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25.イレギュラークエスト

 急いで向かった先にはティアにかばわれているハロルドが六体のゴブリンと対峙していた。ゴブリンとは精霊が悪に落ちて魔物になったといわれている。体は子供くらいのサイズだが緑色の皮膚に醜悪な顔をしているのが特徴だ。錆びた剣を持ったのが四体に木の弓を持ったのが二体いた。狩りにでも出ていた連中に偶然遭遇してしまったのだろうか。



 こういうことはゲームにもあった。イレギュラークエストといい冒険者ギルドで受注したクエストをクリアした後にランダムでおきるのだ。ゲームの時は経験値が追加でもらえたり、アイテムがもらえたりしたのでラッキーと思っていたが実際遭遇すると中々厄介だ。



「エレナ弓を持っているやつを仕留めてくれ」

「わかりました、氷の槍よ、堕ちた精霊を貫け」



 エレナの放った氷の槍が弓を持っていたゴブリンの一体を貫く。貫かれたゴブリンはそのまま体が凍り付き一体の氷像が出来上がった。すごい威力だ。エレナは怒らせないようにしようと俺は心に決めた一瞬であった。



「キェェェェェ!!」



 不意打ちがきまりゴブリン達の視線が俺とエレナに向かったので俺はあえて大声を出して武器を構えた。ゴブリン達が俺に注目した瞬間、ティアが近くにいたゴブリンを斬り倒した。うちの女性陣強すぎない?



 あとはもう圧倒的だった。ハロルドの魔法でもう一体の弓を持ったゴブリンを倒したらあとは一体ずつつぶしていくだけである。数でもこっちのが多いしな。



「思ったより楽勝だったわね」



 ゴブリンを倒した証明として耳をそぎ落としながらティアが満足げに言った。この子貴族だよな、アグレッシブすぎない? エレナとハロルドは嬉々として解体しているティアに引き気味であった。 



「ティア危ない!! 風よ」



 奇襲が来たのはゴブリンを倒して気が緩んだ一瞬だった。ティアに向かって投げられた矢はハロルドの魔法によって軌道を変えたからよかったものの当たれば負傷はまぬがれなかったであろう。



「ありがと、ハロルド!!」

「気にしないで、にしても敵討ちってやつかなぁ」

「どちらかというとさっきのは囮でこっちが本命だろ……」

「ホブゴブリンがいますね……あいつがリーダーでしょうか?」



 矢が飛んできた方向をみると巨大なゴブリンが一匹と先ほどとは違い鉄の鎧を装備したゴブリンが二匹いた。鎧を装備をしているゴブリンのうち一匹はなにやら負傷しているようだ。



 巨大なゴブリンは一般的にホブゴブリンと呼ばれ普通のゴブリンよりも体が大きく力も強い、しかも頭もいいため群れのリーダーになることが多いゴブリンである。

もちろん戦闘力も高い。



「ホブゴブリンは一般的に巣から出ないはずなんだけどなぁ」

「冒険者が巣を襲ったけど逃がしたのかもしれませんね」

「ハロルドは援護俺とエレナは魔法で攻撃。ティアは敵が近づいたら相手をしてくれ」

「わかったわ」


 俺たちは即座に陣形を整えた。ホブゴブリンは確かに強敵だが勝てない相手ではない。だいたい1.2キラーベアといったところか。それにゴブリンの恐ろしいのはやつらの巣での奇襲やトラップである。開けた森ならば俺たちのほうが有利だ。


「ゴブゴブッ!!」


 矢がハロルドの魔法で無効化されるのを悟ったのかゴブリン達が接近してきた。しかも魔法を使おうとするタイミングで投石をしてきやがった。ホブゴブリンの指示だろうか。厄介だ。


「甘いわね、ゴブリン!! エレナは魔法に集中して、私が守るわ」


 何をするかと思いきやゴブリンが投げた石を剣ではじき返した。野球じゃねーんだぞ。しかもはじき返した石がゴブリンに直撃をした。


「ゴブゴブッ!?」


 鎧ごしに当たったのでダメージはないだろうがゴブリンも驚いたようだ。気持ちはわかるぞ。まさか打ち返してくるなんて思わねーよな。


「火よ」

「氷の槍よ、堕ちた精霊を貫け」


 俺の火の玉とエレナの氷の槍がホブゴブリンに向かって放たれた。絶対絶命であるはずなのにホブゴブリンのやつは厭らしく笑っていた。何を考えている?



