囲を見回したと思うと一瞬浮いた。俺はそれをみてピンときた。これはゲームと同じモーションだ。


「急落下してくるぞ!! 避けろ!!」



 俺の叫び声でみんなが回避行動をするなか一人だけリチャードは挑発するように立っていた。ドラゴンはリチャードに向かい急降下して獲物を狩ろうと爪を振るおうとした。何してんだあいつ!? と思ったが、彼はニヤッと笑うと胸元から短剣を取り出しドラゴンに向けて掲げた。


「魔剣グラムよ。その力をみせよ」


 短剣が光ると同時にドラゴンが呻きながら急転換し空へ向かった。まるで短剣から一秒でも早く逃げたいかのようだ。


「フハハハハ、これぞわが家に伝わりし龍殺しの剣魔剣グラムの力だ!! いまのでドラゴンの能力はだいぶさがったぞ!!」

「剣っていうよりは短剣だねぇ」

「うるさい、この剣は持ち主の魔力でサイズと効果が変わるのだ。私の魔力ではこれが限界なのだ」



 まあ、俺たちは所詮主人公ではなくかませ貴族だしな。でもかませ貴族でも情報と戦略があればなんとかなる。今はなんとか戦えている!!


「隙あり!!」

「グゥゥゥゥ」



 ティアの矢が魔剣から逃げるために単調な動きになっていたドラゴンの翼を射抜いた。ただの矢ではない龍殺しの矢だ。文字通り龍を殺すための毒が塗ってあるのだ。今頃ドラゴンは激痛に襲われているだろう。


「ヴァイス、ハロルド、もう一度風だ!!」

「ほいよ」

「風よ」


 龍殺しの魔剣と毒で弱ったドラゴンにもう一度俺とハロルドが放った真空の刃が襲い掛かった。真空の刃は再度こそドラゴンの翼を切り裂いた。さすがに翼がぼろぼろになり飛行できなくなったのだろう。ドラゴンがすさまじい音と共に無様に落下した。このまま死んでくれないかなと思ったが苦しそうにうめいていた。まあ、これじゃあ死なないよな。



「氷魔法だ。ヴァイス、エレナ頼む!!」

「氷の息吹よ、魔竜を凍てつかせよ」



エレナの氷の霧と俺の手元の巻物から放たれた氷がドラゴンの全身を包み込んだ。急激に体温が下がり動きが鈍ったところをティアの矢が射抜く。これ三人で戦っていたらやばかったかもしれない。


 しかし、さすがはドラゴン、傷ついていてもまだ戦うようだ。大きく息を吸い込むのがみえた。またブレスか? 俺は結界を……


「---!!」


 それはすさまじい声量だった。ドラゴンの雄たけびによって俺はの精神が恐怖に支配される。こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。

 

 バチンっという音と共に頬に痛みが走った。誰かに頬をたたかれた。


「大丈夫ですか? 落ち着いてください」

「エレナ……?」

「正気に戻ったなら早く戦いに戻りましょう」


 エレナが心配そうに俺の顔をのぞいていた。彼女が正気に戻してくれたのか……ドラゴンの行動パターンにおたけびという技があったのを思い出した。1ターンびっくりさせて動けなくするという地味な効果だと思っていたがリアル喰らうとやばいな。まだ心の中に恐怖が残っていた。


 そんなことよりみんなはどうなった? リチャードは負傷したらしくハロルドが肩を貸していた。ティアがドラゴンの周りを動き囮になり逃げる時間を稼いでいるようだ。


「ヴァイス隙をついて土を!!」

「わかった!!エレナ援護を頼む」

「氷の息吹よ、魔竜を凍てつかせよ」



 エレナが再び氷の霧を放つ。魔法に気づいたドラゴンはティアを無視しこちらに走って向かってきた。計画通り!!土の魔法で落とし穴を作っておいたのだ。もちろんただの穴ではない。中には土で作られた槍が刺さっており獲物を串刺しにしようと待っていた。


 勝利を確信した一瞬だった。穴まであと一歩というところでドラゴンは傷ついた翼をはばたかせ空を飛んだのだ。野生の勘か、それとも視線を集めすぎたのか? 驚愕に包まれているであろう俺たちの顔をみてやつが厭らしく笑った気がした。


「ティア!! 矢を!!」

「もうないわよ!!」


 マジかよ。俺の方ももう巻物は使い果たした。ドラゴンがブレスを吐くために息を吸うのがみえた。ハロルド、ティア、リチャードの三人と俺とエレナが離れすぎだ。結界が届かない。ならやることは一つだ。俺は死なない俺は死なない。だから大丈夫。俺は必死に自分に言い聞かせた。


「ハロルド俺をとばせぇぇぇ、あれをやる!! ティアなんとか注意をそらしてくれ」

「風よ!!」

「わかったわ。それ貸しなさい!!」

「なっ、貴様それは我が家宝だぞ!!」



 ティアがリチャードからグラムを奪い取って投擲の要領でドラゴンに投げた。完全に油断していたのかドラゴンののど元に突き刺さった。ドラゴンが憎悪に満ちた目でティアに向かってブレスを吐いた。


 だが一歩遅い。ハロルドの魔法で飛翔しているドラゴンの眼の前に飛ばしてもらった俺はやつの口の目の前で結界を作る。ほぼゼロ距離で発生した結界によりブレスが逆流しドラゴンの体を焼き払った。


 ピキピキっと結界にひびが入る。近い分威力も上がっているのだろう。指輪に埋め込まれた宝玉にまでひびが入り始めた。もってくれよ!!俺は必死に魔力をこめ続けた。


 実際にはどれくらいの時間だったのか、ようやくブレスを吐きつくし視界から炎が消えた。目の前に満身創痍のドラゴンがいた。

 あと一歩だ…あと一歩。俺は最後の力を振り絞り自分の背後に火の玉を発生させ爆発させた。背中に痛みが走ったが今はきにしてはいられない。爆発の勢いを利用してのど元に刺さった魔剣グラムをより深くへと突き刺した。


「グルァァァァ」

「風よ」


 ドラゴンは苦しそうな悲鳴をあげ俺と共に地面へと降下していった。地面に降下していた俺を風が優しく包みこんだ。ハロルドとは違う声だ。誰だろう……

 轟音と共にドラゴンが地に落ちて行ったのをみた。


「お前らよくやった!! あとは俺達にまかせろ!!」


 ジェイスさんとシオンやレイドの姿がみえた。よかった……あとは任せよう……緊張が切れたせいか急に疲労が……指輪を使いすぎたか……


「ジェイスさんみんなを頼みます……」


 限界だった。俺は意識をうしなった。 



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本格的なバトルシーンの描写は難しいですね……バトルは一旦おわりラブコメチックになります。




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