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28.強化合宿

 魔法学校では一年に一度強化合宿が行われる。都市から離れた山で泊まり込みで特訓をするのだ。強化合宿はの内容は山での基礎訓練の後パーティーごとに別れバトルロワイヤル形式の模擬戦を行う。そして最後に打ち上げが行われるのだ。この模擬戦の結果が成績にかなりひびくため気は抜けない。


 それに加えてドラゴンかぁ。正直憂鬱以外の何物でもない。一応隠しショップで購入したものを並べてみた。


 強力な魔術が封印された巻物四枚。この巻物は一般的には魔法が使えない冒険者などが良く利用するものである。魔物には物理攻撃が効きにくいものもいるからな。あとは防御結界を張る指輪と魔力を高めるための指輪に龍殺しの矢というものも売ってもらった。


 お店の親父曰くお前らごときの力で接近戦を挑めば瞬殺だとのことであった。もっともである。


 合宿所に着いた後、俺とハロルドの部屋にリチャードがきた。初日の特訓が始まる前に作戦会議だ。


「これで足止めできるかねぇ」

「やるしかないだろう。指揮はリチャード頼む。魔力強化の指輪はハロルドが、結界の指輪と巻物は俺が持つよ。矢は得意そうなやつに渡すしかないな……」

「わかった。貴様らの言う通りならあの平民ならドラゴンを倒せるんだろう? なるべく早くやつらを誘導しないとな……あとな、秘密兵器を持ってきた。あとで見せてやろう」

「ねえ、三人で何話してるの? 作戦会議なら私たちも混ぜてよ」


 俺たちが合宿所で作戦会議をしていたら暇だったのかティアとエレナが遊びに来たようだ。しかし聞かれたらまずいんだよなぁ。どうごまかすかとハロルドとリチャードに視線を送るとリチャードが任せろとばかりにうなずいた。


「ふっ、実はな今夜女湯をのぞこうという計画を立てているのだ。貴様らに余計な情報を与えるわけにはいかないんだよ」

「うわ……最低ですね……」

「リチャードてめえぶっ殺すぞ!!」

「誤解だ、ティア……僕がそんなことするはずないだろう、てか君のスケルトンの様に貧相な体に興味はないいぎゃああああああ!!」


 こいつ頭おかしいんじゃないか? ああ、エレナの目がすっごい冷たい……道端のごみを見るような目だ……ハロルドは無言でティアにひっぱたかれている。くっそ俺らだけ大ダメージじゃねーか。


「リチャードさん、このことはエリザベスさんにも伝えときますね」

「すいません、それだけは勘弁してください。デートどころか会話もしてもらえなくなる。靴ですか靴をなめれば許してもらえますか?」


 地面に頭をつけて謝るリチャード。こいつ貴族だろプライドないのかよ……


「まあ、リチャードはともかく本気であんたたちが覗こうとしていたなんて思わないわよ。でも仲間外れはちょっと寂しいわね」

「何かあったら言ってくださいね。力になりますから」


 俺らの態度に何かを察したのか。そう言い残し二人は部屋から出て行った。ティアとエレナの少し寂しそうな顔をみて胸がチクリと痛んだ。


「貴様らはいい仲間を持ったな」

「そうだろう? だからこそ死んでほしくはないのさ」

「じゃあ、当初の予定通り模擬戦の途中までは共同パーティーで動いて、ドラゴンが現れそうになったらティアたちをハロルドの魔法で避難させるでいいな」

「エリザベスも一緒に頼むぞ。近くにいる連中には悪いが一緒にたたかってもらうとしよう」




「まったく、共同パーティーなんて勝手に決めて……一言くらい相談がほしいものですわね」

「すまない、エリザベス、だが私たちが手を組めば大体のパーティーには勝てるはずだ」

「まあ、そうですわね。あなたたち足をひっぱたら許しませんからね」

「何をいってるのかしら。クラスで一位の私たちの足を引っ張らないようそっちが気をつけなさいよ。二位のエリザベス」

「なんですって!!」



 基礎訓練が終わり、これから模擬戦がはじまるということで共同パーティで挨拶と思ったのだがさっそくティアとエリザベスが口論をしていた。二人とも気が強いからか譲らない。



 リチャードのパーティーは魔法力の高いエリザベスをメインとして、指揮のリチャードとエリザベスのサポートをするリーザとメリルという名の女の子二人で結成されているパーティーだ。二人の女の子はエリザベスと子供のころからの友達らしい。その二人はエリザベスとティアの口論をみると俺たちに「お互い苦労しますね」と言ってきた。なんだか仲良くなれそうである。



 模擬戦のルールが書かれた紙を読み直す。模擬戦の参加者はそれぞれが胸に魔石をつけており、パーティー内でリーダーを決める。敵のリーダーの胸に着けた魔石を砕いたら自分のパーティーのポイントになりリーダーの魔石が砕かれたらほかのメンバーも負けというルールだ。リーダーでない人間は魔石を砕かれたら失格となる。最悪リーダーだけが生き残れば減点にはならない。


 もちろん殺してはダメだし、重症を負うようなケガもさせてはいけない。加減が中々むずかしいがそれも授業のうちである。俺たちの様に同盟を組んでいるグループもそこそこいるようだ。途中までは一緒に行動したほうが効率いいしな。



