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27.討伐準備

「おそらくこいつだねぇ……合宿所のある場所には四百年前に倒されたファフニールっていうドラゴンがいたようだ。可能性があるならこれかなぁ」

「冒険者シグルドが魔剣を使って倒したってやつか……」



 俺たちは魔法学校の図書館にドラゴンについて調べに来ていた。昨日部屋に帰ったあと大型ドラゴンが現れるかもしれないとハロルドに相談したときは「変な薬か洗脳魔法でもかけられたのかい?」と正気を疑われたものだがなんとか信じてもらったのだ。



「なあ、大型ドラゴンって、何キラーベアぐらい強いんだ?」

「その単位やめないかい? 種類にもよるけど千キラーベアぐらいだねぇ……そもそも目撃数が少ないし、撃退数はもっと少ないんだよ。なんか仮面を付けた歴戦の猛者の冒険者と国のトップクラスの騎士団が倒したって話があるくらいで、魔法学校の生徒が叶う相手じゃないんだよ……」

「だよなぁ……」



 ドラゴン。ゲームや小説でよく登場する魔物だがこの世界にもやはり存在する。今回戦うドラゴンは大型ドラゴンと呼ばれる存在であり、大体のゲームと同様にボスキャラになる。他には小型や中型のドラゴンもいるがそいつらは大抵雑魚モンスターとして登場する。

 ちなみに今回のドラゴンはゲームでは負けイベントで戦闘に負けた後にシオンが魔王の力に覚醒して倒したのだ。俺もなんかよくわかんねー力に覚醒しないだろうか。



「ちなみにハロルドやエレナの魔法って通じるか?」

「ダメージは通るかもだけど虫に刺された程度だろうねぇ」

「ティアの攻撃は通るか?」

「相手は空にいるだろうし剣は当たらないだろう、弓を使っても鱗を貫けないだろうねぇ」

「俺の……」

「何をしても無駄だろうねぇ」

「まだ何も言ってねーよ!!」



 俺達は頭を抱えうなる。絶望しかない。いや冷静に考えてモブキャラで中ボスに立ち向かうようなものだものだもんな……自分の無力さが嫌になる。どんな敵が現れるかわかっているのに対抗策が思い浮かばない。



「もう、ドラゴンが出そうになったらすぐ逃げよう……あとは先生が何とかしてくれるんじゃないかなぁ」

「それも思ったんだけどな、ティアとエレナがドラゴンが現れてすぐに逃げてくれると思うか? ティアは冒険譚バカだしエレナは正義バカだぞ。絶対周りの同級生を助けてからとか言うだろ。」

「ああ、確かに……他に巻き込まれる人がいたりすると絶対助けようとするだろうねぇ……」



 俺が未来を見れる(厳密にはちがうけど)ことを知らないエレナはともかく、今回ティアに相談しなかったのはそれがあった。俺やハロルドと違い彼女は自分の理想の冒険者像に基づいた行動をするだろう。彼女の思う冒険者とは英雄だ。誰も被害にあわないというならともかく同級生が命の危機に合うと知ったら自分だけ逃げるとは考えずらい。

 


 もちろん俺たちだって同級生を助けれるなら助けたいが自分や大事な人の命がかかっているならば悪いがそちらを優先させてもらう。



「いっそ、合宿最終日に二人のご飯に毒を盛るしかないかもねぇ……」

「でもドラゴンがどこ襲うかわからねーから身動きとれないのもまずいんだよなぁ……」

「フハハハハハ、何を悩んでいるのだ我がライバルよ」

「え? なんでお前いんの? ストーカー?」

「騒がしい男だねぇマンドラゴラの悲鳴だと思ったよ……」



 悩んでいる俺たちにやかましい高笑いをしながら声をかけてきたのはリチャードだった。こいつうるせーな。図書館だぞ、周囲の無言の静かにしろっていう視線が痛い。



「大型ドラゴンを倒すだのなんだの中々面白そうな話をしているではないか、冒険譚でも書くのか?」

「いや、今度の強化合宿で襲ってくるんだよ」

「何を言っているんだ貴様は、変な薬か洗脳魔法でもかけられたのか」

「まあ、そういう反応になるよねぇ……」



 くっそ、当たり前の反応だけどこいつに言われるとむかつくな。とっさに返答してしまったがやはり冗談だと思われたようだ。



「まあ暇だし与太話につきあってやろう、私たち魔法学園の生徒だけでも戦いようによってはドラゴンを追い払ったり逃げる時間を稼ぐことくらいならできるぞ、さすがに倒せはしないがな」

