21.少女とエレナ
「氷の蔓よ、愚かな咎人を捕えなさい!!」
エレナの手から生まれた氷の蔓が街の通行人を避けながら少女を捕えた。器用だな!!どうでもいいけど詠唱は敬語じゃないんだな。
「ひぃぃぃ、なによこれ!?」
下半身を氷漬けにされた少女が悲鳴をあげた。追いかけた先にいるのは魔法を放つエレナとそれに捕えられた少女だった。あれ? 俺何の役にもたってないな……
「さて、財布を渡してください。そのあとは衛兵に叱ってもらいますからね」
「くっそ離しなさいよ!!」
「あまり暴れると凍った皮膚がはがれるから暴れないほうがいいぞ。財布返したら解放してくれるだろうし」
解放するよな? 罰でこのままとかしないよな? 俺は恐る恐るエレナの顔をうかがう。彼女は厳しい目で少女を見つめていた。少女はエレナに恐怖を感じながらも頑なに財布を離そうとしない。
「まあ、いいでしょう、じきに衛兵が来るので明け渡しましょう。幸い未遂に終わったので少し牢獄に入るだけで済むでしょうし、その間にあなたも反省してくださいね」
「まって!! 少しってどれくらいなの?」
「だいたい一日くらいじゃないか。まあ、これにこりたら二度とこんなことはしないようにするんだな」
「いえ、どんだけ軽いんですか……多分一週間くらいですよ」
適当なことを言ったが即座に訂正された。盗難は罪だが相手は幼い少女だし、エレナもそこまで大事にするつもりはないのでそんな大きな罪にはならないだろう。貴族のエレナが本気になれば死刑もありえるかもだがそんな気はないだろうし、むしろ反省させる程度にとどめるだろう。でも少女には悪いが俺的にはこのまま衛兵につかまってほしいんだよな。悪いことをしたのは事実だし……
「一週間も!! 困る、それじゃママが死んじゃう」
「ママが死ぬ……? 一体どういうことですか?」
悲痛な叫びをあげる少女にエレナの表情が変わった。それをみて俺は嫌な予感が的中したのを確信した。これはエレナルートのシナリオだ。少女は孤児であり、親代わりのママが病気になってしまいその薬代欲しさにスリを働いたのだ。それを聞いたエレナはお金を渡してやり、それがきっかけで孤児院にもいくようになるのだが、しばらくたつとそこで色々なことがあり、強力な魔獣と戦うことになるのだがシオンですらぎりぎり勝てる強さだ。俺ごときでは瞬殺されるだろう。かといって放置してるとエレナだけで魔獣に戦いに行くかもしれない。なんとか少女と仲良くなるのを阻止しなければ。
「病気の母のために薬代を……大変でしたね。いいですよ。それならこのお金を使ってください、人の命が救えるなら安いものです」
「まてまてまて、この子が本当のこと言ってるかわからないんだぞ。あっさり信じるなよ。俺がじっくり事情を聞くよ」
少女の言葉にあっさり財布を渡そうとするエレナを俺は制止した。いや、少女の話は本当なんだけどね、あとで俺が薬代は払うからこの二人が仲良くなるのをなんとか阻止したい。
「また情報収集で調べるんですか? でもじっくり情報をあつめてる時間なんてないですよ」
「情報収集の基本は情報の真偽をある程度見極めることなんだよ。だからエレナさんよりはそういうの得意だと思うぞ」
「嘘じゃないもん、本当にママ病気なんだもん」
そうだね、君の言ってることは真実だよ、俺のは嘘だけど。涙目で訴える少女を疑ったふりするのはすごい罪悪感が……
「そうですね……でも私は私の意志で彼女を信じようと思います。確かにあなたのほうがそういうのは得意かもしれませんが万が一間違えるってこともあるとおもいますし、その時私はあなたを恨んでしまうかもしれませんから」
そういって彼女は微笑んだ。やっぱりだめなのか……これ以上否定したら逆にこじれそうである。
「あの……」
「私はあなたを信じます。だから安心してください」
「そうじゃなくてそろそろ魔法を解いてほしいだけど……そのトイレが……」
泣きそうな少女の声にエレナはあわてて魔法を解いた。結局ゲームと同じようにエレナと少女は接点をもってしまった。俺は未来に暗いものを感じながら少女にお金を渡しているエレナをみつめるのだった。そしてカフェで待っていたハロルドたちと合流し共に帰宅するのだった。
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今回短めですいません。




