22.ライバル
「風よ」
「火よ」
「土よ」
「氷の女王の息吹よ、すべてを凍りつくせ」
様々な属性の魔法が平野を飛び交った。距離がある間は魔法でけん制しつつ接近する。これがパーティー戦の基本である。そう、俺達は今クラスのパーティー同士で模擬戦をしているのだ。
「貴様らなんなんだよ、なんでこっちの魔法の属性がわかるんだよー!!」
金髪の男が怒鳴りながら切りかかってきた。俺の剣とやつの剣がぶつかり合った。すまないな。抜き打ちでおこなわれた模擬戦だったがゲームで行われることがしっていた俺は事前にクラスメイトの中で優秀な人物の魔法と剣の腕前をチェックしていたのだ。そして相性のいい相手に仲間を戦わせるという戦略をとりこちらの勝ちはほぼ確定だった。しかしこの戦況で俺までたどり着くとはこいつ中々やるな。
何合か剣をうちあう。相手は焦っているというのに決定打にかける。こいつとはテストのときもやりあったが差が縮まっていないようだ。自主練もしてるんだけどなぁ。つくづく才能のない自分に嫌気がさす。
「隙あり」
「ぐぇ」
自分の相手を倒して助けに来てくれたティアが金髪を瞬殺した。いや殺してはいないけどな。なにはともあれ俺たちの勝利だ。これで今回も成績は上位だろう。
「なぜだぁぁぁぁ、なんで私と貴様はたいして魔法も剣の腕前も変わらないのにこうも違うのだ!! おかしいだろ!! 成績も上位!! 今日の模擬戦もお前のパーティーが圧勝!! 仲間も優秀!! 同じチームのエリザベスは私に振り向かないぃぃぃ!」
最後のは俺関係なくない? 模擬戦が終わり一息ついていたら金髪がからんできた。まあ、たしかにこいつと能力はおんなじようなもんなのに俺が成績上位なのが気に入らないようだ。まあ、気持ちはわからなくない。
「あー、あれだよ、金髪。俺の運がいいんだよ。仲間も優秀だしな」
「貴様まさか私の名前を覚えていないのか……同じクラスだろ……」
「彼はリチャードだよ、チェスが異常に強い」
半泣きな金髪……リチャードを哀れに思ったのかハロルドが耳打ちをして教えてくれた。どうでもいい豆情報もセットだ。チェスが強いのか、ハロルドより強いっていうのはすごいが戦闘技術の才能ではないのがかわいそうである。
「リチャード……恥ずかしいからおやめなさい……ヴァイスにハロルドうちの馬鹿が失礼したわ」
「げ、エリザベス!! ちがうんだ……私を哀れな豚をみるような目でみないでくれ。こいつの強さの秘密をさぐるんだ」
「あー、もううっさいのですわ……そんなことより反省会をするのわよ」
そういってリチャードを自分たちのところへ連れ戻していったのは同じクラスのエリザベスだ。彼女はぱっと見10歳前後の幼女のような体系と銀髪にロングヘアーだが立派な同い年である。魔術の才能が豊かで下手したらハロルド以上だろう。だいたい1.2ハロルドといったところか。要注意人物である。リチャードのパーティーメンバーでありさっき戦ったが魔法の属性を知らなかったら結果は違うものになっていたかもしれない。
「貴様の強さの秘密必ずさぐってみせるかなぁぁぁぁ」
「だからうるさいっていってるんですわ!!」
「ぐぇ!!」
がやがやと騒がしい魔法学校の食堂で俺たちはランチを楽しんでいた。俺とハロルドの前にはパンとスープにちょっとしたおかず、ティアの前には俺たちの食事に豪華な肉が追加されておりエレナはパンとスープに薬草ジュースを飲んでいた。俺苦いし高いから苦手なんだよな。しかしこれが田舎貴族と本物の貴族の違いだよな……おこずかいの金額がちがう。
「ハロルドそんだけしか食べないから強くなれないのよ……わたしのお肉半分あげるから食べなさいよ」
「無理だぁぁぁ、あんだけ運動してなんでそんながっつり食べれるんだい……」
「それでですね……このまえの少女から手紙が来まして、今度お礼も兼ねて孤児院に遊びにこないかっていわれたんだけどみんなどうでしょうか?」
「俺はいいけど……面識ないハロルドたちもよんで大丈夫かな」
「ふむ……食事は一番安いランチセットか……」
俺たちは雑談をしながらランチを進めていた。変な視線があるが気にしないことにする。
「次の休みかぁー、申し訳ないけど僕とティアは冒険者ギルドの依頼をうけてみようって話をしていたんだ。それに平民の生活にはあんまり興味ないなぁ」
「いいじゃない、孤児院に顔出すくらい。それにヴァイスも依頼付き合ってくれるっていってたし孤児院いった後にいきましょ」
「二人ともありがとうございます。孤児院には付き合ってもらうのに私は依頼には付き合えなくてすいません」
