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20.初めての休日

「却下だねぇ……」

「なんでよぉぉぉぉぉ」


 街について俺たちが最初に向かったのは冒険者ギルドである。もっといろいろみるところもあるだろうにと思うがティアが強く希望したのだ。


 冒険者ギルドに来るのは初めてだったが酒場も兼ねているようでそこそこの人数の客でにぎわっていた。真昼間から酒を飲んで……とは思うが依頼で稼いだ金をすぐ使う刹那的な生き方をする人間も多いのだろう。客は冒険者が大半なようでガタイのいい剣士風の男は、人相の悪い盗賊のような男、ローブを深くかぶった魔法使い風の人間など様々な人種がいた。奥のほうには依頼の張ってある掲示板と受付があり賢そうな眼鏡をかけた女性がなにやら書類を書いていた。まさに冒険譚に出てきそうな風景をみてテンションが上がったティアがさっそく依頼をうけようといいはじめたのだ。


「いや、二人はともかく俺とエレナさんは無理だから……」

「ティア変わりましたね……いえ……こちらが本性だったんでしょうか……」


 俺とエレナもあきれた声を出した。ちなみに魔法学校の生徒は入学と共に冒険者の一番下のランクの資格がもらえるのだ。その理由は入学する人間の大半が魔法と剣がある程度使えるのと、魔法学校の卒業生の何割かが冒険者になるからである。俺のように長男はともかく、ハロルドのような三男などは大抵は国に騎士や魔法使いとして就職するが一獲千金を狙い冒険者になる人もいるのである。


 そして学生の中にはバイト代わりに依頼を受ける人間もいる。依頼内容は簡単な魔物退治や薬草採取などである。とはいえ予定外の事が起きて死ぬ場合もあるので親が冒険者登録を拒否していると、本人が希望しても登録することができない。現に俺とエレナは冒険者登録ができなかった。貴族の長男とお嬢様だからしかたない。万が一にでも死なれたら困るということだろう。ティアに関してはオーキス様の理解が深いということか。ちなみにゲームの主人公は週末は依頼を受けて小遣いかせぎをしていた。


「うう……今回はあきらめるけどいつか付き合ってよね……」

「わかったよ。でも二人はこわいなぁ……」


 ティアに懇願されて頭をかかえるハロルド。心配するな。受けるときは俺もつきあってやるよ。依頼を受けれないだけでついてくのは自由だしな。中々おいしい依頼もあったのでハロルドかティアに依頼をうけさせて一緒に冒険するのもありである。


「せっかくだしもっと街をみようぜ。露店とか掘り出し物があるらしいぞ」

「いいねぇ、なんかおもしろいものが売ってるといいな」

「うう……冒険……」

「ティア……もういきましょう……」

 

そうして俺たちは冒険者ギルドを後にした。




 露店はいきかう人々でにぎわっていた。街の規模が違うだけありティアの別荘地とは規模が違った。ここにレアアイテムがうってるんだよなぁ。


「すごい!! これ結構めずらしいわよ。かなり昔に作られた本だったはず。こんなとこにあるなんて」

「へぇ、なんだろうこの箱は魔力を感じるなぁ……ってかみついてきた!!ほんとなんだこれぇぇぇぇ。」

「このアクセサリーかっこいいですね……」



 みんなそれぞれ楽しんでいるようだ。ティアは古い冒険譚、ハロルドは変な箱、エレナは竜を模したアクセサリーなどをみている。


 みんなをよそに俺は一つの店にむかってまっすぐ進む。その店はなにかの骨や古臭い本、骸骨をもした仮面などが雑多に並べられている普通の人ならまずみないようなうさんくさい店である。店番をしている髭面の店主は俺をちらっとみたがすぐ興味をなくしたようで商品を磨くのに戻った。商売っけなさすぎない?


 まあ、気を取り直して俺は商品を物色する。ゲームだと選択肢がでてくるのだが現実にそんなものはないから探さなければいけないのだ。俺は多少苦労しつつ薄汚い指輪を手に取った。


「誰か助けて、指がちぎれるぅぅぅ」

「これを売ってくれないか?」

「ほぉ……これをみつけるとは。俺の目も曇ったな。坊主名前を言ってみな。おぼえといてやるよ」


 店主の顔が驚きに染まる。それもそうだろう。この指輪は命の指輪といいつけている人間の身を一度だけ守る効果がある。なんでこんな雑に扱われているかというと客の質を見極めるためである。この店主は気に入った人間にしかちゃんとした商品を売らない。いわばこの指輪をみつけるのは試験なのだ。ゲームではもっと魔力のステータスを上げなければ選択肢がでてこないため購入できないのだがこれは現実である。ゲーム画像と同じものを探せばいいのだ。これで次回からもっといいものも売ってもらえるのだ。