「え、まじか?」



 俺とハロルドは顔を見合わせた。こいつ嘘だったら許さねーからな。



「ああ、まずは風系の魔法で鱗のない翼を切り裂いて飛べなくする。ドラゴンといってもトカゲのようなものだから寒さに弱いから氷系の魔法で動きをにぶらせ、土系の魔法で地面に埋めるんだ。攻撃が激しい場合は耳元や目の前で火系の魔法で目くらましや鼓膜を刺激してけん制だな。これで足止めは出来るだろう。まあ、実際はドラゴンにあったらパニックになって冷静に行動はできないだろうがな」


 スラスラと対処方法を話すリチャードに俺たちは驚きを隠せないでいた。あれ、こいつこんなに知的キャラだったのか……俺と同様のパっとしないキャラだったと思ったのに……


「なんでそんなにスラスラ出るんだい? ドラゴンなんてそんなに目撃数も少ないだろうに……」

「ん? 知らなかったのか? 私の先祖は龍殺しのシグルドだぞ。それに20年前ドラゴンを討伐をした騎士団の指揮をしていたのが父だったからな。子供のころから武勇伝としてドラゴンの退治方法は何回も聞かされたからな、嫌でも覚えるさ」

「龍殺しの家系なのにお前あんまり強くないんだな……」

「本気で気にしているからやめてくれ……」

「ごめん……言い過ぎたわ……」


 本気でへこんだリチャードに俺は謝った。そうだよな、気にするよな……血筋は立派だけどいまいち強くないこいつに俺は親近感を抱いているからか、つい思ったことを言ってしまう。俺も異世界転生というチートなのに能力は高くないからな……俺もこいつも自分の強さに劣等感を抱いているのだ。


 だがへこんでいるだけではドラゴンは倒せない。とりあえず強力な魔法を使う方法か使える人間に協力してもらう方法を考えるか……



「悪い。そろそろエレナと孤児院に行く時間だ。またあとで話し合おう。帰りに市場をみて使えそうなものがないか探すわ」

「な……デートだと!! 私はエリザベスに振られてばかりだというのに……無残にフラれればいいのに……」

「まあまあ、どうせグールの様な目をしたヴァイスの事さ。ポカしてフラれるよ。それより僕とチェスをしないかい? 負けっぱなしはいやなんだよねぇ」


 こいつら好き勝手いいやがって……でもデートだったらいいのになぁと思わなくはない。俺は二人に別れを告げ待合せ場所へと向かった。



 俺とエレナは孤児院への道を無言で歩いていた。どうしてこうなった?思い当たるフシといえば一つである。


「ヴァイスさん最近何か変わったことありませんでしたか?」

「え、いやないけど……」

「ふーん、そうですか……」



 会うなり質問されもしやドラゴンのことがばれたのか? と思ったがばれる要素はないはずだと思いごまかしたのだが、俺の返答が気にくわなかったのかそれから何やら不機嫌そうにしていた。



 孤児院についても変わらなかった。子供達には優しく対応しているのに俺が声をかけると無茶苦茶冷たい。さすが氷使いクールだね。自分でいってて悲しくなってきた。



「ねえ……ヴァイス」



 俺は半分現実逃避も兼ね孤児院の隅っこでドラゴン対策を考えようとしているとなにやら邪魔が入った。



「ねえってば!! 無視しないでよ。反応しないとセクハラされたってエレナさんにいうわよ」

「お前ただでさえ機嫌悪いのにとどめさすようなことすんなよ!!」



 考え事に集中したかったがこれ以上無視をしたら更なる地獄が待っていそうなんでリオの相手をすることにした。



「なんだよ、今忙しいんだよ」

「何が忙しいのよ、植えられた薬草みてぼーっとしてるだけじゃない。それよりあんたエレナさんと喧嘩したの? 無茶苦茶機嫌悪いんだけど。早く謝っちゃいなさいよ」

「いや、俺も何で機嫌悪いかわからないんだよ……てかよく気付いたな」

「わかるわよ……だって時々溜息ついてるもの。そんな時はね、よくわかんないけど男が謝っておけばいいのよ。ほらきたわよ、早く謝っちゃいなさい」



 リオが指さす先には子供に連れられているエレナがいた。俺と視線が合ったかと思うと目をさらされた。くっそ心にくるな。



「何ですかリオちゃん?」

「なんかヴァイスが話したいことがあるんだって」

「何でしょうか……?」



 リオ!! てめええ!! まだ心の準備ができてないし何で怒っているか本気でわからないんだが……

  


「エレナそのごめん、俺が悪かった」

「何で謝るんですか? 何か私に悪いことをしたんですか?」

「いや、よくわかんないけど謝っておこうかと」

「は、舐めてんの?」



 え? 怖いぃぃぃ。敬語じゃなくなってるし、何か周囲の気温下がってない? よくわからないけど魔法発生してない? 