「仕方ないだろ、依頼にいって万が一ケガとかしたらエレナの親御さんに申し訳ないからな……」
「ふむ……冒険者ギルドの依頼か……やはりそこで実戦経験を積むことが強さの秘訣なのだろうか」
なにやら雑音が聞こえるような気がするがきにしないでおく。
「ねえ……ヴァイス……これってつっこんじゃダメなの? さっきからうざいんだけど」
「なんのことだティア、幻覚でも見てるんじゃないか? 俺の横にメモをとっている金髪の男なんかいないぞ」
これは幻、これは幻と俺は必死に自分に言い聞かせた。こういう輩は相手をすると余計めんどくさくなるのだ。器のでかい俺はきにしないでおく
「ふむ……些細なことをきにしない器の大きさ、これも強さの秘訣か?」
「だぁぁぁぁ、うっせー!! なんなんだよ、お前は!! 授業終わってからずっとついてきやがって!! トイレの時も隣でじっとみてるうえに食事も邪魔するのかお前は!!」
「ヴァイス……今は食事中なんで下品な話はやめてくれませんか?」
「突っ込むとこそこかよ!!」
騒いだせいで食堂から追い出された俺はリチャードをにらみつけた。まだ食べかけだったのに……
「で、これはなんのマネなんだよ。俺のことを観察したって強くなれないぞ。どうせならティアやエリザベスたちに習ったほうがいいんじゃないか?」
「あいつらは私と違って天才だろう。それでは参考にならないんだ。貴様ならわかるだろう?」
自虐的な笑みをうかべたリチャードに俺はうなずいてしまった。この世界には才能というものがある、俺はハロルドと同じくらい特訓をしているが彼のように魔法はつかいこなせない。悔しいがこれが現実である。さっきみた彼の手には剣を握るとできるまめができていた。ひょっとしたら俺よりも努力をしているのかもしれない。
「私の実家は代々騎士の家系でね。父は優秀な騎士として名を残しているし、兄も魔法学校を優秀な成績で卒業したのだ。だから私も負けるわけにはいかない……はずなんだがね……」
そういって視線を落とすリチャードの表情は覚えがあった。自己嫌悪だ……俺はその感情を痛いほど知っていた。魔法ではハロルドに負け、剣術ではティアに負けている。だが俺にはゲームで培った知識があるからなんとかなっているもののリチャードにはそれすらないのだ。しかも優れた兄を持っているとなるとその劣等感は俺の想像のできないものだろう……
「別に魔法や剣術じゃなくてもいい、お前の優れた面でアピールすればいいんじゃないか? 俺もそうしてるしな。チェスうまいらしいから戦術とか考えたらどうだろう?」
「戦術……だが私は騎士の家系だ。兄も騎士として戦っているしそんなものでいいのだろうか?」
「いいんじゃないか、お前はお前だし。才能ないんだから違うところでアピールするしかないんだよ。俺もお前も」
おそらく剣術や魔法に優れた兄のあこがれていたのだろう。だがリチャードにはそれだけの力がないだからほかの分野でアピールするしかないのだ。悲しいがそこは割り切るしかない。俺だって異世界転生してチートスキルで無双できるならしたかったがそれだけの力がないなら割り切るしかないのだ。
「兄のように剣術で優れた成績をとらなくてもいいのだろうか?」
「いいんじゃないか? お前はお前だし」
「父のように優れた騎士を目指さなくてもいいんだろうか?」
「いいんじゃないか? 家は兄が継ぐんだろ?」
「普通の人のように同年代ではなく幼児体型にしか恋愛感情を抱けないのだがいいのだろうか?」
「いいんじゃないか? 人それぞれだし……って、え、なんだって?」
なんか最後とんでもないことをいってなかったかこいつ?
「ふっ、無責任に言ってくれるな……だが少し体が軽くなった気がする、ありがとう。ヴァイス……いや我がライバルよ!! 才能ない同士切磋琢磨しよう」
「まった。お前最後なんていった? えっ、お前ロリコンなの? てかライバルってなんだよ!!」
俺は慌ててリチャードに問いかけるがやつはもはやどこかへ去っていった。俺はこの日適当に慰めたことを後悔するのであった。
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次回は少し話が進む予定です。エレナの話の話をしようと思います。よろしくお願いします。
6/27 エリザベスのキャラがほかの有名作品とかぶっているとご指摘をいただき私もその通りだなと納得したので容姿と口調を変更いたしました。今後きをつけます