「俺の名前はヴァイス、魔法学校の生徒です。これからもごひいきにさせてもらいますね」

「おう、今度からちゃんとした商品も出してやるよ。じゃあ会計な」

「ティアダメだぁぁぁぁ、僕の腕ごと斬ろうとしないで!! 箱を壊して!! え?商品を壊したらだめでしょ? 腕はきっても魔法で治る? そういう問題じゃないんだよぉぉぉ」


 俺は店主に支払いを済ませ店をあとにした。あっぶねー支払い額ぎりぎりだったな……とはいえこれでレアアイテムショップは使えるようになった。これはかなり大きい。俺は弱いから装備を強化したりしないと不測の事態に対応できない場合がある。とはいえおこづかいくらいしか収入がないのであんまり頻繁に買うことはできないんだけどな。


さっきからなにやら外から悲鳴が聞こえるが気にしないでおこう。 店を出た俺をまっていたのは手持ちぶたさにしているエレナだった。


「あれ、ティアとハロルドは?」

「ちょっと色々あって二人で教会に行ってしまいました。戻るまでそこのカフェで待っててくれとのことです」

 

 なにやら一つの店が誰かが何かに襲われて暴れたかのように荒れている。ハロルドがなんかやらかしたのだろう。ちなみに教会には僧侶の人がいてお金を払うとケガの治療や呪いなどを解いてくれるのだ。ケガか呪いのアイテムにうかつに触れたハロルドの治療にいったのだろう。とりあえず、ここで立っていても仕方ないし、カフェに行くか。



 恥ずかしながら俺は生まれ変わってから女の子と二人で食事をしたことはなかった。残念ながら前世でもそんなに経験があるほうではない。しかも相手は俺を嫌っているであろう女性だ。あえて言おう。くっそきまずい!!


 屋外のテラス席で俺たちは向かい合って紅茶を飲んでいる。雰囲気いいな。俺たちに会話はないけど!!


どうでもいいことだが俺の隣の席ではシオンのやつが赤毛の美少女と楽しそうに談笑していた。幸いにも相手は俺のことに気づいていないようだ。赤毛の美少女はおそらくゲームの時のメインヒロインだったはず。実は亡国の王女だっけな。どうやらシオンは彼女とのルートに進んだようだ。路地裏で絡まれていたところを助けるとこのイベントが発生するのだ。くそが、リア充め、死ね!!


「勘違いしているようですが、私は別にあなたのことを嫌ってはいないんですよ。まあ、ストーカー……いえ少し不審だなとは思ってますが」


 やっぱこの子ストーカーっていったよな!! やはり俺は主人公のように気軽にフラグはたてられないのだろう。


「むしろ、あなたに……いえあなたたちに興味はあるんです。ティアがあんなに楽しそうにしているの初めてみたので」


 そういって彼女は少し寂しそうに微笑んだ。やっぱかわいいなーと思う。実はゲームの時から推しキャラんだよな。


「そういえばエレナさんとティアはどういう関係なんだ?」

「私の父とティアのお父さんが友人でしてそれがきっかけで何回か会っていたんです。でもどこか作り物のような笑いをしてて気になってたんですが……」


 ティアも昔何回か貴族のパーティーに行ったが会話が合わずいかなくなったっていってたがそれがエレナのパーティーだったのか。エレナもティアの違和感に気づいていたがどうすればいいかわからずそのまま疎遠にって感じかな。まあ、俺のように情報があるわけでもなく、ましてや子供なのだどうすればいいかなんてわからないだろう。


「まあ、たまたまだよ、本当にたまたま趣味があったんだ」

「そうですか、でも今のティアは本当に明るくなってて学校で再会したときは驚きました。ティアをあんな顔にするってことはあなたが悪い人ではないっていうのもわかっているんですよ」


 まさかゲームで得た情報を元にして仲良くなりました。なんて言えない俺は笑ってごまかした。それにつられてかエレナもほほえんでくれた。あれ? なんかいい感じじゃない?


「きゃっ」

「あ、ごめんなさい。」


 しゃべっていたエレナに急いでいたのかみすぼらしい服装の少女がぶつかった。すわっているエレナにぶつかるとはよほど急いでいたのか?


「大丈夫ですよ、気を付けてくださいね」

「ううん、失礼しました」


 優しく声をかけるエレナに少女もうなずく。よほど急いでいるのかすぐに行ってしまった。俺はちょっと嫌な予感がしてエレナに尋ねた。


「なあ。財布とられてない?」

「え? あーー、ありません。まさかあの子!?」


 鞄を確認したエレナがあわてて席を立ち少女を追いかけた。俺も続いて席を立ったが俺の頭の中は大きな悩みに支配されていた。とりあえずは追いかけるしかないだろう。俺は店員にハロルドたちに伝言をお願いしてエレナと少女を追いかけた。




 


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