 リオに目で助けを求めたがなぜか頭を抱えていた。お前がそう言えっていったんじゃん。



「ねーねー、ヴァイス兄ちゃんはエルフが好きなの?」

「いや、珍しいなって思うけど別に好きでも嫌いでもないぞ」


 文字通り凍り付いた空気を読まずに、エレナを連れてきた子が質問をした。エルフといってもアンリエッタさんじゃあなぁ……



「じゃあ、ヴァイス兄ちゃんは女の子をみたらすぐ抱き着いちゃうの?」

「お前俺の事なんだと思ってんの? 獣かなんかかよ!!」

「だってエレナねーちゃんが……」



 周囲の視線がエレナに集中した。ストーカーの次は獣か……俺の評価はどんだけ低いんだろう。



「その……覗く気はなかったんですが、昨日の夜中庭でアンリエッタさんと抱き合っていたのをみてしまって……道中も厭らしい目でみてましたし……会った人をすぐ口説くのはどうかと思いますよ。まあ、別に私とは関係ないんでどうでもいいですが」

「あの、勘違いしているみたいだけどアンリエッタさんはジェイスさんの恋人だぞ……抱き着かれたのも俺が仲たがいした二人を取り持ったからそのお礼みたいなもんだよ」

「え……本当ですか? 口説いてたんじゃないんですか? 私の勘違い……」



 実際嬉しさより、困惑のが大きかったしな。しかし、それをみて何でエレナが不機嫌になるんだろうか?もしかしてフラグ立った? いや、それはないか。俺あんまり強くないし、かっこいいところもみせれてないからな。主人公のように力があればなぁ。



「その、すいません……私勘違いでひどい態度をとってましたね……本当にごめんなさい」

「いや、誤解解けて良かったよ。エレナ怒ると怖いんだな」



俺が少しからかうと更に申し訳なさそうな顔をしてしまった。いや、本当に怖かったんだよ。



「誤解が解けてよかったね、私たちに感謝しなよ!」



そういって手をつきだして謝礼を要求してくるリオ。可愛くねえなぁ。と思いつつ助かったのは事実なので銅貨を手渡してあげた。



「ありがとー!」


笑顔は可愛いのに性根が歪んでやがるな……



夕方になり帰宅することになったので、エレナと別れて市場へと向かった。隠しショップになにか掘り出し物があればよいのだが…

この前の依頼でホブゴブリンを倒したので多少は財布に余裕があるのが救いだ。



「ふはははは、まっていたぞ!ライバルよ! 具体的にはチェス八ゲーム分くらいだな!」

「全敗だよ……こいつ強すぎるねぇ……」

「ハロルドはともかくなんでリチャードも?」



俺の疑問にリチャードが答えた。



「貴様らの態度が気になってし、ハロルドがやたらドラゴン対策について聞いてくるからな、詳しくきかせてもらったのだ。本気でドラゴンを倒そうとしているのだな」

「信じるのかよ、根拠なんてないんだぜ!」

「ふっ、少しでも可能性があるなら信じよう! 貴様らは本気なようだし、万が一エリザベスが巻き込まれた時に知っていたのに何もできませんでしたでは悔いが残るからな。それに私も竜殺しとまではいかなくとも竜と対峙して生き延びれば実家に土産話ができる」



リチャードの目は真剣だ。戦力になるかはわからないが仲間が増えたのは心強い。



「ちなみに私は名門貴族の次男だからな、金ならあるぞ!」



いや、本当に心強いな!

 俺たちは隠しショップへ向かい店のオヤジに声をかけた。


「今度大型ドラゴンと戦うんですが何か良いものはありませんか?」

「何を言っているんだお前らは、変な薬か洗脳魔法でもかけられたのか」


それはもういい!

呆れた顔をされたがリチャードの持ってきたお金を見せると親父は色々商品をみせてくれた。現金なやつだな。

ドラゴン…どこまでたちむかえるかはわからないがやるしかないだろう。


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後半スマホで書いてみたんですがやはり書きにくいですね……慣れるようがんばります


7/23 ドラゴンの分類追記いたしました。

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