「ゴブゴブッ!!」

「ゴブー!?」



 ホブゴブリンは負傷しているゴブリンを盾にしたのだ。哀れなゴブリンはエレナの魔法によって氷像と化した。ちなみに俺の火の玉は当たったんだがエレナの氷を少し溶かしただけだった。才能の差が恨めしい。



「ゴブゴブッ!!」



 気色悪い鳴き声と共にホブゴブリンが氷像と化したかつての仲間をこちらにぶん投げたのだ。不意を突かれたハロルドが氷像の下敷きになってしまった。さいわいにも風魔法で多少勢いを落としたようで致命傷にはなっていないようだ。



「うおおおおおおお!!」



 近づいてきたホブゴブリンの攻撃を必死に受け流したが一撃受けただけで手が痺れた。なんて力だよ!! 

エレナは鎧ゴブリンの相手をしていてティアは氷像の下敷きになったハロルドの救助をしていた。時間を稼げば勝てるな。問題は俺がもつかだが……



「ティア!! スイッチだ!! ハロルドは俺が助ける」

「わかったわ。任せなさい」


 もちろんもたないのですぐにティアと変わってもらうことにした。俺が引いた絶妙なタイミングでティアがホブゴブリンに襲い掛かった。強敵と戦っているからかティアは楽しそうだ。狂戦士かよ。



「すげえな……」

「冗談抜きでオークとかともやりあえそうだねぇ」



 互角以上の戦いを繰り広げていたティアをみて俺たちはつぶやいた。



「くだらないこと言ってないで援護しなさいよ」

「わかってるって、風よ」



 氷像の下敷きから抜け出したハロルドはホブゴブリンの背後に小さい竜巻を発生させやつを切り刻んだ。痛みに気をとられた瞬間をティアが逃すはずもなく、彼女の剣がホブゴブリンを袈裟切りにした。


エレナのほうはどうかとみたがそこには氷像となったゴブリンがいた。やはりうちの女性陣は強すぎだろ……てか俺だけ大した活躍してないけどリストラとかされないよな……



「今度こそ勝ったわね、ホブゴブリンの耳は高値で買い取ってもらえるわよ」

「なかなか強敵でしたね……これが冒険者の依頼……」



 対照的なティアとエレナであった。まあ、エレナは初の実戦だから仕方ないかもしれないし、ティアがおかしい気もする。


「紅蓮の炎よ」

「ゴブゥゥ」


 突如唱えられた詠唱と共に炎を纏った矢がホブゴブリンを射抜いた。森にやつの断末魔の声が鳴り響いた。あいつ死んだふりをしていたのか。知らずに近づいていたら危なかったかもしれない。



「君たちはみたところ魔法学園の生徒かな? 実戦経験がまだ少ないようだね。覚えとくといい、やつらゴブリンは生き汚いんだ」

「あなたは……」

「僕はアンリエッタ、エルフの冒険者だよ」



 矢を撃ったのは緑のフードをかぶったエルフの少女? だ。エルフだからな、何歳かなんてわからない。やはりエルフだからだろう彫刻の様に整った顔をしており美しい。



「何を見惚れているんですか……」

「いや、そういうわけじゃないって」



 なぜかエレナが不機嫌そうにしていた。だってエルフだぜ。ファンタジーとか好きならテンションあがるだろ?



「助けていただきありがとうございます。何かお礼をしたいのですが……」

「本当かい? もう三日間も森で迷っているんだ!! 都市まで案内してくれないかい?」



 俺が尋ねるとむっちゃ食い気味で来た!! よくみると服も薄汚れているし本当に遭難していたようだ。アンリエッタさんは半泣きでよかったよかったとつぶやいていた。てか知らない人の対応とかいつのまにか俺担当になってるよな。


 グゥゥゥゥー、森に獣のうなり声のような音が鳴り響いた。



「ねえ……よく焼けたホブゴブリンって美味しいかな?」

「あの干し肉あるんで食べますか……?」



 彼女は羞恥で頬を赤らめながらそう言った。なんか残念な人だなぁ……俺はエルフのイメージがどんどん崩れていくのを実感した。



 そのあと俺たちはアンリエッタさんを連れて都市へと戻った。依頼の他にゴブリンとホブゴブリンを倒したこともありかなり報酬が多めにもらえたのはうれしい誤算だった。


余談だがシオンとレイドもイレギュラークエストに遭遇したらしく、オークの素材を換金していた。よく倒せたな……やはり主人公だから強いのか……



 ちなみにアンリエッタさんとは都市に戻った後打ち上げに誘ったがほかによるところがあるからと別れた。目的地にちゃんとつけるか心配である。


 さて気になることもできたし今夜あたり打ち上げが終わったらジェイスさんに話を聞きに行こう。そう思いながら初の依頼達成記念の食事を楽しむのだった。





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