「とりあえず、作戦会議な。前衛はティアと俺、リーザで担当する。魔法の精度が高いエリザベスとハロルドは後方から魔法で狙撃。あとはサポートで頼む」

「私とヴァイス、ハロルドで要注意人物はまとめておいた。こいつらと遭遇したら極力逃げるぞ」

「へえー、結構いるわね。こいつらと戦っちゃダメなの? 絶対楽しいじゃない」

「相変わらず脳筋なお嬢様だねぇ……強い奴を倒しても弱い奴を倒しても点数は変わらないんだから危険は避けるべきだろう? この前ゴブリンと戦ったせいで脳までゴブリンの様に単純になっちゃたのかなぁぁぁぁぁ、痛い痛い!! ごめんなさい、言い過ぎましたぁ」


 余計なことを言ったハロルドの頭をティアがわしづかみにした。メキメキと変な音がしているが多分気のせいだろう。いつもの光景をほのぼのとみていたが、何故かエリザベス達三人が引いた顔をしていた。なんでだろう。


 空に魔法で作られた光の玉がさく裂した。模擬戦開始の合図だ。



「風よ! この先に一パーティーいるねぇ」

「よし、挟み撃ちにするぞ!」



ハロルドが放った風魔法に反応があったようだ。放った風に人の様な手応えがあったらしい。応用力高すぎない?

敵がみえた! 知らない顔だ。おそらく他クラスの連中だろう。要注意リストにもない。勝てるな。



「キエエエー!!」



俺は奇声を上げながら手前にいる少年に斬りかかった。剣と剣がぶつかり合ったが不意打ちが功を奏し相手の態勢がくずれた。俺はその隙を逃さず相手の魔石を蹴り上げくだいた。まずは一人。


「げ、ヴァイスのパーティーかよ」


 相手が俺の顔を見て絶望したように呻く。あれ? 俺そんな有名人なの? それともどっかであったことあったのだろうか?


「わたしも負けてらんないわね!!」


 俺の後ろから現れたティアがあっという間に相手の魔石を砕いていく。リーダーらしき少年が慌てて逃げようとしていたがもう遅い。ハロルドの魔法によって作られた風の弾が魔石を砕いた。



「なんで回り込んでいる間に倒すんですの!! 私たちなんにもできなかったじゃない」

「のろまなのがいけないのよ」

「まあまあ、次は君らが先行していいから許してほしいなぁ。それに今回の相手は弱かったしね」



 リチャード達が配置につく前に倒してしまったのが不満なのだろうエリザベスが文句を言う。いや、正直肩透かしだったな。それより気になることがある。



「なあ、相手が俺の事知っていたんだけどなんでだろう?」

「何を言っているんだ。貴様のパーティーは我がクラスのトップだぞ、私たちが炎帝レイドを警戒するようにほかの連中も貴様を警戒していてもおかしくはないだろう」

「でも、ハロルドやティア、エレナはともかく俺はたいして強くないんだが……」

「そうかもしれないがその三人をまとめているのは貴様だろう? ほかの連中にリーダーが務まると思うか?」


 確かにそれはそうかもしれないがなんとなくリーダーになっただけだしなぁ。周囲から過大評価さえているようで少しむず痒い。これでもっと強ければ自信を持てるんだが……


 その後も俺たちは順調に他のパーティーを倒していった。しかし、ドラゴンはいつ来るのだろう。俺が一瞬気をそらしたときにそれはおきた。


「くそがぁぁぁぁぁ!!」


 魔石を砕かれ退場になった生徒の少年の一人が八つ当たり気味に魔法を放ったのだ。人の体ほどもある火の玉がリーザに向かう。



「え……」

「風よ!! まったく情けないねぇ、負けたんだから素直に退場すべきじゃなかな。君はゾンビかなんかなのかい」


 ハロルドの魔法によってリーザに向かっていた火の玉が風でそらされ後ろの山に直撃し爆発した。


「大丈夫かい?」

「あ、ありがとうございます」


 突然の攻撃に腰を抜かしていたリーザに手を差し出しハロルドが立たせてあげていた。無事でなによりだ。


「違うんだ、あてるつもりはなかったんだよ!!

「うるさいですわ!! ケガがなかったからいいものの万が一リーザに傷があったらあなたを八つ裂きにしてましたわよ!! あんたも貴族ならその名に恥じない行動をしなさい!!」

「ぐえ……」


 激高したエリザベスに股間をけられてうずくまる少年、痛そうだが下手したらけが人が出たかもしれないのだ、これくらいですんであっちもよかっただろう。股間をけられた少年はパーティーのメンバーが連れて行った。何回も謝られエリザベスも多少機嫌がなおったようだ。



「ねーねー、爆発したところなんか穴が空いてるんだけどいってみない? 天然の洞窟かしら?」

「今は授業中ですよティア……、先生に報告だけにして模擬戦に戻りましょう」



 みてみると山の中は空洞だったらしくぽっかりと穴が空いていた。俺は嫌な予感がしてその穴へと向かった。



「ティア絶対穴に近づくな!! エレナ一応ティアを抑えてくれ」

「そんな冗談よ、いくらわたしだって授業を放棄してまで冒険はしないわよ……」



 頼むから勘違いであってくれと願いながら穴を覗いた。穴の中は真っ暗な闇だ。その中にいきなり二つの黄色い光が現れた。これは眼だ。



「ドラゴンが現れたぞー!!」



 俺は精一杯大声を出して叫んだ。ついにこの時が来てしまった。



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次の話でドラゴン編と戦います。よろしくお願いします。

ブックマークや感想、評価いただけると本当にうれしいですしモチベがあがるので面白いなって思ったらしてくださるとうれしいです。







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