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2.ハロルド

「おっとー、本当にそこでいいのかい? じゃあこの駒はもらうよ」


 俺の正面でチェス(この世界にもあるようだ)に興じているのは俺の自称親友のハロルドである。少しカールのかかった金髪に整った顔だが、にやにや笑いがうさんくさを醸し出している。ようは残念なイケメンなやつである。


「うっせー、ハンデだ、ハンデ!!」

「ふ、さすが親友殿やさしいねぇー、でもこっから挽回は難しいんじゃないかな?」


こいつむっちゃ強いな!! この世界ではチェスも貴族の教養になるのだろうか? と、どうでもいいことを思っていると急にハロルドが神妙な顔をした


「知っているかい? 僕らが魔法学園に入学する年に第三王子もいるらしいね、君は余計なことをいう癖があるから気をつけるんだよ」


 もちろん知っている、その第三王子とやらはゲームでは主人公と入学式で一緒に問題をおこして、それがきっかけで親友になるのだから


「まあ、俺たちには関係ないだろ……地方貴族に過ぎない俺たちにはさ」

「そんなことないさ、成績優秀者の王城への推薦枠には上限がある。王族はみな英才教育をうけているから優秀だ。僕は君と違って三男だからね、就職先は自分で探さなきゃいけない、それに王子に目をつけてもらえば将来も安泰だ」


 なるほど…… まあ。俺らは退学するんですけどね。

 魔法学園は実際魔法を習うのもあるが卒業が一種のステータスのようなものもある。また、貴族が多く入学するんで人脈作りの場にも使われるようだ。


「ならやることは一つだろ……」

「そうだね、一つしかない」


 俺たちはお互いうなずきあう


「鍛錬と勉強して推薦枠を取るしかない お互いがんばるぞ」

「パーティーに出て人脈を作って、有力貴族に媚を売ろう、なに靴でもなめれば手下にくらいはしてくれるんじゃないかな?」


 なにをいってるんだこいつは? せっかくの剣と魔法の世界なのにやることは政治家かよ!!


「いやいや、なにをいってるんだい、君は!! 剣も魔法もたいしたことないじゃないか!! それに僕は自慢じゃないが剣はからっきしだぞ」

「だからってもっとなんかできることあるだろ!! 男の靴なんて舐めたくないぞ、いや、女の靴も舐めたくないけど」


ヒートアップした議論を中断させるようにコンコンっと扉にノックがされた。


「入って大丈夫だ!!」


「失礼します、ご友人とお楽しみのところ申し訳ありません。ハロルド様 お迎えの馬車がいらっしゃいました」


 そういってお辞儀をしたのは俺の教育係であるセバスチャンである。俺が記憶を取り戻したときに屋敷まではこんでくれたおっさんだ。


「君に発言を許可した覚えはないぞ!! 使用人君 僕らは貴族の話をしてるんだ」

「なっ、お前そんな言い方ないだろ!!」

「君こそ、どうしたんだ? 相手は使用人だぞ!? 君も前は勝手に口を出すなってよく怒ってたじゃないか?」


 あれ?もしかして前の俺って嫌なやつだった?


「申し訳ありません……ですがハロルド様もお迎えをあまりお待たせするとまずいのでは?」


 嫌味な口調にもニコニコ対応するセバス。 弱いところを突かれたのかハロルドは名残惜しそうに帰っていった。


「ごめん、セバス嫌な思いをさせちゃったな、ハロルド……あんなやつだとはおもわなかったぜ」

「ヴァイス様おやめください。貴族に頭をさげられたなどわかったら私が怒られてしまいます」


 俺が申し訳なさそうに頭を下げるとセバスがあわててとめた


「でもさ…」

「いえいえ、それが貴族というものなのですよ、あなたたち貴族は偉い、だから偉そうにしていていいのですよ、でもその偉さには責任というものの上に成り立っている。それをわすれなければ大丈夫です」


よくわからないがそういうものなんだろうか…… たしかに学校でも先生が生徒に頭ばっかりさげていたら威厳とかなんもないよな……


「あとハロルド様を悪くいわないであげてください。あの人も忙しい方です。ヴァイス様がお怪我をされたと聞いて予定をすべてキャンセルしていらっしゃったのですよ」


 ハロルド……あいつモブキャラなのにいいやつなのか……俺にはまだまだわからないことがあるようだ。自分の立場、交友関係色々学ぶ必要がある。

 退学をさけられるなら俺だけじゃなくてハロルドもさけさせてやりたいな。

「先ほどあんなことをいった手前ですが、私のために怒ってくださったとき少しうれしかったですよ」


 セバスがウインクをして出て行った。

 え? なにあのおっさんツンデレ枠だったの? 

 









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